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レミー コアントロー ジャパン

【レポート】ベルトラン・ロピタル氏来日!「テルモン」マスタークラス開催

2023年05月02日(火)
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4月26日(水)に、レミー コアントロー ジャパン株式会社が展開するシャンパーニュブランド「テルモン」の葡萄栽培家兼セラーマスターであるベルトラン・ロピタル氏が来日し、マスタークラスが開催された。本記事はそのレポートである。

【記事のハイライト】
対象:経営・運営に携わる方、酒類販売に携わる方など
キー:企業における持続可能な取り組み事例
資料:「テルモン サステナビリティの指針

 
“母なる自然の名のもとに(In the name of Mother Nature)” をすべての活動の指標とするメゾン・テルモンが日本市場で展開されだしたのは最近の事で、2021年からだ。テルモン自体がレミー コアントローの傘下に入ったのが2020年で、両社のテロワールに対する哲学や環境配慮への想いを鑑みれば、自然な流れであった。
 
そんなテルモンより、今回CEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏と、葡萄栽培家兼セラーマスターであるベルトラン・ロピタル氏が来日し、ブランディングセミナー及びマスタークラスが開催された。注目度の高いシャンパーニュという事もあり、当日はソムリエを含む多くの酒類関係者が参加していた。


左:テルモンCEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏
右:テルモン葡萄栽培家兼セラーマスターであるベルトラン・ロピタル氏 

持続可能を実現するためには?
テルモンを紐解く上で、テロワールと持続可能性の2点は欠かせない。特に持続可能性については、マスタークラスでもCEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏から豊富な説明があった。
 
レミー コアントローが4月28日に公表した「Full-year sales 2022-23」の中でも持続可能性については触れられている。2029-30年の目標において、グループとして100%の持続可能な農業実践や、ボトル当たりのカーボンエミッションを2030年には50%削減することを掲げている。これは2050年にネットゼロを目指す第一段階ともいえる取り組みだ。
 
テルモンは、「サステナビリティの指針(Our guide to sustainability in Champagne)」を発表している。当日は日本語訳されたものが配布されたが、非常によく出来ている資料で、経営や運営に携わる方はもちろん、流通に関わりが薄い方も一読頂きたい(先方のご厚意で日本語版資料を頂きました)。英語版はPDFにして46枚もの分量となるため全てをここで触れないが、1点だけ知っていて欲しい点がある。それは、GHGプロトコルによる二酸化炭素排出量の算定方法だ。なぜ、この概念が重要かというと、そこに流通が見えるからだ。
 
GHGプロトコルは、製造業では知られているが、サービス業ではまだ馴染みが薄い概念だと思う。脱炭素社会への道筋として、自社だけでなく、原料調達から製造、販売、破棄までの一連のサプライチェーンで考えていく。自社については比較的分かりやすいが、流通(仕入れから販売)には、例えば輸送にかかるエネルギー、梱包材、廃棄と多岐に渡り様々なことを考えなくてはならない。この概念を知るのに、テルモンの取り組みは最適な事例である。
 
何をどれだけ行えば持続可能な取り組みなのか?
この数年、SDGsという言葉が先行していたが、今では昔ほど聞かなくなっている気がしないだろうか?マーケティングの記号的な消費として使われるのはなく、きちんと取り組む場合、どの程度行えば実践していると言えるのだろうか?単発のイベントでも持続可能性を謳ったものは数多くある。そうではなく、「目標」を定めて行うためにはどうすればいいのか。目標をクリアしていくためには、きちんとした「測定」が必要になる。測定するためには、概念なり測定する対象の「定義」も行わなくてはならない。
 
先に挙げたテルモンの「サステナビリティの指針」はそれが理路整然と行われている。そして達成するために、科学に基づく目標設定が採用されている。そうした分析を経て、「目標を達成するためにどうしたらよいのか?」を考えた際、テルモンが出した一つの答えが「瓶」である。
 
シャンパーニュの瓶は、内圧に耐える必要があるため丈夫でなくてはならない。また、シャンパーニュというラグジュアリー感やギフトとして活用するために様々なパッケージングも行われる。テルモンは、こうしたシャンパーニュの常識にメスを入れた。
 
化粧箱は完全に廃止、特注ボトルもやめ、またリサイクルガラスの含有がない透明ボトルの使用も止めた。それだけに留まらず、ボトルの軽量化にも成功した。835gから800gへと35gであるが、流通を鑑みるとそのインパクトは大きい。シャンパーニュ全体で年間3億2,000万本のボトルが生産されており、もしそれらが軽量化ボトルに代わったらと考えてみれば貢献度の大きさがわかるのではないだろうか。また、テルモンは空輸での取り扱いも止めている。
 
こうした先進的な取り組みだけでも十分評価に値するが、二酸化炭素に関することばかりではない。テルモンを語る際に欠かせないもう一つとしてあるのがテロワールだ。もちろん、フランスに限らず、どの地域も独自のテロワールがある。テルモンでは、“母なる自然の名のもとに(In the name of Mother Nature)”という理念のもと、有機農業への転換、生物多様性の保全といった農業活動にも注力をしている。
 
テルモンの味わい
とは言え、読者の方々には、生産者の背景もだが、味わいも選定の際の大きな要素であり気になるところだと思う。テルモンは、先に挙げたように「サステナビリティ」と「アルチザン(職人による伝統的な製法での少量生産)」という2つの大きな柱から成り立つ。以下で試飲コメントを踏まえつつ、その魅力の一端を紹介していきたい。


 
レゼルヴ・ブリュット
シャルドネ43%、ムニエ37%、ピノ・ノワール20%
ドサージュ6.7g/l、デゴルジュ2021年
ブレンド:ベースは2017年で56%、リザーブ(2016年7%、2015年21%、2014年8%、他8%)
MLF:あり
 
