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中山清美 「Hotel Style Indulgence ―― 耽溺のホテルスタイル」 “群れない贅沢”のために 

第5回  “ラグジュアリーはモノではなく経験によって与えられる” 伝説のアマンを創り上げたホテリエ、アンソニー・ラーク 「トリサラ」のGMとして再登板――さらなるラグジュアリーの高みに挑む

2016年05月12日(木)
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コングロマリットになろうなんて思わない
変化と進化を拒まずに
さらなるラグジュアリーの真価を求め続ける
 
 2004年のオープン以来、GMとして「トリサラ」の舵を取ってきたアンソニーは、2013年、GMの座をアントワーヌ・メロンに譲り、親会社の副社長の仕事に専念してきました。
2015年3月、アントワーヌが英国の「Soho House」に移るのを機に、アンソニーは親会社副社長のまま「トリサラ」のGM兼マネジングディレクターとして現場に戻ることにしました。進化する富裕層ゲストたちに向けて、彼の信じる新たなラグジュアリーなサービスを創造するのが目的でした。

 
「私たちのブランドの基本はロケーション、クオリティ、イノベーションなんです。同族経営ですし、コングロマリットになろうなんて考えはまったくありません」
 
 アンソニーとタイ人オーナーであるパッタマセヴィ・ファミリーは、このブランドがゆっくりと発展していくのを心地よく思っています。
「トリサラ」は正式には、新たなホールディングカンパニーであるモンタラホスピタリティグループの所有であり、同社が「トリサラ」の拡張や、「ザ・ボートハウス」の名で知られる他のホテルブランドを展開しています。
 アンソニーは同社の副社長ですが、その第一の役割は、「トリサラ」の発展に目を配ることです。無論、彼は1泊千ドルからとなる「トリサラ」を“マックリゾート”にするつもりなど毛頭ありません。
 

「巨大ホテルチェーンはラグジュアリーリゾートの何たるかを分かっていません。企業的な考えでは処理できない、もっと人としての住環境を重視したものなのです。マネジャーはまずホストでなくてはいけません。この10年、リッチなゲストたちの莫大なリストを蓄積してきましたが、そのうち25%はリピーターのゲストです」
 
 親会社の副社長という立場から、「トリサラ」のコンセプトを別の場所でも展開していくプランも当然持っています。
 
「バンコクから4時間以内で行ける場所を探しています。それがトリサラのコンセプトを生かせる範囲だと思っています。例えば、オーストラリアではやらない。なぜならこうしたサービスの文化がそこにはないからです。このトリサラのDNAを植え付けるなら、インドネシアや北ベトナム、マレーシア、ビルマなどの1万3千の島のひとつになるでしょうか」

 
 この25年でアンソニーが学んだことの中でも重要なことは、変化は避けられないということでしょう。プライベートヴィラ市場にさらなる数の企業が参入してくるようになれば、それらと闘うか、さもなくば敗れ去るのみ。
 アンソニーはそれゆえ理解あるモンタラの傘下で次世代のゲストたちのニーズに応えるためにも「トリサラ」を改革していかなくてはならないのです。それは正式に発表された今後3年間におけるリノベーション計画で確実に実行されていくことでしょう。そのため、ラグジュアリーリゾートを構成するまったく新たなアイデアがあるとアンソニーは言います。
 
「私たちは世界でも稀に見る発展家の旅行者たちとお付き合いしています。これまでは裕福でなければ国内で休日を楽しむしかなかったのですが、今や効率的な旅行計画とテクノロジーのおかげで、どこでも簡単に行ける時代になりました。もっと進化したければ、より密な結びつきを求めるこうした新たなスマートで裕福な旅マニアたちに、彼らがバッグを開ける前によりよいサービスを提供することです」

 
 プール、バー、レストラン、スパ――鬱蒼とした深い緑に覆われた広大な敷地のどこにいても、“放っておかれる贅沢さ”を心から満喫することができます。それはアンソニーの長い経験が醸成させた、彼の思う“ラグジュアリー”のサンクチュアリなのです。著名なセレブたちがこぞって訪れるのも、そんな思いを共有できるからでしょう。
“群れない贅沢”を旅の極意とする筆者も、熟練のハイエンドトラベラーに最もお薦めしたいプロパティなのです。そして、いまのアンソニーの頭には、さらなる“変化”と“進化”への新たなヴィジョンが溢れています。
 

 
「これからの新しいタイプの裕福な旅行者たちは、お迎えのロールスもいらないのかもしれません。実際、そうしたものは逆に彼らをがっかりさせかねないですしね。彼らは不必要な上辺だけのサービスはほしくないんです。ただただ彼らは放っておいてほしいだけ」
 

 
 そんなアンソニーの新たな挑戦のひとつが、すでに実現しています。昨年11月からサービスを開始した、遊び心満載の世界初のデジタル・ラウンジ『ディレクターズ・デン』です。
そのイノベーションあふれるコンセプトは進化するゲストたちを完璧に魅了しています。ゲストは「トリサラ」の専門家チームによるフォト、およびビデオの製作・編集技術で、休暇の様子を記録した高品質のビデオを作成し、友達や家族と帰宅後もう一度「トリサラ」の魅力を満喫できるのです。
自分のバケーションを記録に残したいけれど、時間、専門知識、資料が足りずプロのような編集ができないトラベラーのために作られた「ディレクターズ・デン」は、ユニークな専門サービスを提供し、プロの魅力的な写真やビデオのコンテンツに加え、バーチャル・リアリティーなどの新しいデジタル技術を駆使して、バケーションのお土産話を彩ってくれます。
そんなゲストの思い出にあふれた高品質のデジタルメモリーは、わずか24時間で出来上がります。(「ディレクターズ・デン」が初めて製作したビデオはこちらから。ちょっと覗いてみてください!――http://bit.ly/D-Den

 
“群れない贅沢”を最もよく理解するホテリエのひとりであるアンソニーの変革と進化は、これからも深く静かに、真のラグジュアリーを求めるゲストたちを包み込んでくれるはずです。
 
Photos by Shin Igarashi
 
TRISARA
60/1 Moo 6, Srisoonthorn Road, Cherngtalay,
Thalang, Phuket 83110 Thailand
Tel. +66 76 310100
http://trisara.com/ja/

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