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第四回 オンリーワンの宿づくり 第四回「望水」

㈱望水 代表取締役、想い出つくりサポーター 近藤 純司氏 × ㈱旅館総合研究所 所長 重松 正弥 氏

【月刊HOTERES 2015年12月号】
2015年12月18日(金)
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崖に沿うようにして建っている望水は、エントランスが8 階にあり、その先にロビーとラウンジがある。開放感のあるラウンジからは太平洋を一望できる

きらりと輝く個性を持ち、まっとうな経営を行なっている宿がある。われわれは、そんな宿を伝えたい。本連載は、旅館総合研究所の重松所長が、自身の目で優れた宿を厳選し、取材し、写真と文章で紹介する連載企画。第四回は、伊豆北川温泉にある「望水」。ここは、笑顔と幸せの空気が充満する館。「自分たちは、お客さまの想い出つくりのサポーター」と考えているスタッフが集う宿だった。
 
取材・文 旅館総合研究所 所長 重松正弥
企画・構成 本誌 丸山和彦 ※関連インタビュー60 ページ


望水の売りの一つ「Private Gazebo」。全部で四つある。約100㎡の広い空間に、広々とした露天風呂がしつらえてある。当日予約制で、お客さまが貸し切りできる


チェックアウト前にお客さまのお車を洗うスタッフ。この洗車サービスも、スタッフからの発案であり、自主的に続けているものだという


朝食も、地場の食材や、地場の郷土料理をふんだんに盛り込んでいる

二つの出来事が、経営者である近藤氏を、そして旅館「望水」を変えた。
 一つは、ある人にガツンと言われた「あなたは、社長としての想いの丈がなさすぎる」という言葉。それ以降、近藤社長はスタッフとの関係性をがらりと変えた。それまでの「経営者と従業員」という関係性を、自分のことをファーストネームで呼んでもらい、スタッフを「さん」付けで呼び、まるで家族のような関係にした。さらには、大げさに言えば、「スタッフの幸せ」を事業の目的としてしまった。指示することをせず、すべてをスタッフにゆだねてしまった。結果、スタッフはお客さまが喜ぶ新しいアイデアを次から次へと出し、自発的に行動するようになった。スタッフ同士で思いやり、助け合いの精神が生まれた。
 
 望水を変えたもう一つの出来事。それは、あるお客さまとのエピソード。「死ぬ前にもう一度親子で望水に行きたい」と懇願された余命わずかのお母様を連れて、二人でご宿泊されたお客さま。母と息子の二人旅を楽しまれ、笑顔でお帰りに。その2 週間後、息子さんから手紙があり、そこには「母は、『あの温泉は最高に良かったよ』という言葉を最後に残して天国に旅立ちました。親孝行ができて本当によかったです。望水さんのおかげです。ありがとう」と書かれていたという。
 その手紙を読んで望水のスタッフは気付いた。「お客さまはここに、大切な人との想い出つくりに来られる。だから、私たちの仕事は想い出つくりなのだ」と。
 それ以来、望水のスタッフの仕事のスタンスは、一貫して「想い出つくりのサポート」になったのだった。
 
 利益は事業の目的ではなく、スタッフとお客さまの幸せづくりの手段に過ぎない。そんなスタンスの経営が、旅館の、そして日本的経営の本来の姿なのかもしれない。


風呂につかりながら水平線からの日の出や、ムーンロードを楽しめる

望水のスタッフは皆楽しそう。そして新入スタッフでもどこか落ち着いていて堂々と接客をしている
望水の名物料理の一つである「北川あじ鮨」
調理長とセラピストのアイデアから生まれたヘンブリースパ「GECCA」のためのスパ・スイーツである「ニューサマーオレンジピール」。
2009 ~ 2011 年にかけて3 年連続でモンドセレクションの金賞を受賞している


望水のエントランス

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