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第80回 “風の人”山下裕乃の「THE SHARE」 

第80回  全方位から攻めてくる“ 霧雨” の浸透力 ~か弱く細く、短い糸でも団結すれば面に変わる~

【月刊HOTERES 2019年07月号】
2019年07月12日(金)
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 先日の朝、東京地方は霧雨降る朝でした。繊細なシルクの糸のような、そしてひ弱く短い線、ちょうどワタアメを作るときに見られるような細かな糸が降り注いできました。その糸は雨よけの傘も何のその、さまざまなところから攻撃してきます。気がつくと傘をさしていたはずですが、履いていたパンツが全面的にしっとりと濡れ、素肌にまとわりついていました。
 
 もちろん、霧雨にかかわらず傘が役に立たないことはありますが、ゲリラ豪雨中によほどのことがない限り外出はしませんし、単発的な雨に関しては雨宿りで何とか防げるものです。ところが体感的には傘をささなくても充分に歩くことができる霧雨は想像以上に全方位的に攻撃してくるのです。1 本1 本はひ弱な雨ですがそれが幾重にも風に巻き込まれながら降り出すととてつもないパワーを発揮するのです。まさに細かな糸が重なり合い、面となっていくのです。
 
 霧雨的な攻め方は今、まさにホテル業界において必要不可欠なことです。昭和天皇が崩御されてからホテル業界は自粛ムードの中で結婚式に着目し、ホテルウエディングと銘打ち開花させました。それまでは法人宴会の中に埋もれていた個人宴会の最高峰が一気に浮上し、その地位を築き上げることができたのです。まさにホテル業界にとってはいい意味でのゲリラ的な恩恵を受けたのです。年間数億円もかけた広告宣伝も華やかに、広告予算が少ない料飲部の僻みの目や声はさておき謳歌しました。
 
 ところが今は情勢が変わり、外国人観光客の増加とともに取り込まれまたゲリラ豪雨的に宿泊部が一気に浮上しました。この先、数年で全国に700 軒ものホテル計画がされています。2020 年東京五輪開催後はどうなるのか? という不安の声が上がる中でも確実に増え続けています。その一方で民泊の進入に伴い、早くも稼働率が低迷し始めている地域もあります。料飲部においてはよほどの改革をしない限り、かつてのようにメインダイニング全盛期の時代はなかなかよみがえってこないかもしれませんが、もしかしたら何らかのきっかけでゲリラ的な恩恵を受けるときが来るかもしれません。
 
 しかしいずれにしてもゲリラ的な豪雨は一極集中型に過ぎず、まさに一過性の恩恵に過ぎません。今、必要なことはこのコラムで何度も書き続けていますが、部門間の壁をぶち破りホテル全部署が一丸となって攻めていかなければならないということです。一人一人の力は霧雨の糸のごとく弱いかもしれません。しかしながら、皆でそのか弱い糸を放つことによって面で攻めている霧雨にように、気がつかない内にジワリと染み込ませることができる大きな力になるのです。
 
 どの部署が強い、弱いなどと言っている時間はありません。また一過性のことに鼻高々している場合でもありません。それは一過性のゲリラ豪雨に過ぎず長続きしないからです。ホテルはまさに人手不足です。だからこそ、どんな小さな力でも構いません。新人、中堅、管理職ともに霧雨にようにか細く短くとも、皆で全方位から攻めて戦っていかなければならないのです。これからますますゲリラ的な恩恵を得ることが難しくなってくることでしょう。だからこそ、突発的なことに期待することなく常に一丸となってほしいのです。

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