基本ルールの整備とトレヴィーゾ、トリエステの特別呼称
プロセッコDOC のワイン生産量は、2009年から17年までで4倍と、マーケットを大きく拡大させている。その75%を海外に輸出しているのも大きな特徴だが、単に世界的なスパークリングワインの人気拡大に乗じたわけではない。そこに徹底した攻めと守り、両面のブランディングが存在しているのを見逃してはならない。
数ある規定の中でも、生産地域やブドウの品種、栽培技術や醸造工程に関する規定は、ブランディングの視点で言えば“ 最低限守るべきこと” だ。プロセッコのパーソナリティを形成するグレーラ種を少なくとも85% 以上使い、ヴェルディーゾやビアンケッタ・トレヴィジャーナ、ペレーラ、グレーラ・ルンガなどの土着品種、もしくはピノ・ネッロ(ピノ・ノワール)やシャルドネといった国際品種を用いて良いことになっているが、グレーラ100% によるプロセッコが増えているという。
また、特別呼称の存在にも着目したい。ヴェネト州トレヴィーゾやフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州トリエステでブドウの栽培から瓶詰までを同県内で行なっているものに対しては、プロセッコDOC トレヴィーゾ、同じくDOC トリエステという呼称、表記ができる。DOCG と比べると広域での生産のイメージが強いプロセッコDOC における“ 特区” の存在は、このエリアの価値を高めるシンボルの一つだ。
産地を訪ねる ② Vinicola Serena ヴィニコラ セレナ
1881年にピエトロ・セレナ氏が創業したファミリーワイナリーは、130年、5世代にわたり革新を積み重ねている。ボトルの使用や酸化に対する技術的な革新、ブドウの調達から発酵、瓶詰めまでをコネリアーノで一貫して行なう生産拠点を確立などを経て、現在は5代目ルカ氏のビジョンにより国際的なマーケットを拡大している。世界中のホテルやレストラン、カフェなどで使用されているグローバルブランドに至る過程で、ラベルの刷新やブランドの整備も推進してきた。
日本で流通している主要ブランド「TERRA SERENA」は㈱モトックスが輸入・販売。そのほか「VILLE D'ARFANTE」「CORTE DELLECALLI」などイタリアワイン5ブランドとシャンパーニュを展開し、プロセッコではないがロゼのスパークリングワインやスティルワインも製造・販売している。
ルカ・セレナ氏(中央)と昨年プロモーションの優秀店舗 「NIDO」の戸羽剛志シェフ(左)と茂木孝弘ソムリエ(右)。セレナのプロセッコを積極的に販売した
産地を訪ねる ③ La Marca vini e spumanti SCA ラ・マルカ生産者組合
非公開のショールームからの眺め。広大な敷地が広がる
トレヴィーゾ県のワイン生産者の九つのグループが連合して1968年に誕生した第2次協同組合「La Marca」は、およそ1万haのブドウ畑に5000の醸造業者で構成されており、その土地の大半でグレーラが栽培されている。ワイン醸造における最先端の技術だけでなく、長年にわたり培われた専門知識や経験をもとにしたダイナミックな商業戦略でプロセッコを代表する企業のひとつだ。
古城をショールームに構える(非公開)などブランドイメージの確立にも注力している。日本では㈱やまやが輸入・販売する「La Marca」はパステルブルーのラベルが印象的で、特に北米市場での人気も高い。ポップで若者向けの商品ラインをフィーチャーしているが、地の利を生かしたプロセッコDOC トレヴィーゾのエクストラドライなどもラインアップできれば、ブランドに対する理解度もさらに高まるに違いない。
左の「LA MARCA」エクストラドライは北米市場で人気。右の2品「Millage」ブランドは中央がDOCトレヴィーゾのエクストラドライ、右はコネリアーノ・ヴァルドッビアデネDOCG
パステルブルーの「LA MARCA」は特に北米市場、若い女性に人気だ
古城の塔の背後に広がる畑
それぞれの商品やアートなど、ディスプレイにも趣向を凝らしている