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  • 連載 価値を創るホテリエ 第三回 宿泊業における付加価値とは
価値を創るホテリエ 第3回 連載 価値を創るホテリエ

宿泊・サービス業界の課題

2018年07月10日(火)
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宿泊・サービス業でお客さまに買っていただく商品=部屋や食事が、「高い」か「安い」かは、その価格=絶対値で決まるものではありません。

例えば、「あなただけに特別にメーカー在庫の新車を200万円で売ってあげます」と言われたときに、それを「喜んで買う(=安いと感じる)」か「いらない(=高いと感じる)」かは、200万円という値段(=絶対値)の問題ではなく、対象の新車がどんなものか、による訳で、これが軽自動車であれば、このオファーに魅力はなく、「高いので買いません」となるでしょうし、ドイツ製の大型高級車やイタリア製のスポーツカーであれば、破格のお得なオファーですから、「安いのでぜひ買いたい」となるはずです。
つまりお金を払うときに「高い」と感じるか「安い」と感じるかは、その金額の絶対値の問題ではなく、支払う金額に対して受け取る対価が、その金額に対する期待を上回るか、下回るかによる、相対的な評価によって決まる、ということになります。

期待を上回っていれば、支払う人はその対価に対して「バリュー」を感じ、「また買いたい」と思うでしょうし、期待を下回った場合には「バリューがない=高い」と感じ、「二度と買わない」ということになってしまいます。宿泊のルームについても同様に、「この広くて(狭くて)きれいな(汚い)部屋で、サービスマンの対応も良い(悪い)ホテルに、この値段で泊まれるなら安い(高い)からまた来たい(二度と来ない)」ということになります。
そしてこの期待を上回るバリューを創るのが、付加価値です。

私が勤めていた中で、地域でも「和・洋・中どのレストランに行っても食事がおいしい」として人気のホテルがあり、中でも中華料理の麻婆豆腐は、地元の人たちに評判で多くのお客さまに愛されていました。その麻婆豆腐は単品で2000円の値段がついていますが、固定客も多く、皆さん喜んでそれを注文されます。一方で町の中華料理店に行けば、ご飯やスープの付いた麻婆豆腐定食が700円程度で食べられます。もちろん味の好みの問題もありますし、TPOの問題もあります。平日の忙しいランチには700円の麻婆豆腐定食を食べるけれど、週末に家族や友人とゆっくり、というときにはホテルで2000円の麻婆豆腐を食べる、というお客さまもいるでしょう。

大事なことは、単純に値段だけで安い方が選ばれる訳ではない、ということです。

ホテルの麻婆豆腐は、味ももちろんですが、ゆったりとした座席にクロスのかかったテーブルや調度品などの雰囲気、そしてにこやかに料理を取り分けてくれ、お水やお茶が減っていれば頼まれる前に満たしてくれる一流のサービスなど、すべての要素が付加価値になっていて、お客さまはその付加価値を理解して、2000円の麻婆豆腐であっても「高くない」と感じて、何度も通っていただけるのです。

麻婆豆腐と牛丼
麻婆豆腐と牛丼

この逆の例が、(申し訳ありませんが)牛丼業界です。全国展開するチェーン店数社が価格競争を繰り返す牛丼チェーンでは、これまで何度も最大手を中心に「もう価格競争はしない」という方針を掲げ、値段の引き上げを図った経緯がありますが、なかなかそれが定着せず、どこかが「期間限定」などで値下げを行ない、他社が追随することの繰り返しで、牛丼一杯の値段は200円台後半~300円台を行ったり来たりしているのはご存じの通りです。経営的に価格競争から脱却したいのはどこのチェーン店も同じはずなのに、なぜそれができないのでしょうか…。

それは、チェーン店の牛丼には付加価値がつけにくいから、だと私は考えています。

Y社の牛丼と、M社の牛丼、S社の牛丼を食べ比べて、その味の違いを言い当てられる人がどれ程いるでしょうか…。少なくとも私の周りにはその違いを言い当てる人はいませんし、従ってどこか一社を特にひいきにしている、という人もいません。また、牛丼チェーンにサービスを求める人もいないはずです。食券を買う・買わないの差はあるにしても、座って出てきたものを食べて払って帰る、せいぜい5分程度、限られた動作しかないお店で、「ここはサービスがいい(悪い)」と言う人はいませんし、店の雰囲気を問題にする人もいません。

つまり、チェーン店の牛丼においては、味で大差は付けられず、サービスや雰囲気に対するニーズもない、他社に差をつける付加価値をつけることができない、というジレンマがあります。味もサービスも差がなければ、顧客が店を選ぶ基準は価格か立地しかありません。「10円程度の差であれば近くの店に行くが、50円違えばちょっと歩いても安い店に行く」という人も多く、かくして牛丼の値段は200円台と300円台を行ったり来たりしているのです。

つまり、顧客がその商品の価値を認めて、そこにバリューを感じてくれる範囲であれば、価格(絶対値)が高くても買ってもらえますし、逆に付加価値を付けることができなければ、価格で勝負するしかない、ということになります。

同じような例が、貸し切りバスの業界でも起こっています。
かつてスキーバスが死亡事故をおこし、貸切バス業界の過度な価格競争が問題となりましたが、それでも法律で定められるようになった最低価格が守られない、という問題は解決していないようです。

なぜでしょうか…。

それは顧客は「○○ツアー」「XX旅行」など、主催者のブランドや「○○高原」「XXスキー場」という場所、さらには宿泊先などから「どのツアーにするか」商品を選びますが、貸し切りバス会社をどこにするかは選ばない、それ以前にバス会社の名前はパンフレットに記載さえされていないのが実態です。顧客に名前で選ばれるということは、顧客がその名前にブランド価値を認めてくれていることであり、この価値を認められた「○○ツアー」「XX旅行」はその名前が選択の基準になりえますが、名前のないバス会社に価値は認められていません。

顧客がバス会社に付加価値を認めていないのであれば、ツアーの主催者は自らのツアーの価格競争力を高めるためにも、最も安価なバス会社を選択することになり、かくしてバス会社は価格競争をせざるを得ないのです。

宿泊サービス業界で働く「人」についても、同じことが言えます。「○○さんのサービス」「XXさんのいるホテル」をお客さまが選んでくださる、ということは、○○さん、XXさんの名前にブランド力・付加価値が認められた、ということになります。ブランド力のある社員のいるホテルであれば、多少値段が高くても「あの快適なホテルに泊まりたい」という付加価値を認めてくれるファン、常連が付いてくれます。

そして会社は、このようにお客さまにブランド力を認められ、ホテルの価値を高めてくれる社員には、喜んで高い給料を払ってくれるはずです。
 

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