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【レポート】「アジアのベストバー50」常連Bar TRENCHのロジェリオ五十嵐ヴァズ氏が腕を振るうゲストバーテンディングイベント

2023年04月05日(水)
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本サイトでも何度か記事で紹介している、ザ・リッツ・カールトン東京の『バーテンダー テイクオーバー』。昨年11月より定期的に国内外で活躍するトップバーテンダーをゲストバーテンダーとして招いたイベントを開催している。本記事は3月23日(木)に行われた、その第6回目の開催の様子をレポートしている。

今回は、ロジェリオ五十嵐ヴァズ氏
今回は、2016年から7年連続で「アジアのベストバー50」にランクインすると共に、5年連続で「世界のベストバー100」に選出されているBar TRENCHのロジェリオ五十嵐ヴァズ氏がゲストバーテンダーとして来店。春の訪れをテーマに、「モンキー47」を使用したカクテルを披露してくれた。
 
事前のリリースで「今回提供させていただくのはクラシックカクテルに季節のエッセンスを加えたもの、素材の魅力にフォーカスしてレシピを再構築したもの、異国の文化の一片を感じられるカクテルをモンキー47を使って仕上げたものです。春の訪れをセレブレートするような親しみやすく、軽やかな味わいのものばかりです。フローラルでハーバル、フルーティーな風味に豊かなストーリー、丁寧に作り込まれたクオリティーの高さなど、モンキー47の持つ多面的な魅力を私のカクテルを通して楽しんでください」と、ロジェリオ五十嵐ヴァズ氏はコメントしていた。
 
さて、ここからは、それぞれの味わいについてコメントをしていきたい。実は今回は少し特殊で、撮影用のカクテルと、作り立てのカクテルの2回試飲の機会を頂いた。撮影用のものは時間も経ち緩い状態であったが、その緩さ故に春を想起させる違った側面を見せてくれた。以下、併せてコメントをしていく。
 
「Sakura Reviver」



ベースのモンキー47に、桜のリキュール、ホワイト・ベルモット、レモンジュース、アブサンが用いられている。
 
ライトピンクな色合いがいかにも春らしい雰囲気を出している。このカクテルのキーはアブサンで、そのアブサンが時間経過によって桜を違った様相に変えてくれる。提供したてのものは、コアントローやレモンの印象と酸が利いていることもあり、まだ固い蕾のような桜を思わせてくれる。よく冷やされていることもあり、少し冷え込む夜に映える桜の蕾のような印象がある。
 
温度が徐々にあがることで、少しづづ酸による引き締めも解け、アブサンのニュアンスが出てくる。そのアブサンのハーバルでグリーンなニュアンスが、蕾の桜を葉桜へと印象付けてくれる。また、香りの奥には、ほんのりとバラを思わせる香りがあり、桜がバラ科の植物でもあることがふと思い出される。
 
温度(提供からの経過時間)によって、アブサンの風味の効き方が異なり、徐々に葉のような印象が強くなる。三月のまだ少し冷え込むが春の訪れを感じさせてくれる期待感から四月になり暖かさと共に花開き徐々に新しい季節を告げる葉桜の新緑を感じる、そんな、春の季節にしか見れない桜の様相を感じさせてくれるカクテルだ。
 
「Horchatta Swizzle」



ベースのモンキー47に、ライム、ジャスミン米とスパイスを寝かせてつくったオルチャータのコーディアルを、クラッシュアイスを用いてSwizzleタイプで提供。
 
オルチャータはスペイン語圏で親しまれている飲料で、元々は大麦を使ったもので、各地によって少しづつアレンジされている。メキシコではライスウォーターが用いられるようだ。そして、このカクテルにもお米が使われている。
 
ジャスミン米を使っているからだろうか、一番初めに思い浮かんだのは、スペイン語圏ではなく、サイゴン(ホーチミン市)の春である。同じお米でも日本のジャポニカ米とは異なるお米の香りが、どことなく東南アジアの米文化を思わせてくれる。
 
そのお米の香りに、ミントによる清涼感と葉のイメージがあり、多湿な環境をどことなく感じさせるスパイス感やジャスミンを思わせるフローラルな香りにライムのニュアンス、ココナッツミルクがより南国のようなエキゾチック感を演出してくれている。余韻近くからはジンジャーのピリリとしたアクセントが感じられる。
 
Swizzleスタイルでゴクゴクと飲めるが、ジャスミンライスのとぎ汁のようなテクスチャーがコクを感じさせてくれる厚みに寄与している。モンキー47が持つボタニカルのニュアンスと清涼感、苦味や辛さというスパイスの要素が多層的に香り、大地の芽吹きをイメージさせてくれる。スパイス感も相まって、刺激的な香りが活力を生み出してくれる、気分が前向きになるカクテルだ。
 
「Sloe Paloma」



モンキー47 スロー・ジンとテキーラブランコを用い、グレープフルーツ、ライム、ラズベリーにトニックを用いる。
 
テキーラの香ばしさとスロー・ジンの少しアーシー(土っぽい)ニュアンスが印象的で、そこに非常に糖度の高いトマトにも似たピンクグレープフルーツをギュッと絞ったような香りがある。ラズベリーやスロー・ジンがグレープフルーツ小気味よいアクセントを加えている。塩気がテキーラと酸味に良いコントラストを与えてくれている。
 
