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第2回 中村勝宏プレゼンツ~業界への一石~

第16 回 田崎 眞也 氏 PART2

【月刊HOTERES 2015年05月号】
2015年05月22日(金)
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田崎 言われることはよく理解できます。そうした時代に来ているという事ですね。私の場合は19 歳で渡仏して22 歳で戻ってきましたので、しばらくフランス料理にいましたけれど、やはり日本でお客さまに良いサービスを提供すると考えると、フランス料理ではなくまず日本料理の世界のサービスを学んだ方がというので少しの期間日本料理店で勉強させてもらったのです。そのときに日本料理と日本酒の相性というのは、両方とも歴史があるのに、相性というのは未だに言われていないのですよね、業界の中に。それはどういうことかといいますと、この料理に、どの地方の、どのタイプの日本酒が合うか、合わないかという議論がされていなかったということです。食中酒という概念が和食の世界にないのです。
 
中村 まさにその通りで、少々不思議にすら思いますよ。
 
田崎 食事というのはご飯がついて、おつゆがついて、一汁一菜がでたら終わり。最後にお茶ですよね。食中酒という概念がなくてすべて食前酒なのですよね。酔わせてもてなす、酔わすために塩気の強い珍味を代表とする、酒がたくさん飲めるようにする肴というのは宴会席である会席料理の中に昔から出てきたのです。ですから、相性というのは無いわけです。フランスのワインのように、食べ物をよりおいしく食べてもらうために酒を選ぶという概念がないので。板前さんたちに聞いても日本酒は飲みやすい、料理の邪魔をしないものが良いという発想しかなくて、今でもそうなので、それをもう少しクリアしないと。いま欧米で日本酒ブームで日本酒を飲まれている方々はワインから入っているわけですので。食中酒なのです。でも、日本にはベースがない。
 
中村 まさにそこが世界を相手にする場合の、大きな課題です。今後は食中酒としての酒はどうあるべきかということを生産者も考えて行かざるを得ないことになるわけで、ぜひそうなってほしいものです。
 
田崎 そうです、飲みやすいばかりが金賞を獲っている現状があります、近年は少し変わっていきましたが。実際には古酒・熟成酒ももっと注目しなければいけないし。本来昔から熟成酒という概念は昔からあったのにもかかわらず、手間から手っ取り早く利益を得るために業界がこぞって、酒は新酒で飲むべきだ、生酒だ新酒だとして消費させるようなシステムにしてしまったわけです。ですからそこを根本的に変えないと、日本酒だって泡の出る活性酒も流行ってきましたし。そういうものを我々が理解して広めていくきっかけを作り、まとめあげて海外に発信していかなければならないと感じます。
 
中村 今、まさに日本のお酒にあっては、ターニングポイントの大事な時期に来ていると思います。やはりここは、田崎さんみたいな方々がその大切さを声を大にしていくべきだと思います。
 
条件が均一になり
言語が重要となる
 
中村 話題が少し変わりますが、一方では、日本の料理人がフランス・イタリア・スペインなどに修業に行き、日本に帰る事を断念し、彼らが現地で自分の料理で勝負しようという若者が増えてきております。今年もミシュランでは、二人ほど星を取り、20 人近くになり、実にうれしい状況になってきております。
 
田崎 もともと日本人の評価は高いですからね。
 
中村 チャンスをもらい自己の努力によってここまで来たということですが、これからも増えるのではと思います。ソムリエさんやギャルソンで海外で活躍されている方もけっこういらっしゃるのではないですか。
 
田崎 多いですね。ワーキングホリデーを利用して行っている方も多いので、なかなか正式な労働許可証を得ることは難しいようですが。あとはオーナーになるしかないという形でビザをとるしかないという背景もあるようです。フランスのみならず海外に行かれている方は多いです。国内でのソムリエコンクールをやると、大体上位は海外滞在経験者が多いです。やはりコンクールはどうしても言語、語学力が大事ですので、そのために修業に行く方も多いですから。フランス語・英語をかなり使いこなせるようにならないとなかなか上位に入賞できませんからね。知識や技術面は日本人のレベルが高いですから、後は、言語の問題ですね。それ以外は十分です。
 
中村 海外で経験を積むということは、あらゆる技術面での知識もさることながら、最終的には自己の肌身を通じてそこの風土を知るという事が何よりも大切であることに気づかされますが、同様にソムリエの世界でも各産地での風土を知ることは実に大切なことでしょうね。
 
田崎 その通りですね。でも逆に、フランスでもボルドーのソムリエがフランス国内のチャンピオンにもなり辛いという、どうしても井の中の蛙になりがちなのですよね。それはやはりあります。今はそうではなく、世界中のワインが自由にいつでも購入できるという、日本の方が帰って情報を入手しやすい面もあります。
 
中村 うん、よくわかります。フランス人は意外と保守的で、特に地方に行けば、当然その土地のワインが中心で、他の地方のワインを飲む機会が実に少ない。
 
田崎 ですから、私が1995 年に優勝して、それまではずっとフランス人でしたけど、以降は一人しかフランス人は優勝していませんね。逆にハンデになってしまっている。私も自分でコンクールのトレーニングをしていたときにそう思い始めましたね。フランス人よりも我々の方がメリットがあるのではないか。つまり、条件的には恵まれているのではないかということです。昔はパリで、オーストラリアやカリフォルニアのワインはほとんど販売されていませんでしたからね。日本は当時から購入できました。また、今はインターネットで情報収集していますが、昔は現地に行かないと知ることができませんでした。なので、情報収集の面からの条件としては世界中のどこでも同じですので、あとは努力だけですね。コンクールはコンクールで競い合い、一位を取らなければ意味がないですから。一位になりそうな奴を越える努力をしないといけませんので。それは条件的には同じになりましたよね。昔は日本はハンデがありましたから、フランス、ドイツ、いずれも現地に行かないと資料を手に入れることが出来ませんでした。
 
中村 確かに。ですが、そんな中で田崎さんは20 年前にチャンピオンになられて、世界に特にフランスをはじめとしたヨーロッパに凄いインパクトを与えたわけですが、しかし以降誰も日本人が獲れていないですよ。
 
田崎 他の国も同じ条件で伸びてきていますからね。やはり言語が重要視されるようになってきて。あとは世界中のスピリッツを含めた飲み物全般の知識が要求されるとの相性というのはワインを選ぶにもなかなか難しい面があるように思えますが、実際はどういうものなのでしょうか。
 
田崎 実際にはフランス人は十何皿も越えるような料理は食べてないですよね。そのようなコースを出すところに行ったとしても、アラカルトで食べるところがやっぱようになってきて、そうなるとまだ日本では不利な面が多いのも確かです。例えばスウェーデンとかノルウェーとかのほうがよほど世界中の飲料を得ることができますから。
 
中村 良くわかります。早く第二の田崎さんが出てくることを願います。

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