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CT Spirits Japan

【レポート】セラーマスターのドミニク・ドゥマルヴィル氏来日!「シャンパーニュ・ラリエ テイスティングセミナー」

2023年04月07日(金)
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■シャンパーニュ・ラリエ ブラン・ド・ブラン
コート・デ・ブラン60%、アイ40%の比率。ベース・ワイン(2019年産)70%、リザーブ・ワイン(2018年産)30%で36カ月熟成。ドサージュ8g/l。
 
前述のピノ・ノワールが多いアイの地で3haのシャルドネを栽培しており、それを用いたブラン・ド・ブランだ。淡いレモン色に細かな泡が持続的に見てとれる。口に含むと泡由来のクリーミーさがとてもやさしく、2次発酵と熟成が丁寧に行われていることが伺える。高すぎない酸味と明るい果実のニュアンス、クリアな味わいと酸の伸びが印象的。ボディに少しニュアンスがあるが、これがアイ産のシャルドネの特徴なのかもしれない。コクをつけるために厚化粧をしたようなシャルドネではなく、デリケートな中に精悍さを伺わせてくれる。
 
■シャンパーニュ・ラリエ グラン・ロゼ
ピノ・ノワール65%、シャルドネ35%。ピノとシャルドネの白ワイン93%に対して、ブジ―のピノを7%加えたうえで2次発酵を行っている。ブジ―と言えば、ブジ―ルージュで有名であり、ピノ由来のふくよかさと優雅が感じられる。ベース・ワイン80%、リザーブ・ワイン20%で36カ月熟成。ドサージュ8g/l。
 
イキイキとしつつ、しなやかさとデリカシーがあるロゼ。ブラン・ド・ブラン同様、非常に細やかな泡が淡いサーモンピンクのワインに浮かぶ。クリーミーなニュアンスに、ストロベリーや甘く熟したチェリー、赤系果実の瑞々しい果汁を思わせる香りがある。クリーミーな口当たりに、香りにあるようなフレーバーが合わさり、果実感とバランスの取れた酸味が長く続く。厚みと酸のコントラストに、ほんのりと苦味のアクセントが加わる。余韻がとてもピノらしい。
 
■R.019
「R」は「Récolte」(収穫)と「Reflexion」(反映)を意味し、ヴィンテージの個性を反映させたシリーズ。また、ラリエが表現する4つのコンポーネントをしっかりと感じ、ラリエのスタイルがよく分かる。ピノ・ノワール55%とシャルドネ45%、ブレンドとしては2019年産が88%にリザーブ・ワイン(2018と2012のブレンド)を12%加えている。36カ月熟成。ドサージュ8g/l。
 
ヴィンテージの個性が出ているシリーズなので、年によってリザーブの使い方もことなる。R.019は12%のリザーブを用いている(R.018は2014,2016,2017を用いたリザーブワイン30%使用)。
 
色合いはブラン・ド・ブランより少し濃くなり、淡い黄金色をしており、繊細な泡が継続的に立ち上っている。発酵由来の香りが豊かで、樽や澱からくるコクや厚みを感じさせてくれる香り、マッシュルームのようなキノコ感、ライムやレモン、ほんのりと熟れた白系果実を思わせる香りがある。熟した果実の甘さを感じるフレーバに、コクと柔らかい泡のテクスチャーが心地よい。ラリエが大切にしている4つのコンポーネントを感じることが出来る。特に凝縮感と深みは、樽や澱による香ばしい香りと甘みによりより際立って感じ、それでありながら熟した果実と全体と調和のとれた酸味がイキイキとさせつつデリケートさを演出している。ラリエを試すなら、まずはこの1本を手に取ってほしい、そう感じさせてくれる「伝えたいスタイル」が理解できるシャンパーニュだ。
 
■シャンパーニュ・ラリエ ウヴラージュ グラン・クリュ
動瓶やデゴルジュマンを手作業で施すなど「ウヴラージュ=職人による作品」として造られた1本。瓶内熟成時に王冠ではなくコルクを使用するという伝統的な手法採用している。ピノ・ノワール65%、シャルドネ35%。オジェの「レ・ユロー」とアイの「レ・ムエテル」という区画のものを使用している。熟成期間は6年以上で、ドサージュは4g/l。
 
