ログイン
検索
  • TOP  > 
  • 記事一覧  > 
  • 茶道とバーテンディングにみる日本的おもてなしの根幹 「不易流行」でサービスにも新しいスタイル
酒のSP ザ・ペニンシュラ東京 Peter バー 中村充宏氏

茶道とバーテンディングにみる日本的おもてなしの根幹 「不易流行」でサービスにも新しいスタイル

【月刊HOTERES 2018年01月号】
2018年01月19日(金)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Peter バー シニアバーテンダー 中村充宏氏
Peter バー シニアバーテンダー 中村充宏氏

ホテル・街場を問わず、バーを訪れる外国人旅行者の姿が多く見られようになった。ジャパニーズ・スタイルをひと目見ようという‟Cocktail Tourism”は現実のもとになっている。2017年7月に行なわれたバー業界最大級の祭典「Tales of the Cocktails」(米国・ニューオーリンズ 以下、テイルズ)で日本人として初めて講演したザ・ペニンシュラ東京の中村充宏氏に、日本的なおもてなしの根幹を聞いた。中村氏が持つ茶道の視点とともに考えを深めると、その本質は可視化できない「無言のコミュニケーション」に及んだ。

■セミナーはジャパニーズスタイルの本質に迫った興味深い内容でしたね。
 
 海外から評価されている日本的なバーテンディングの動作や技術、日本的な素材といったものは、既に世界に伝わってきました。一方で、カクテルの作り方やモノづくりなど「どうして日本人がこのような気質になったのか」といったスピリチュアルなことに関心を持つグレイグースのグローバルアンバサダー、ジョー・マカンタ氏によって実現したのが今回のセミナーです。
 
 バーテンディングと茶道の、一杯に思いを込めるという共通点の中で、茶道で言えばお客さまや季節に合わせたお花や掛け軸、お菓子をご用意する準備の段階と、作る過程の表現にもおもてなしが存在します。少しゆっくり、やわらかな所作はリラックスした時間を生み出し、最もおいしいタイミングでご提供するのは日本のバーテンディングにも共通しています。
 
 しかし、こうしたお軸やお花を「あなたを思ってご用意しましたよ」と言葉にするのは粋ではありません。「粋と野暮」の概念が、日本的なおもてなしの可視化されない部分であり、精神が宿っているのです。互いに声にしない「無言のコミュニケーション」がおもてなしの真骨頂だとは、考えたこともないという方もいらっしゃる様子でした。
 
■テイルズでは、ほかにどのようなセミナーが行なわれたのですか。
 
 テイルズには35カ国からバーや酒類業界の関係者が集まり、60ほどのセミナー、ワークショップが行なわれていました。次の時代に向けたシンポジウムとして、ミクソロジーにおける新しい材料や手法であったり、これから注目すべき地域の紹介であったり。また、国をまたいで活躍するバーテンダーが増えている今日では、どのようにビザを取得して他国に就業するかといったセミナーもありました。一人一人が異なる文化的側面を持ち、その交流があるのが特徴です。サステナビリティも近年の飲料業界における大きなトレンドワードです。
 
こうした中で、それぞれの根底にはサービスがあるはずだというジョー氏の考えがもとになって、私が話をする機会に恵まれたのだと思います。

26歳でホテル業界に入り、31歳でザ・ペニンシュラ東京に入社した中村氏。今では海外でセミナーも行なう英語力はこの数年で身に付けたという

■セミナーを通じて、日本的なおもてなしに変化も必要だと感じたそうですね。
 
 ひと言で言うと「不易流行」であり、それを実践していきたいと感じました。最低限の英語、表情の豊かさ、アイコンタクトとボディランゲージ。海外でスピーチした日本的おもてなしを鏡写しにして、これからの日本のサービスにはこれらが必要だと思っています。
 
 外国人旅行者の増加により、日本のサービスはさらなる進化の過程にあると思います。これまで日本人のサービスは、同じ言語や文化のもとに暮らす者同士が観察し、推測し、実行するもの。言葉にしないサービスがあり、それにお客さまが気付いて初めてサービスが成立する。つまり、粋だからお互いに口に出さないわけです。次に何が起こるのか、何をなすべきかを想像するのはサービスの本質として変わらないのですが、今日では国が変われば違う言語が必要になり、伝えることでおもてなしが生まれると考えます。
 
 時代や環境によっては、笑顔でいると「ヘラヘラしている」ととらえられてしまうことがありました。お殿様と目を合わせることも許されず、伏し目が美徳とされた日本人ですが、コミュニケーションの相手が多国籍化していく過程で" 新しい日本のおもてなし" が出来上がるのではないかと考えます。バーは、お客さまと接する最前線で、お酒やカクテルなど一人一人へのパーソナルなサービスが具現化できる場所です。だからこそ、海外の文化との接点が多いザ・ペニンシュラ東京や、ホテルのバーから変わっていけるのではないかと考えています。
 
 ホテルやバーが多様化するように、バーテンダーに求められるスキルも確実に広がっています。バーテンディングも茶道も終着点はありませんから、広く世界を知り、日本のこともより多く、正しくお伝えしたい。「白珪尚可磨(はっけいなおみがくべし)」の精神で、歩みを止めずに進んでいきたいと思っています。

Gargoyle
東西通り外壁の7階にある、前身のビルより引き継ぐ守り神「ガーゴイル」をイメージして2017年10月から提供しているカクテル。セブンシーズラムとハブ酒に京番茶を合わせたスモーキーな味わいが印象的だ。

セブンシーズラム 3年 45㎖/ハブ酒 10㎖/カリブ 5㎖
ジェリートーマスビターズ 3dashes /京番茶ビターズ 2dashesビルドしてオールドファッションドグラスに注ぎ、オレンジピールを振りかける。2200円(税・サ別)
 
▶ Peter バー
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-8-1 ザ・ペニンシュラ東京24階
12:00 - 24:00( 日-木)/ 12:00 - 25:00( 金・土) ℡ 03-6270-2763

関連記事
「パトロン ザ・パーフェクショニスト カクテルコンペティション2018 中村充宏氏が優勝」(週刊ホテルレストラン2018年10月26日号)

月刊HOTERES[ホテレス]最新号
2024年04月15日号
2024年04月15日号
本体6,600円(税込)
【特集】本誌独自調査 2024年日本のホテルチェーングループ一覧〈前編〉
【TOP RUNNER】
リージェントホテル香港 マネージング・ダイレクター ミシェル…

■業界人必読ニュース

■アクセスランキング

  • 昨日
  • 1週間
  • 1ヶ月
CLOSE