日本人の素晴らしさを活用することで世界の人々に「日本のホテルに泊まりたい」と思い続けてもらえる未来を目指して
左から ㈱帝国ホテル 取締役 執行役員 帝国ホテル 東京 総支配人 八島 和彦氏 ㈱パレスホテル 専務取締役 パレスホテル東京 総支配人 渡部 勝氏 ㈱ニュー・オータニ 取締役 ホテルニューオータニ(東京)総支配人 髙山 剛和氏 ㈱ホテルオークラ東京 代表取締役専務 総支配人 髙栁 健二氏
2025 年。新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした衛生面、経済面に対するネガティブな影響もようやく落ち着きを見せ始めた一方で、円安、原価の高騰、人手不足といった新たな問題が表面化してきている。これらの問題は観光業界、宿泊業界においても重くのしかかり、これまで続けてきたオペレーションは見直しや改良を迫られ、新しい形の構築に向けた模索が必要になってきた。消費者心理の変化に伴い、これからの未来をどのように創っていけばいいのかを発想する創造性が問われる時代に突入している。価格だけを追求するのではなく、しっかりとした価値を提供していくことこそが、これからの時代の人々に支持されるホテルやレストランの創造につながっていくだろう。新しい時代に向かっていく中で、「月刊ホテレス」の購読者の皆さまから「長年ホテル業界を牽引してきた主力ホテルの総支配人の方々の座談会を通じて、リーダーたちの目に現在のホテル業界がどう映っているのか聞いてみたい」という声が届いた。そこで2025 年の新年号を飾る特別企画として「ホテル業界Big4 新春特別座談会」を企画した。帝国ホテル 東京、オークラ東京、ホテルニューオータニ(東京)、パレスホテル東京の総支配人をお招きし、 ㈱オータパブリケイションズ代表取締役社長の太田進が購読者の皆さまの声を代弁する形で行なった、ホテル業界の未来を見つめるスペシャルな座談会をお届けする。
テーマ1
外資系ホテルの日本進出が続いているマーケットの現状をどう見ているのか?
太田 ホテル業界ほど大きなチャンスが転がっている世界はないと、私は思っています。ホテルで働いていなければ出会えなかった人、出会えなかった場面というものが確実にあって、とても面白いビジネスであるはずです。すぐに辞めてしまった人はその素晴らしさを知らないままですが、10 年間がんばった人は「振り返ってみると、あの経験が今役に立っている」と実感することができるでしょう。
そうしたホテル業界の素晴らしさを次世代の人たちにどう伝えていけばいいのか、そこが最も難しいと思います。いずれにしてもホテル業界に入ってきた人たちには、日本のホテル業界が紡いできた文化を継承していってもらいたいと願っています。さて、近年は外資系ホテルブランドの日本進出が続いていますが、その動きをどのように捉えていますか。
八島 外資系ブランドが続々と日本に進出してくる流れは、日本のホテル業界全体にとって非常にいいことだと思います。もちろん日系ホテルにとって外資系ホテルは競合関係になる場合もございますが、そのやり方を学ぶことで、日本のホテルがこれまで取り組んでこなかった新しい要素を取り入れるきっかけとなりますし、業界全体の進化を促す起爆剤にもなり得ると考えています。
また、外資系ホテルに見習う部分がある一方で、彼らの存在によって日系ホテルのよさ、例えば日本独自のおもてなし文化を再認識させてくれる側面もあると思います。このような状況の中で、日系ホテルは自身の強みをどのように伸ばしていくべきか、方向性を見極めやすくなったとも感じています。そのため、現在の流れをポジティブに捉えています。
渡部 私がホテル業界に入った1980 年代から1990 年代を振り返ってみると、事業者もオペレーターも異業種が参入してくる今の時代とは隔世の感があります。その上で5 大都市だけでなくリゾートにも外資系ホテルが増えてきている今の流れを考えると、日本の観光産業にとっては観光の魅力と成長を後押しする原動力になっていると思います。
日本国内の主要都市に現在進出する外資系ホテルの多くは利益率の高い宿泊主体型であり、FB 部門は宿泊ゲストの朝食提供を軸にレストランとバーを1 店舗というスタイルのホテルが主流となっています。一方私たちは、それぞれが立地するエリアを代表するランドマークホテルとして存在し、宿泊・料飲・宴会・婚礼の四つの部門を国産のグランドホテルとしての矜持を持って運営することをずっと大事にしていますし、そこが新しく進出する外資系ホテルとの大きな差別化ポイントだと思います。今後も我々の規模でグランドホテルを展開するホテルは出てこないと思いますし、そこにコミットしていくことがこれからも我々の個性と強みではないかと考えています。
髙栁 私も同じくポジティブに捉えています。オークラ東京は東京の虎ノ門エリアに立地していますが、数々の外資系ホテルが手の届くほどの至近距離に次々に開業してきました。人々が虎ノ門エリアに足を運び、外資系のラグジュアリーブランドの価値を目にするという重要な消費者行動が今まさに起こり始めています。周りに外資系のラグジュアリーブランドが増えていくことを歓迎するとまでは言いませんが、虎ノ門エリアのホテルマーケットが活性化するという意味では、現状の軒数であれば今のところポジティブな見方をすることができます。
髙山 私は、外資系ホテルに日系ホテルが進化する機会を与えてもらっているという意味でウェルカムの姿勢です。新しいホテルが開業することで、必ず需要が活性化されますので、世界中のあらゆるホテルブランドが日本で展開されることで、世界の日本に対する注目度はさらに上昇すると思います。
その追い風を受けて、お客さまのニーズやホテルに対する価値観が多様化し、私たちのホテルもアップデートしていく機会を得られていると感じています。
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本記事は月刊ホテレス2025年1月号ホテル業界 Big4 新春特別座談会一部紹介記事です。
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