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第一講

中村 勝宏  「料理人の教育論」 第一講

【週刊ホテルレストラン2017年04月14日号】
2017年04月14日(金)
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夢と希望を持ってくる新人たちに
過保護なくらい、すべてを教える時代

 
——若い人たちのそれぞれの個性に合わせて、きめ細やかに育成していく姿勢も必要でしょうか。
 
 昔の料理人の世界では厳しさが先行してしまっていました。もちろんその厳しさも職人として生きていくためのあるべき姿ではあったのですが。新入生というのは夢と希望を持って入ってくるのだけれども、すぐに挫折してあきらめて転職してしまう傾向を食い止めるためには、私たちの業界も育成に対する意識改革が必要です。いかに理解させていくかが問われています。あまり良い表現ではないかもしれませんが、アメとムチのアメの部分が大切な要素になってきていると思います。
 
 その若者の個性に合わせながら、いかに3年ほど頑張ってもらえるかについて、上司は心してゆかねばなりません。3年たてば少しは先が見えてくるものです。
 
 私たちの時代は先輩から「技術は盗め」と教えられましたが、今は通用しません。過保護なくらいに、すべて教えます。さらに今はインターネットで調べれば大概の情報は手に入りますから、本人がその気になれば学べるチャンスはいくらでもあるという時代です。あとは仕事の面白さにどのように至っていくかの問題だと思います。そのプロセスを私たちがいかにしてカバーしてあげられるかを考えなければならない。そこまで過保護に対応してもなお、ささいなことで辞めていく人はいるわけです。
 
——それぞれの新人には個性があります、そこに対していかにバランスをとって育成していくのか、そこが最も重要で大切なことですね。
 
本を読む、良き友を作る、食べ歩く
三つの努力によって食の道が開ける
 
「教育論」と聞かれても、結局のところ、自分の経験をもとにいかに料理やサービスの道が素晴らしいのかを教えていくしかないと思います。ゆくゆくは教えた新人たちが成長してそのことに気づいてくれることを信じるしかありません。まず、自分の仕事を好きになるための努力が必要。自分でこの道に入ろうと決めたからには、好きになるための努力をしてもらいたいのです。いかに大きな夢と希望を持っていても、必ずや現実にぶちあたります。そのときに仕事を好きになろうと身構えていれば簡単になえてしまうことはきっとないはずです。具体的になすべきことは三つあると考えています。まずは本を読むこと。仕事に関係する本を自前で定期的に買い、きれいだな、うまそうだなと思った料理や気に入った先輩の言葉などがあったら、そのページを切り取りファイルする。積み重ねていくとかけがえのない自分のためだけの立派な教本になります。
 
 次にいい友だちを作ること。変な仲間と一緒になってしまうと変な方向に行ってしまいますが、いい仲間と一緒になればお互いに切磋琢磨するようになります。友を選ぶという、とても大事なことだと思います。
 
 そして自前でできる範囲でしっかりとした料理を食べに行くこと。ランチであれば2000 円、3000 円で食べられます。ただ食べるのではなく、考えて食べる、見て食べる、味わって食べる。その習慣を身につけねばなりません。これら三つの努力を続けていくと、自分が選んだ食という道が好きになってくるはずです。
 
——若者は「褒められて伸びる」ということもあるのでしょうか。
 
 当然あるでしょうね。褒めることによってやる気を引き出すような。でも私自身は「千の褒め言葉よりも、一つの貶けなし言葉」だと思ってやってきました。フランスのレストランで働いていた時代には、この考え方をどれだけ自分自身が受け入れることができるかにポイントを置いていました。褒められるのは確かに心地いいのですが、それに甘んじてしまえば進歩はありません。貶された言葉をこそ、心にとめておくべきなのです。
 
 私は今でもこの考え方を軸に置いています。私が若いころにフランスで習得した、またはグランシェフとして作っていた料理は、今のフランス料理とはまったく異なります。ですから私はどんどん進化してきている今の料理を教わろうと若いシェフの料理講習会にも出掛けています。いわば現代における進化した料理技術と感性に対して遅れを取るまいと必死になってついていこうとしています。ですから「教育論」を聞かれても困るというのはそういうことです。このことはずっと続くと思いますが、私自身が教わる立場にもあるわけですね。私が教えられるのは、これまで培ってきた自分の経験です。そして強いていえば、いつの世でも大切な古典的な料理を通じた、基本的な料理技術と本質論です。
 

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