例えば、ホテルの賃料について、新築で開業することを想定し、当該ホテルの適正賃料を求めようとする場合、ホテル事業に基づくGOP(グロスオペレーティングプロフィット)を想定契約期間、仮に10 年としますと10 年間のGOP を想定します。その際、開業当初の稼働率、ADR から収支が安定化するまでの期間に対応するGOP の低下およびその後の安定化GOP 目線の想定もていねいに考慮することとなります。また、法定点検などで年間1日は休業日が必要であれば364日で計算する、またオリンピックイヤーと合致するうるう年では366 日とし、できる限りていねいな収支想定を用意します。
開業時の開業準備費やFFE(家具什器備品など)などが賃借人負担であればFFE 投資額、さらに開業前の準備期間に関連するトレーニング費用など必要費用を計算します。賃貸契約に伴い敷金や保証金などがあれば、契約期間満了に伴い返済される場合には、本来的には、当該資金確保に伴う利回りなども費用として考慮すべきですが、単純化のためここでは考慮外とします。また、FFE の更新に備えた積立金を売り上げの1 ~4%程度、ホテルカテゴリーに応じて想定します。
ここまで準備ができれば、変数は、「契約期間」、FFE に関連する期待利回り(ここではホテル事業と一体となると考え、ホテルの利回りとします)、FFE 以外の開業準備費など初期投資額に関する利回りを設定すれば、賃貸期間を前提に、想定される事業収支から、負担可能賃料を定量的に算出することができます。
まず、契約期間に応じた各年GOP からFFE 積立金をそれぞれ控除し、さらに、FFE などに関する投資に伴う期待利回りを考慮した投資額回収額(年譜償還率)を控除することで、その残額を各年の負担可能賃料として算出できます。仮に固定賃料であれば、契約期間が10 年であれば10 年間、各年の負担可能賃料を、割引率[{1/(1+ 単年度利回り)}^ 年度]を乗じた合計値に平準化する概念である期間および単年度利回りに応じた償還率を乗じることで標準化された固定賃料相当額を算出することができます。参考までに、年賦償還率を採用した例をしますと以下の通りとなります。また、別途本部人件費などが必要であれば、当該費用の応分額も考慮すべきとなります。