以前、弊社で実施した調査において、ホテルをほかの用途に例えた場合に、最も近いカテゴリーにどのようなものが挙げられるのかを調査したことがありました。そのような調査を行なった理由は、宿泊施設という側面にとどまらず、ほかの用途性を連想させる場合には、その別の用途、カテゴリーに応じた運営も重要な視点であると考えたからです。
今回は改めてテーマパーク性という観点からホテルを見つめてみたいと思います。その際、5スタークラスのホテルについて、ホテル以外のカテゴリー表現を使うとすれば、どのようなものに近いと思うかという調査を行ないました(5スターホテルの参考定義:ラグジュアリーホテルと言われるカテゴリーに相当し、幅広いサービスや機能性を提供し、客室を中心に細部に至るまで非常に高い快適性のほか意匠性も見られ、共感性、積極性に基づくパーソナルサービス、高度な顧客視点、顧客配慮が実践されているという宿泊施設の品質を満たす施設(顧客に「自由」でいられる価値を提供しうる施設)。
すると、約 30%近くの人の答えが「テーマパーク」という回答でした。そのほかでは、「演劇」が 10.5%、「劇場」が 11.5%、「社会的ステージ」が 20.5%でした。5スタークラスのホテルでは、ブランドを軸に、明確なコンセプトに基づき表現されたサービスに、一貫したストーリー性、テーマ性を感じることができる場合が多く想定され、そのような場合には、感覚的に「テーマパーク」に近い存在と感じるのかもしれません。
この調査では、「ホテル」を前提としていましたが、それがもし「旅館」であれば、日本的文化のショールームや地域のショーケースとして一層そのような「テーマパーク性」を強く感じる可能性があります。それでは、テーマパークとはどのようなものでしょう。
北村剛史
Takeshi Kitamura
(株)日本ホテルアプレイザル 取締役/(株)サクラクオリティマネジメント 代表取締役/(一社)観光品質認証協会 統括理事不動産鑑定士、MAI(米国不動産鑑定士)、FRICS(英国ロイヤル・チャータード・サベイヤーズ協会フェロー)、CRE(米国不動産カウンセラー)慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である(株)日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事