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第一講

中村 勝宏  「料理人の教育論」 第一講

【月刊HOTERES 2017年04月号】
2017年04月14日(金)
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調理もサービスも経験が重要
食の仕事は職人の世界である

——新人たちを教育する立場の中間層においても、難しさは増していますか。
 
 30 代、40 代の中間層において優秀な人材は常に引く手あまたで、雇用してもらえる場所がたくさんあるわけです。どの現場も優秀な中間層の人材がほしいのは当たり前で、すべての場所にそうした人材が行き渡っていないという問題があると感じています。人材育成の継続において断絶が生じたことにより、優秀な中間層をうまく育てられなかったツケがまわってきているのかもしれません。そして幹部候補生としての中間層の数が足りないというのは、食の業界に限ったことではない気がします。
 
 調理もサービスも、食の仕事というのはある意味で職人の世界です。一つの職に関する技術的なものごとをまっとうしていくことを志す必要があるのです。職人の技術はそんなに簡単に覚えられるものではありません。精神的な気構えも含めて3年、5年と続けていくうちにようやく基本が身についてくるものです。その前に挫折してしまったら、職人にはなれません。
 
 加えて、さまざまな経験が求められます。技術を吸収する中でさまざまな経験が伴ってくるからこそ、その積み重ねによって揺るぎない基本が自分の中にできてくるのです。その基本の上に技術というものは身についてくるわけです。
 
——人材育成の難しさは、特にどういったところにあると思いますか。
 
 どの業界であっても、人を育てることの難しさに直面している時代を迎えていると思います。その上で何が大切かと言えば、教える側の意識があると思います。50 歳、60 歳になれば、自分が働いてきた業界に対して、今度は後輩を育てる義務と責任が出てきます。その義務と責任が放棄されているとまでは言いませんが、昔に比べるとなかなかそれが全うされていない気がします。
 
 私たちは業界人として、ある程度の経験を経た者は後輩育成に対する義務と責任をはっきりと自覚するべきだと思うのです。その意味では、若い人たちに責任を転嫁するのではなく、経験を積んだ私たちベテランが自覚を持って、人材育成に対する理解度を深める必要があります。
 
 さらに一歩踏み込んで言わせてもらうと、企業というものは業績が好調のときは社員を海外や研修会など、あちこちに行かせて人材育成に積極的に取り組みます。ところが少しでも景気が悪くなるとぱたっと止めてしまいます。もちろんこんな時こそと、頑張っているところもありますが、一般的にはその傾向が強く、景気のいい時代は、はじめから何人かは辞めるのを見越して多めに新人を採用するといったこともありました。今、インバウンドが増加していることもあって、業界全体に少し明るい兆しが見えてきています。宿泊は目立って好調ですし、一般企業の宴会も増えてきています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、しばらくは好調が続くかもしれません。
 
 人材育成に注力するにはいいタイミングだとは思うのですが、一方でグローバルな視点から見ると明日が分からない状況であることも確かで、不安要素がたくさんあります。それでも日本の私たちの業界は緩やかな成長が続いているわけですから、人材育成についてはたと省みる時期なのではないでしょうか。

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