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第一回 川尻倫明  プロフェッショナルF&Bを追い求めて

第一回 ~バトラーからメートル・ドテルへ~

【月刊HOTERES 2017年04月号】
2017年04月13日(木)
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メニューを決めるメートル・ドテル
 
 シェフの屋台からその後の高級レストラン「グランド・メゾン」につながってゆく過程でメートル・ドテル活躍の場所も広がっていきます。私がフランスで会ったメートル・ドテルの中には「ドラクロワ」や「ランベール」などの貴族のような名前のスタッフが多くおり、よく話を聞くと、先祖が貴族のバトラーでご主人様からいただいた名前だとか、お父上は有名ホテルのメートル・ドテルで、代々この仕事に携わっているとのこと。初めて「ドラクロワ」に会ったのはパリのマキシムでした。今でこそミシュランとは無縁になってしまいましたが、当時は3 ツ星を長く取得している名店で、店内を飾るアールヌーヴォーの巨匠「ロートレック」の壁画とともにフランス文化を象徴するようなお店です。その壁画は重要文化財に指定されており、その中で普通にレストラン営業が行なわれているなどは、日本では考えられないことです。そこがフランスなのでしょう。彼のサービスには品格があり、VIP の顧客たちにも引けを取らない落ち着きでサービスにあたります。顧客の体調や、顔色、今夜の目的などを考慮して全体の流れをプロデュースしていました。彼のテーブルには「君に任せるよ」という顧客が多かったと記憶しています。
 
 シェフにお任せではなく、メートル・ドテルにお任せと言っているのです。ドラクロワはシェフに相談もなく、お客さまが好みそうな献立を自分で組み立てていくではありませんか。シェフも彼の言うとおりに調理してくれます。信頼関係がお客さまともシェフともできているからでしょう。
 
 ヨーロッパでは彼のようなメートル・ドテルをよく見かけました。料理に対しての知識は若い料理人をしのぐ程のメートル・ドテルが山ほどいるのです。
 
 お客さまのマナーに関しても哲学をもっており、男性客が食卓で帽子をかぶっていたなら、強引にでも帽子をとってもらいますし、コートを着たままダイニングに入ることさえ許してくれませんでした。VIP に対しても同様です。マナーを守れない方はお客さまと認めてくれないのです。だからこそパリのそれなりの家庭は、お子様にマナーを教えるためにもマキシムに通う方が多いのです(ほかの一流店も同様)。
 
 かの「マルセル・プルースト」は自身の執筆の中でメートル・ドテルに触れており、「真の社会の習慣を守り続けるのは、偉大なるレストランのメートル・ドテルである」と述べています。この一説は当時マキシムの総支配人であった「アルベール」に捧げた文章であると言われています。
 
 次回は、伝説のサービスマン、セザール・リッツとベルエポックについてお話し致します。
 
 

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