このカクテルはロングカクテルでありながら、飲みごたえがあり食欲をそそられる。ソフトな口当たりだが、テキーラの香ばしさとナッツのようなスロー・ジンの深みが厚みを演出している。余韻近くにジン由来のボタニカルが香る。
 
春をイメージしたカクテルだが、グレープフルーツと塩気と香ばしさのある味わいは、どこか夏を思わせてくれるように筆者は思った。しかし、太陽が燦燦と輝く夏ではなく、穏やかさがあるような5月中旬のイメージかも知れない。テキーラの故郷であるメキシコは日本よりは春の季節気温が高いであろうから、実はそうした場所ではピッタリなのかもしれない。異国の春への想像を掻き立ててくれるカクテルだ。
 
「Eddie Brown」



1930年編纂のサボイカクテルブックに掲載された古典的なカクテルでありながら、そこまでの知名度がないカクテルで、もっと評価をされても良いという思いから今回選ばれた。ベースのモンキー47に、キナ・ラエロ・ドール、アプリコット、オレンジマンダリンビターズが用いられている。
 
クラシックさを感じさせてくれるカクテルで、シンプルながら使っている素材によって真価が分かれるような印象を受ける。ベースのモンキー47ならではのクリアで軽さにも似たドライな味わいの上に、アプリコットとビターズが乗ってくる。アプリコットの華やかさにつられる様にモンキー47の持つ芳醇なボタニカルの香りがダイレクトに伝わってくる。
 
キナ・ラエロ・ドールの影響なのか、口当たりもまろやかで濃厚さを感じさせながらも繊細さとシンプルさがある。ドライすぎると固い印象があるが、甘味によるカウンターを加えることで口当たりが滑らかになっている。マティーニのようなシンプルさがありながら、柑橘とストーンフルーツの香りが豊かなカクテルだ。
 
素材との対話、乗せる印象
ロジェリオ五十嵐ヴァズ氏のカクテルは、画家が多彩な色で絵画を表現するように、香りが多彩で重厚的なのが印象的であった。以前、ビターズの使い方について同じザ・リッツ・カールトン東京で行われた『バーテンダー テイクオーバー』で言及したことがあった。今回はそれに近い、ビターズとは異なる「薬草系」の活かし方が非常に印象的であった。
 
ビターズに漏れず、薬草系にも薬効というか効果がある。一つは生理的な効果で、もう一つが精神的な効果だ。特に今回のカクテルは香りが本当に豊かであり、飲むと刺激的で気持ちも前向きになるように感じられた。春の訪れとともに、前に進むのを後押ししてくれるような気持になるカクテルは、飲んでいて元気がでる思いであった。実際に、同席した方々と様々なお話が弾んだ。
 
4種カクテルの構成も、軽いものから飲みごたえのあるものまで飲み手への心遣いを感じられた。モンキー47の持つクリア感と芳醇なボタニカルの香りをひとつひとつ丁寧に読み解き、そこにビターズやハーバルなニュアンスを加えつつ、それぞれのカクテルでジンの違った一面を引き出しているのは、さすが世界のベストバーで長年ノミネートされているだけのことはあると感じさせてくれた。香りの絵画を楽しむ、そんな作品であり、様々な国や春の情景を想起させてくれる飲み手のイメージを喚起する
 
越境、ケイパビリティ
今回、ロジェリオ五十嵐ヴァズ氏がカウンターに立ち、カクテルと提供している姿を見て感じたことがある。白の白衣に似たユニフォームも相まって、バーに普段から勤務しているような感覚すら感じさせてくれた。
 
ザ・リッツ・カールトン東京で行われた『バーテンダー テイクオーバー』は今回で6回目だ。かなりペースも早い印象を受けたが、「ザ・バー」ヘッドバーテンダーの和田氏のネットワークもさることながら、毎回違うTOPバーテンダーを招致することで、バーに様々なノウハウや知見が蓄積されていく点が見逃せない。
 
それは大きな資産でありケイパビリティの向上にもつながる。異業種では、企業の成長のために越境(学習)やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などの投資を行ったりしているが、ホテル業界では人材不足もあり成長につながる投資はあまり目にしない気がする。そうした意味で、この『バーテンダー テイクオーバー』は非常に意味のある取り組みであると感じる。
 
特に、FBについて言えば、ホテルと街場ではエコシステムに似た関係が構築されているとは言い難く、個人レベルの付き合いはあっても、対法人のような付き合い方はまだまだ余地が残されているように感じる。ザ・リッツ・カールトン東京が、そうした垣根を超えた取り組みを進めていることは素晴らしいし、今後の更なる進化が楽しみでもある。また次回の機会があれば、その様子もお伝え出来るようにしていきたい。
 

今回紹介したカクテルは、ザ・リッツ・カールトン東京の「ザ・バー」にて4月15日(土)まで提供されている。是非、足を運んでみてもらいたい。

 

■スプリング カクテル コレクション
期間:  2023年3月15日(水曜日)~4月15日(土曜日)
時間:  月~木:17:00~23:00 (L.O. Food 22:00 / Beverage 22:30)
金・祝前日:17:00~24:00 (L.O. Food 22:00 / Beverage 23:30)
土:12:00~24:00 (L.O. Food 22:00 / Beverage 23:30)
日:12:00~23:00 (L.O. Food 22:00 / Beverage 22:30)

価格:  各3,600円 


担当:小川

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