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第1回 湯浅 太 独立系中小規模ホテル F&B部門再生手法

第1回  F&B部門再生こそが中小規模ホテルの復活

【月刊HOTERES 2017年05月号】
2017年05月26日(金)
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独立系ホテル中小規模ホテルVS外資系・国内ブランドホテル
 
 仕事上、外資系ブランドのホテル、国内の大手チェーンホテルに携わることも多いですが、「ブランド」を持つホテルは独立系ホテルに比べて集客しやすく、売り上げを確保することも容易です。大手ブランドホテルにとっての「ブランド」とはお客さまへの「信用」「信頼」で、そのブランドだったら「安心」という担保です。自分が客の立場であれば大切な人と会食するときにブランドのあるホテルを選ぶのは当然であり、それが外資系・国内ブランドホテルとしてのメリットとなります。しかし、ブランドホテルの複数競合が同じマーケットに存在するときはまた別の競争が起きるのです。
 
 では独立系ホテルではF&B 部門で稼ぐことはできないのか…? 決してそんなことはありません。独立系ホテルでもすべきことを一つ一つ行なっていくことでもうかる仕組みを構築し、ホテルとしても独立した「ブランド」を持つことが可能です。地方の独立系ホテルでもブランドが確立されたホテルはたくさんあり、そのほとんどは宿泊だけでブランドを確立したわけではなく、宿泊以外のものでオンリーワンであったり、地域ナンバーワンを維持しているからこそです。あのレストランの朝食が食べたいからそのホテルに泊まるという需要を発生させることがブランドとしての確立につながるということです。また、あのホテルのレストランはおいしいから宴会の料理も良いだろうと思い、宴会や婚礼をそのホテルでしようというお客さまが増えることも一つのマーケティングです。
 
 また、外資系・国内ブランドホテルは売り上げを確保することだけでなく利益を確保することまであらゆるステップのサイクルを常に繰り返してこそ、そのブランドを維持していて、中小規模ホテルにおいても常にそのサイクルを回し続ける必要があります。この連載で独立系ホテルならではの収益、利益確保のステップを紹介していきます。
 
▪ F&B 部門の再生こそがホテルの再生
 
 F&B 部門は宿泊に比べ、原価率、人件費率が高く、F&B部門の不調がホテル全体の収支を悪化させるホテルは少なくない。苦戦を強いられている地域密着の中小規模ホテルにとってはそのF&B 部門の再生がホテル全体の再生(再盛)のカギとなります。部門別収支の中で宿泊は黒字、宴会部門は若干の黒字、レストランは赤字。レストラン単体で見ると朝食はプラス、ランチはプラスマイナスゼロ、ディナーは赤字というのがよく見る傾向です。このレストランの赤字が黒字に転換されることは黒字部門を伸ばすよりも全体収支に2 倍のインパクトを与えることになります。料飲部門が好調なホテルほど全体利益も高いのです。
 
 宿泊部門においては昨今宿泊需要も成長したことと、ここ15年レベニューマネジメントというものがホテル業界で確立されており、PMS(ホテルシステム)までにも取り入れられて売り上げ、利益を最大化するということが常識になってきています。これはホテル事業自体が宿泊主体という考え方からきているものですが、宴会を含むF&B 事業に関しては日本では「サービス」にかかわるもの、「おもてなし」などという言葉が入った教科書は多く出版されていますが、実用的なマネジメント手法・学問としては普及していないのが現状で、実際にサービス、顧客満足、おもてなしがどのように収益につながっていくか、そして利益を残していくのかを説いてなければそれは意味がないです。この連載ではどのようにして売り上げを組み立てていくのか。どのようにして利益を確保していくのかを説いていきます。「売り上げを作るためにはどうするのか?どのようなステップがあるのか?」「利益を確保するためにはどのような手法を実行すればいいのか?」ホテル事業にとって大切なのは売り上げであり、GOP(利益)です。中小規模ホテルにおいてそのかじを取るのが料飲部長の役割としての総支配人(GM)であるべきで、GM がリードしていかない限りレストランスタッフの成長は難しく、ホテルの方向性は定まりません。
 
売り上げ確保から利益確保までの手法
 
 料飲施設は宿泊や宴会のように営業して売り上げを確保していくものではなく、売り上げはしっかりとマーケティングプロセスを踏むことが大切です。マーケティングの中には店舗としてのコンセプト策定から競合分析、メニュー、プライシング、ターゲティング、顧客セグメンテーション、販促活動、アンケート調査、CS 活動、顧客管理。マーケティングに続いて売り上げ管理手法として数値分析、セグメント別傾向分析、フォーキャスト、アクションプラン策定、売り上げ予実管理(アクションプラン進捗管理)。その後、利益確保手法として原価管理、在庫管理、ABC 分析、ME分析、要員検証、人件費管理という流れの中でF&B 部門の売り上げ、利益を確保するための手法を細かく解説していきます。また、これが宴会部門にも通じるところもあり、宴会の予算策定からその売り上げ管理、利益管理までノウハウを伝えていきます。外資系・国内チェーンホテルではそのプロセスは料飲部門がすべて行なうことは少なく、料飲部門以外にマーケティング部門、調理部門、管理部門(購買)が分業することが多いですが、独立系中小規模ホテルにおいてはGM、料理長が筆頭にサービススタッフ、調理スタッフ全員が参加して行なうことがより強い組織を形成することになります。これからしばらく連載にお付き合いいただけたら幸いです。

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