ディナータイムのおまかせコースから。「L’AS」でも人気のスペシャリテ、‟フォアグラのクリスピーサンド“をシグネチャーメニューに、旬の食材を最大限に活かし、クラシックな調理法と現代的な感性の融合するコースを月替わりで提供していく
近年、ホテル内レストランやバーの運営が増えているトランジットグループ(以下、TG)。同社がこの度、「グラングリーン大阪」に開業するホテルの中で唯一、国内企業である㈱阪急阪神ホテルズが運営する「ホテル阪急グランレスパイア大阪」の施設内レストランとして、「MAISON VERTE」を開業した。
同店は昨春、同社のグループ企業となった南青山の人気カジュアルフレンチレストラン「L'AS(ラス)」運営会社(㈱イートライフ)代表取締役社長の兼子大輔氏が、初のオールディダイニングとして手掛けた「L'AS」ブランドの新業態だ。同氏の世界観が、大阪のイノベーションと共に新たな価値創造の未来都市として位置付ける‟うめきた“に、どのような化学変化を及ぼすのか? 大いに期待されるところである。
そこで兼子氏に同店への思い、さらには今後の展望について伺ってみた。
「L’AS」シェフ 兼子大輔氏。大阪「ラ・ベカス」、東京「コートドール」を経て渡仏。2012年、南青山に「L’AS」開業。独創的且つ洗練された料理を作りだすことに定評がある。14年、イギリスのグルメ誌‟FOUR“主催の世界の若手ベストシェフに選出。‟ミシュラガイド東京2025年度版“ではビブグルマンに選出された
「大阪は若い時分に住み、仕事をしていたことのある場所です。その際は自分の店ではなかったので、いつかこの地で、自分の店を持ち、自身が表現したい料理で大阪のお客さまにアプローチしたいという気持ちがずっとありました。そういった思いの実現も含め、今回の出店はとても嬉しかったですし、非常にやりがいのある取り組みでした。中でも、私は料理をレシピ化し、極力数値化して現場に伝えることを強みとしているのですが、その点を大いに活かせたという意味で、ホテル内レストランという挑戦はホテルブランドを背負う責任も含め、非常にやりがいのある取り組みであったといえます。
そういった文脈の中で、朝食においてはビュッフェメニューを充実させた上で差別化を図るべく、メイン料理に他にはない工夫を施した卵メニューを2つ作りました。これらはいわゆる‟卵サンド”と‟エッグベネディクト“と、一見目新しくはない料理をベースにしたメニューなのですが、‟卵サンド”はたまごのピューレのとろとろ感とトーストの食感のアクセントの違いを楽しめ、‟エッグベネディクト”はアボカドとバジルのソースでメゾンヴェルテらしくグリーンを表現し、‟L’ASらしさ”を反映した味わいとテクスチャーを体験していただける一品に仕上げられたと思っています。
次に、アフタヌーンティについては個性を出し過ぎずにお客さまのニーズを想定し、そこに期待される‟雰囲気やシチュエーションを彩れる場をご提供する“という視点から、季節感などを反映する形で作っていきたいと考えています。開業に際しては‟春“を感じていただくということで、泉本農園の紅ほっぺを主役にしたメニュー構成にしました。
最後にディナーとランチについてですが、ディナーは東京の『L’AS』で展開しているメニューを、価格もそのままの形でご提供することにしました。『L’AS』のランチはディナーと同じものをご提供しているのですが、『MAISON VERTE』はホテル内レストランなので、内容のアレンジや価格の調整をしました。『L’AS』と同じ展開にした件については、なぜ? とその理由を問われることもあるのですが、“美味しい”ものを東京で作り続け、ご支持をいただいたことに自負があります。その姿勢は、大阪のお客さまが食に求められるニーズを鑑みた上でも、受け入れていただける予感のようなものがありました。加えて、若い世代のお客さまに来ていただきたい気持ちもあり、挑戦ではありますが決断しました」。
同店ではレストランウエディングも。天井高6.5mと非常に開放的な空間を活用し、チャペル、パッケージに縛られず、新郎新婦の理想を叶えるオーダーメイドのウエディングを兼子氏監修による料理と共に提供していく
ちなみに、トランジットグループに加わったことで変化などはあったのだろうか?
「料理に対するスタンスなど、料理人としての意識については、いい意味で‟これまでのままでいい“といいますか、自分らしくいることを求めてもらえている環境なのがありがたいですね。その上で、今回の出店もそうですが、トランジットだからこそ挑める出店など、大きなチャンスを得られている点があります。また、これまでよりも更に、料理に集中出来る環境ができました。そこで生まれた余裕がクリエイティブに与える影響は大きいですね」。
最後にグラングリーンでの取り組みに対する展望を伺った。
「今回の取り組みは、朝食からアフターディナー、さらにブライダルと、さまざまなシーンにおけるメニュー開発に『L’AS』らしさを反映しつつ、おのおののシチュエーションをいかにお客さまに楽しんでいただき、記憶に残る体験にしていただけるかを大切に取り組んできました。万博も控え、大阪の地に多様性に満ちたお客さまがいらっしゃる機会も控えていますし、そういった思いがひとりでも多くのお客さまに伝わるよう精進していきたいと思っています」。
「MAISON VERTE」が提示する価格帯は、ホテル内レストランとしてはチャレンジングともいえるリーズナブルな価格だ。こうした面も含めて、TG代表取締役社長 CEOである中村貞裕氏が、「ホテル阪急グランレスパイア大阪」への出店に際し、兼子氏とタッグを組んだ背景には、彼に寄せる大きな信頼と期待があると考えられる。
大阪の新たな顔である「グラングリーン大阪」で、兼子氏、そして同店がどんな新風を吹き込んでいくのか? 楽しみだ。
MAISON VERTE
https://maison-verte.jp/
ホテル阪急グランレスパイア大阪
https://www.hankyu-hotel.com/hotel/respire/granosaka







