ログイン
検索
  • TOP  > 
  • 記事一覧  > 
  • 新連載 森田 司 ハイパフォーマーで経営改善 ――企業存続を左右する、若手と女性の育成・定着・最適採用
新連載 新連載 森田 司

ハイパフォーマーで経営改善 ――企業存続を左右する、若手と女性の育成・定着・最適採用

【月刊HOTERES 2016年08月号】
2016年08月05日(金)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

森田
Morita Tsukasa
一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ
創造支援研究所 理事長
〈Profile〉1968 年生まれ。企業の労務管理全般のコンサルタント、講師、カウンセラー、コーチ、メンターメンタルヘルス対策、ハラスメント対策、採用支援、育成支援、教育評価処遇制度設計・運用に実績。一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ創造支援研究所として、500 法人2000 事業場以上の労務管理支援実績あり。本誌での過去の連載は「ブラック企業ではなく「優良企業」と認定されるための手引」。厚労省 東京労働基準局三鷹労働基準監督署「健康職場づくりプロジェクト」外部研究者。厚労省(独)労働者健康安全機構 元外部研究者。厚労省東京労災病院 両立支援事業 元アドバイザー。
問い合わせ info@qol-souken.org

確実に大きく減少している日本の人口数。観光立国を打ち出し国の成長戦略として銘打っている半面、関連するサービス業はもはや人気職種となったIT 業界に押され、人材の確保が難しくなっている。そこでサービス業、特にホテルでは若手(厚労省の定義にある35 歳以下)や女性による高い生産性を発揮する人材=ハイパフォーマーの育成や離職防止対策、より的確な採用がますます重要となる。その実践ポイントを経営幹部の皆さまにお伝えする。

 ホテレス読者の皆さま、私、一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ創造支援研究所 理事長の森田司と申します。今月から『若手と女性のハイパフォーマーの育成・定着・採用による経営改善』というテーマで年間連載をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
 唐突でぶしつけな質問ですが「御社は儲かっていますか?」ホテルの宿泊も飲食も売り上げは上向きだが利益は厳しいという声を多く耳にします。利益を圧迫する最大の経費は人件費ですね。従って、効率良く人件費を支出したいものです。効率良く人件費を支出するとは、生産性の高い人材を確保するということです。それでは、質問です。「御社には生産性の高い人材がそろっていますか?」この質問への回答は、ごくわずかな企業が「そろっている」、ほかの大多数の企業は「そろっていない」という割れ方になるでしょうね。なぜ、このような格差が生まれるのか? ご存じならばすでに格差解消に向けて取り組みをしている! また、知ってはいるが、上が格差解消に向けた取り組みに対して積極的ではない! という声が聞こえてきそうです。そこで、本連載では、若手(厚労省の定義にある35 歳以下)と女性で高い生産性を発揮する人材=ハイパフォーマーを、既存従業員の中から育成するポイント、離職させないポイント、採用するポイントを経営幹部が納得するキーワードと合わせて解説してまいります。それでは、プロローグとして五つのキーワードを共有しましょう。

 一つ目は「2018 年問題」です。この問題は、学校や予備校、進学塾などの業界ではすでに大騒ぎになっていますが、ほかにも大騒ぎをしなければならない業界がたくさんあります。日本の18 歳人口は、1992 年の205 万人から2009 年には121万人へと激減しました。そして、2018 年からさらに減少し、31年には104 万人まで減少するという問題です。現在でさえ、新卒や若手の採用に困窮している訳ですから、何か手を打たなければ死活問題になりかねません。
 
 二つ目は「東京五輪問題」です。この問題は2018 年問題と重なってマイナスのシナジーを生む恐れがあります。建設土木業界や運輸交通業界といった若者や女性に不人気な業界と情報通信やIT 技術といった若者や女性に人気の業界では、本年度から東京五輪対応人材とそれ以降の新規事業展開対策人材の獲得を開始しています。ホテルの宿泊も、飲食も東京五輪は大きなビジネスチャンスであることは求職者も分かっていますが、東京五輪要員として使い捨てされるリスクも業界の体質から分かっているようですから、何か手を打たなければ死活問題になりかねません。

 三つ目は「女性活躍推進法施行」です。この法律は今年4 月に施行されました。女性が働きやすい企業であることを労務管理や人事制度をさまざまな工夫を凝らすことにより充実させ、その計画と取組内容をHP などで公開することが義務付けられました。10 年間限定で施行された法律ではありますが、10 年間で女性に選ばれる業界や企業の格付けがされてしまうという解釈もできます。何か手を打たなければ死活問題になりかねません。
 
 四つ目は「男女雇用機会均等法の平成27 年度改正とダイバーシティマネジメント」です。この法改正では、同性同士の差別等と性的少数派への差別もハラスメントに該当することを定めました。併せて、多くの企業が「地域限定社員制度」の導入を始めました。ホテル観光、飲食の業界は、ハラスメント問題が発生しやすい条件が整っており、実際に頻発していることは皆さまもご存じの通りです。さらに、ダイバーシティマネジメント(多種多様化する生き方の相互理解と働き方の検討)においては、高齢者や外国人、障がい者への対応が急務になっており、障がい者については性的少数派(LGBT)の活躍支援など、規程類の整備と研修等が必須なものもあります。何か手を打たなければ死活問題になりかねません。
 
 五つ目が「若者雇用促進法施行」です。これは若者の早期離職につながる労務管理不行き届きを許さない! という趣旨の法律です。従って、労働法違反が認められた場合には、その違反に対する罰則が科され、一定期間、求人広告掲載ができなくなるという追加のペナルティも用意されています。教育制度とキャリアコンサルティングの推進と過重労働対策で一定の水準(時間外労働時間、年次有給休暇の取得率など)を実現することが必須になります。その理由は、求職者や学校の就職課、キャリアセンターから要求された場合には、それらの情報を開示することが義務付けられており、それらの情報をHP などで公開しておくことが努力義務として定められているからです。公開していない企業は求職者等から、公開することができない理由があると判断され、選ばれにくい状況になります。もちろん、公開や開示した情報等に嘘があり、労働者が労働基準監督署や労働局に不服申し立てなどを行なった場合には、損害賠償請求の対象にもなるでしょう。何か手を打たなければ死活問題になりかねません。
 

 皆さまは五つのキーワードをどのようにとらえましたか? 危機感を覚えると同時にチャンスのにおいを感じた方はマネジメントセンスのある方だと思います。来月からは「打つべき手」を具体的にご紹介してまいりますので、お楽しみに。

月刊HOTERES[ホテレス]最新号
2024年04月15日号
2024年04月15日号
本体6,600円(税込)
【特集】本誌独自調査 2024年日本のホテルチェーングループ一覧〈前編〉
【TOP RUNNER】
リージェントホテル香港 マネージング・ダイレクター ミシェル…

■業界人必読ニュース

■アクセスランキング

  • 昨日
  • 1週間
  • 1ヶ月
CLOSE