色合いはゴールド。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。イースト、どこかライ麦のパンを思わせる少し酸味を帯びた香り、ライムなどの酸味のある柑橘の香り。ミディアムボディの辛口。酸味は高く緊張感があり、硬質なニュアンスを感じられる。リンゴを齧ったようなアフターは、シャンパーニュでありながらワインらしさをどことなく感じさせてくれる。
 
 
レゼルヴ・ロゼ
シャルドネ87%、ムニエ13%
ドサージュ5.9g/l、デゴルジュ2022年
ブレンド:ベースは2016年で52%、リザーブ(2015年27%、2014年18%、2013年3%、他8%)
MLF:なし
 
色合いはサーモンピンク。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。チョークのようなニュアンス、小さめの赤果実の印象、イースト、酸、柑橘のニュアンス。味わいは、レゼルヴよりもふくよかでミディアム+のボディに、クリーミーさを感じる辛口。酸味は高く小気味よい。ハーブやアーシーさがほんのりと感じられる。
 
 
ブラン・ド・ブラン・ヴィノテーク
シャルドネ100%
ドサージュ2.5g/l、デゴルジュ2022年
2006年ヴィンテージ、ティラージュ2007年、セラーでの熟成期間15年
バトナージュと共に樽発酵、Tiré-bouché(栓をして保存)はコルクにて、手作業でルミュアージュ
 
深いレモン色。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。長い熟成を経たことを感じさせる奥深さがある。バニラやバターのニュアンスに、ソレラを思わせる香りがある。ミディアム+のボディの辛口だが、熟成によるナッツのような香ばしい香りにドライフルーツのようなニュアンスが口いっぱいに広がる。
 
 
ブラン・ド・ノワール
ムニエ39%、ピノ・ノワール61%
ドサージュ3.4g/l、デゴルジュ2021年
2014年ヴィンテージ、ティラージュ2015年、セラーでの熟成期間6年
発酵はオーク樽とタンクにて、Tiré-bouché(栓をして保存)はコルクにて
 
色合いはややアンバーがかったゴールド。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。赤系由来のせいなのか、赤系フルーツのジューシーな香り、コンポートやキャラメルのような香ばしいニュアンスも感じられる。辛口のフルボディで、樽による影響、クリーミーさ高い酸味とフルーツ感が高いレベルでバランスを取っている。ほんのりと感じられる醤油のようなニュアンスもフルーツとのギャップがあり印象深い。
 
 
レゼルヴ・ド・ラ・テール
シャルドネ66%、ムニエ34%
ドサージュ5.9g/l、デゴルジュ2021年
2017年ヴィンテージ、ティラージュ2018年、セラーでの熟成期間3年
オーガニック認証100%、MLFあり
 
深いレモン色。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。チョークよりもより硬いストーンな印象がある。ラムネのようなニュアンスに、少し花火を思わせる香りがある。辛口のフルボディ。シードルやワインを飲んでいる印象を受け、ナッツやスパイスなど複雑に香る。コクと共に長い余韻がある。
 
 
サン・スフル
シャルドネ58%、ムニエ42%
ドサージュ2.5g/l、デゴルジュ2021年
2013年ヴィンテージ、ティラージュ2014年、セラーでの熟成期間7年
亜硫酸無添加での発酵、MLFあり
 
淡いカッパーの色合い。細かな泡が持続的に立ち上る。香りはクリーン。ニコラ・ジョリーの「クレ・ド・セラン」を初めて飲んだ時のような衝撃。ダイレクトにワインそのものが語り掛けてくる印象がある。オロロソを思わせるナッツのような香り、ハーブや火入れしたフルーツ、イーストなど多層的に香る。ドライでありながら、コク深い味わい。品質の良いボルドーに感じられるような1本芯の通った感じを受ける。


 
テルモンのシャンパーニュを一言で表すなら、飾らなさというか謙虚さを挙げられるかもしれない。テロワールに忠実というか、例えば、高い酸味による果実感や高いテンション(緊張感)、それに伴うストラクチャーは磨き抜かれたようでありながら、その土地の本質をそのまま表現しているようにも感じられる。
 
飾らない素直さがあるので、フルーツ感や2次発酵などのニュアンスが全面に感じられることもなく、お料理とも歩調を合わせやすいと感じた。特に、サン・スフルやレゼルヴ・ド・ラ・テールは、普通のスティルワインの様な酒質を感じることができた。これは、2次発酵という個性が加わるシャンパーニュにとってはとても珍しいことではないだろうか。自分も試飲して、まさか「クレ・ド・セラン」が思い浮かぶようなシャンパーニュがあるとは思わなかった。
 
テルモンのシャンパーニュは、ボトルにも、その中身にも確固たる想いが反映されているように感じる。なので、安易にエシカルな消費という文脈で紹介するのではなく、一つの企業が真剣に自分達のあるべき姿を追い求めるその過程として手に取って欲しいと感じる。
 
ハリウッドを代表するレオナルド・ディカプリオ氏が出資するシャンパーニュなど、謳い文句は他にもあるが、それは企業が真摯に向き合った結果であり、その取り組みの道程はまだ始まったばかりでもある。企業に所属する方なら誰しも数字的な面で販売に目が行ってしまう。販売という一面だけでなく、流通全体を見る大切さ、自身のあるべき姿の見本として、テルモンを一度手に取ってみて欲しい。

【参考文献】
テルモン, 「サステナビリティの指針(Our guide to sustainability in Champagne)」(是非、一読してみて下さい)
Rémy Cointreau, Press Release Q4 Sales 2022-23, 2023
https://www.remy-cointreau.com/app/uploads/2023/04/Remy-Cointreau-Press-Release-Q4-Sales-2022-23.pdf

担当:小川

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