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酒のSP

マデイラワインの魅力と可能性を探る カクテルにも、料理とのペアリングにも

【月刊HOTERES 2018年09月号】
2018年09月12日(水)
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マデイラワインに進化を施す
「エストゥファジェン」と「カンテイロ」
 
 アルコール発酵を止めるための酒精強化は、96 度と純度の高いスピリッツ添加による。そしてマデイラワインもシェリー同様にバリエーションが豊富だ。同一収穫年のブドウを用いて造るこのワインは、糖度によってドライ(60ℊ /ℓ以下)、ミディアムドライ(60 ~ 80ℊ/ℓ)、ミディアムスイート(80 ~ 100ℊ /ℓ)、スイート(100ℊ /ℓ以上)に大別される、おおむね甘みを感じるワインだが、それぞれのタイプによって、ドライにはセシアル、ミディアムドライはヴェルデーリョ、ミディアムスイートはボアル、スイートはマルムジーから造られるというように、ブドウ品種の特性に合わせたワイン造りが行なわれる。そしてこれらは「エストゥファジェン」と呼ばれる加熱装置で独特の進化が施される。45 ~ 50℃の湯が循環する管で温められるタンクの中でワインは色合いの進化と加熱による適度な酸化、そして化学反応によりドライフルーツやリンゴのアロマなどのフレーバーが生成されるのだ。さらに「カンテイロ」と呼ばれる、ワインセラーの最上階にある高温の部屋でオーク樽による熟成と凝縮が進み、複雑なアロマのワインが出来上がる。

 
料理との相性、カクテル素材としての可能性
 
 マデイラワインの独特の風味は、料理とのマリアージュとともに、カクテルに用いる副材料との相性にも多様なインスピレーションをもたらすだろう。
 
 辛口タイプのセルシアル種を用いたマデイラなら、オリーブや焼きアーモンド、キャビアやサーモンのカナッペのほか、マヨネーズを使ったオードブルとの相性も良いという。ヤギや羊のフレッシュタイプのチーズにも合うことを念頭に、食前でのもてなしや陽の高い時間帯での提供を考えてみたい。ミディアムタイプはよりストラクチャーのはっきりしたワインである特性を踏まえ、コンソメや冷製のクリームスープ、生ハムやジビエの燻製、マッシュルームのアヒージョとの相性に言及されている。ミディアムドライと言ってもそれなりの糖度があることを考えると、ミディアムスイートタイプのマデイラとともに照り焼きやかば焼きなどのたれを用いる和食との相性も試してみたい。そしてミディアムスイートではトロピカルフルーツやドライフルーツ、フルーツタルトなど食後の過ごし方が思い浮かぶペアリングが提案されている。さらにスイートタイプのマデイラでも、より熟成感のあるチーズやナッツ、ハチミツやバターケーキ、シガーとの相性という王道の組み合わせは想像に難くない。
 
 島最大の都市、フンシャルのサンタ・カタリナ空港が昨年、クリスティアーノ・ロナウド・マデイラ国際空港と改称されたことでも話題となったマデイラのワイン。ゲストに対するひねりを利かせた選択肢や、創造性を高めるカクテルの素材として、高い潜在能力を秘めている提案カードの一つだ。


■ マデイラワインの年別生産量と国別輸出量   ポルトガルおよびマデイラ島内消費量の推移(単位:ℓ)

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