王冠ではなく1960年頃まで行われていたコルク栓による二次発酵を採用している点がユニーク。熟成期間も他より長く、その影響が色濃く出ている。R.019よりもより樽や澱といった発酵由来の香りが豊かで、それでいて、果実熟れたニュアンスにシトラス感や土壌を思わせるチョーキーネス、はちみつやビスケット、ブリオッシュ、ほのかにハーブの印象を受ける。深みと複雑さがあり、余韻にはドライフルーツのような印象がある。
 
R.019はラリエのスタイル(4つのコンポーネント)が際立ったシャンパーニュであったが、こちらのウヴラージュは、シャンパーニュの持つ熟成の可能性を存分に感じさせてくれる。モンテ・クリスト伯ではないが、熟成による長い年月を待った先に生まれる感動がある。熟成したシャンパーニュは抜栓後に空気と触れさせてあげることでより開くが、コルク栓の影響もあるのか、熟成による恩恵がダイレクトに感じられる。クラフトマンシップの象徴でもある1本は、熟成という体験を感じるのに最適な1本ではないだろうか。
 
■シャンパーニュ・ラリエ グラン・クリュ ミレジム 2014
100%グラン・クリュを使用したヴィンテージシャンパーニュ。ピノ・ノワール73%にシャルドネ27%。熟成期間は7年、ドサージュ8g/l。
 
キノコや澱の香り、ほんのりとチーズやおかきのような香ばしさ、柔らかいチョークの香りがあり、柑橘やはちみつのニュアンスもある。口に含むと繊細な泡と共に、様々なフレーバーが感じ取られる。芯の通った酸があり、その酸味のおかげでヴィンテージをブレンドしていたものには感じられなかった統一感のようなものを感じる。
 
R.019、ウヴラージュを飲んだ流れでヴィンテージを飲むと、その年が表すもの、そしてシャンパーニュのブレンドがもたらすものがよく理解できる。リーンでデリート。そのリーンさを生み出すのはシャンパーニュならではの酸味である。無駄がなく、トーンに一貫性を感じる。

四重奏(カルテット)
CT Spirits Japanがラリエを日本で販売し始めたのは2022年からとまだ日が浅い。パリを中心としたフランスの星付きレストラン、ホテルなど多くの高級レストランでも採用がされている。その理由は、試飲コメントで少しお伝えしたが、明確なスタイルに加えて、シャンパーニュが持つ味わいの裏にある歴史や技術を体験できる点にもあると感じる。
 
冒頭で、「なぜこの場面で、このシャンパーニュなのか」を伝えることの必要性に触れた。ラリエの場合、クラフトマンシップとオートクチュールなワイン造りを通じて、シャンパーニュという土地だけでなく、ワインそのものの熟成やブレンドの楽しみ、一種のアートと表現される技術を体験してもらうのに適していると感じる。料理のテーマはもちろんだが、ブレンド技術という切り口での構成などにも対応が可能だ。
 
クラシックの世界に四重奏(カルテット)というものがある。ハイドンの弦楽四重奏曲はよく流れているのでご存じの方も多いと思う。交響曲とは違い4つの弦楽器と4人の奏者というシンプルさがあり、音楽の骨格がより明瞭に感じられる。ラリエのシャンパーニュは、まさにそんなワインだ。当日来場が叶わない読者もいたかと思う。是非、何かの折にでも手に触れて試してみて貰いたい。
 
 
【参考文献】
安田 まり(2020)『持続可能なブドウ栽培へ―ボルドーの環境問題への取り組みの事例研究―』, 明治学院大学法律科学研究所年報, 36, pp.45-57
Steve Charters(2009)『The Champagne Business Today』, TONG, No.4, Millefeuille Press
Tom Stevenson(2013)『World Encyclopedia of Champagne & sparkling wine』, Absolute Press
Peter Liem(2017)『Champagne: The essential guide to the wines, producers, and terroirs of the iconic region』, Mitchell Beazley

担当:小川 

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