このようにいまどきカップルが式場探しをする際、リアル情報のチェックはもはや当たり前のようになっているわけですが、ここまでに至った理由が3 つあります。1 つ目の理由は、いまどきカップルの価値観の変化です。インタビュー調査などでかつてのカップルたちは式場探しに対して「一生に一度のことだから、式場はしっかり検討して納得するまで探したい」とコメントする方がほとんどでした。ですが、今はそうではありません。いまどきカップルの多くは、「式場探しは無駄なく、損なく探す」とコメントする方たちがとても増えているのです。
 
「お互い忙しいので、式場探しは手っ取り早く進めたい」
「二人の都合がなかなか合わないから、式場は今度の土日（2 日間）で決めたい」
「無駄足を踏まないために、ネットで細かく事前チェックしてから来館先を決めたい」
 
　などなど理由はさまざまですが、いまどきカップルたちはとにかく効率よく、しかも損や無駄の無いように式場を探したいという考え方・価値観を持っているため、リアル情報が求められるようになったのです。
 
　2 つ目の理由は、式場探しの短期間化です。前述の「無駄なく、損なく」という価値観から派生したものと捉えても良いでしょう。弊社が行った調査でも、結婚式場を3 週間～ 1 カ月程度で決めてしまういまどきカップルは約4 割を占めており、一番のボリュームゾーンとなっています。これはインターネットや雑誌での情報収集をスタートしてから成約までの期間をさしていますので、来館までの期間までに絞るとわずか1 週間～ 2 週間程度です。みなさんの現場でも、事前の来館予約が少なくなり、前日や当日といった直前で予約が入ることが多くなったのではないかと思います。いまどきカップルはこの短い期間に数軒の候補式場をピックアップするわけですから、インターネットを活用して、広告だけでなく、広告には載っていない情報も踏まえながら比較検討をし、効率よく式場探しをしたいという思いからリアル情報が重視されたのだと考えられます。
 
　そして3 つ目の理由は来館目的の変化です。みなさんもご存知の通り、昨今の一組あたりの来館軒数は緩やかに右肩下がりで、平均3 軒～ 4 軒です。来館軒数の低下はさまざまな要因が重なったものだと言われていますが、実際に足を運ばなくても公式サイトや式場ポータルサイトを通じて情報収集し、その場で比較検討できるようになったという点では、インターネットはカップルたちの式場探しを大きく変化させたことには間違いありません。そしてその結果、いまどきカップルたちの来館目的は形を変え、かつてのような「実際に見ることで式場の魅力や良さを理解する」というものから「インターネットで得た情報が事実かどうか、実際に目で見て確認する」というスタンスになっているのです。式場の魅力や良さは事前にインターネットで理解しているので、来館したときは実際に目で見て確認し、それが自分たちにとってOK なのかNG なのかを判断しているのです。いまどきカップルたちは既述のとおり「無駄なく、損なく」志向です。インターネットで得た情報と、実際に来館してみて得た情報が大きく異なってガッカリたり、無駄足だったと思わないために、公式情報だけでなくリアル情報で事前チェックし、来館する・しないを判断しているのです。
 
　このようにいまどきカップルの式場探しにおいては必要不可欠になっているリアル情報ですが、これからも引き続き求められるでしょう。集客する立場である私たちはこういったいまどきカップルたちの志向性やニーズを理解し、それをうまくプロモーションに活用しようというスタンスが重要です。例えばブログやFacebook など、SNS を通じて式場側が積極的にリアル情報を発信すれば、いまどきカップルたちに式場の等身大の魅力をアピールすることができます。広告ではない、リアルな式場の情報はニーズが潜在的にある「花嫁予備軍」へのアプローチも可能でしょう。リアル情報を格好のプロモーション要素として捉えるかどうかが、集客成功のカギになっていくのではと思います。最後に、いまどきカップルたちのリテラシーは世代が代わっていくにつれてどんどん上がっています。それと共に式場探しのためのリアル情報も進化していくでしょう。活字や画像だけでなく動画を通じてリアル情報を得るなんていうシーンも近い将来、出てくるかもしれませんね。
 

千葉 伸子（ちば・のぶこ）
Nobuko Chiba
株式会社ウエディングパーク
コミュニケーションディレクター
ウエディングトレンドアドバイザー
結婚業界のトレンドやいまどきカップルの結婚事情の専門家・講師として、結婚式場向けにマーケティングセミナー（勉強会）を開催、東京・大阪など全国18 カ所において計200 回以上のセミナーを実施。