宿泊産業の競争が激化し、ゲストのニーズが多様化しているいま、ホテルのマーケティングに求められている戦略は、とんがりをつくることである。とんがりで差別化し、そのとんがりに関心のあるゲストが集まる。本連載では、そんなコンセプトが際立ったホテルや宿泊施設を厳選して紹介し、それをささえる秘訣を紐解いていく。担当するのは、立教大学観光学部で宿泊ビジネスを学ぶ学生たち。学生のピュアな目に、日本のホテルはどう映り、どう表現されるのか。
取材・執筆/立教大学観光学部 船戸あゆみ・永本真絢 監修/宿屋大学 代表 近藤寛和
古都奈良の文化財の袂に佇むオーベルジュ
多くの日本文化が生まれ、多くの歴史的文化財が現存している奈良県。近鉄奈良駅から徒歩3分、登大路という上り坂の途中にひっそりと佇む「登大路ホテル奈良」。「庭園にたたずむ古都のオーベルジュ」というコンセプトがしっくりくる風格のホテルである。登大路ホテル奈良は開業15周年を機に大規模な改装を行い、2022年11月にリニューアルオープンしたばかりであり、歴史と共に新鮮さが感じられる。フロントオフィスマネージャーの福井良さんが、私たちをとびきりの笑顔で出迎えてくださった。実家のような温かみのあるおもてなしでお客さまを魅了する福井さんにお話を伺った。