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ザ・ペニンシュラホテルズ - GMロードショー2023インタビュー

ラグジュアリーホテルとしてコロナの凄まじさを耐え忍びながら、2023年に欧州のポートフォリオに2つのホテルを開業させるペニンシュラの底力:ザ・ペニンシュラホテルズ - GMロードショー2023インタビュー

2023年10月16日(月)
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コロナ中に固定費を見直し、リカバリーと共に増益を達成!凄まじいコロナ中の苦労とサバイバルの記憶を風化させないように記録にし、次世代に伝えるために一冊の本にする
ー ザ・ペニンシュラマニラ 総支配人 大場 正久
(General Manager, The Peninsula Manila)

 

ザ・ペニンシュラマニラ 総支配人 大場 正久氏
ザ・ペニンシュラマニラ 総支配人 大場 正久氏

 

2019年にザ・ペニンシュラマニラの総支配人に就任して以来、どのような壁にぶつかりましたか?

大場氏:まず私が香港からマニラに移ったのが2019年の終わりの10月です。10月の売上が良くて、その次の年に向けてすごくポジティブだったのです。そうしましたら、2020年1月にタール火山の噴火が起きてしまい、空港が一回止まってしまったことで、ビジネス的に影響を受け、次の月からコロナが始まってしまいました。そういう中で2020年は8ヶ月間ホテルを閉めなければいけなかったのです。
 
ザ・ペニンシュラマニラは今月が47周年のアニバーサリーなのですが、その時、歴史上初めてホテルを閉めないといけないという状態でした。
 
その間、8ヶ月間収入がないので、従業員たちをどのように守るかが私のプライオリティでした。ホテルが閉まっているので、私も含めセキュリティ、エンジニア、ハウスキーピングなどの数十人で仕事をしつつ、どうにか皆で生き延びていくという状況でした。
 
というのは、他の国のように国からのサポートが一切なかったからです。働かない人は「ノーワークノーペイ」という国の原則でお金をもらえない、手当も無いのです。
 
そのような状況で、様々なものを用意し、様々な行動を起こし、従業員をどうにか守っていくといったことは初めてでしたので、皆にとって大変でした。
 
そして2021年、引き続きコロナの波があり、ホテルを4ヶ月間閉めざるをえなかったのです。そして2022年、去年の1月、2月、マニラの全体の50%がコロナになったと言われておりました。今でも忘れられないのですが、従業員がコロナ陽性になると、私の携帯にブザーが鳴るようになっていたのです。それが2022年の1月、2月は鳴り止まない状態で、ポンポンポンポンと鳴っておりました。
 
街全体が50%陽性ということはホテルは街の状況に反映される部分もあるので50%以上の従業員が2週間ぐらいの間に一気に陽性になっていった中で、再度ホテルを2ヶ月間閉めました。その後、国からの提供がないので、従業員のワクチン、その従業員の家族のワクチンをペニンシュラが購入し、みんなに渡したという状態でした。
 
しかし紆余曲折を経て、国全体のリカバリーがすごく早かったのです。というのは、国全体が「ノーワークノーペイ」で仕事がない人たちのパーセンテージがあまりにも高すぎて、政府がもう国を開けなければいけない状態だったのです。そうしないと自国の人たちが働く場所がないわけですから。私どものスタッフも英語の先生になってオンラインで中国や日本の生徒さんに英語を教えたり、配達の仕事をしたり、フロントだったのに急にシェフになったり。みんな大変な思いをしながらなんとか生活を維持したという状況でした。
 
コロナ禍に今まで触ることができなかった固定費を見直すことができたのです。47年の歴史の中でなかなか調整することができなかった部分を抑えることができたことでコスト削減につながったので、リカバリーと同時に利益も上がっていきました。そういうこともあり、リカバリー率は非常に高く、ペニンシュラの中でも一番リカバリー率は高かったと思います。

ザ・ペニンシュラマニラ「ザ・ロビー」
ザ・ペニンシュラマニラ「ザ・ロビー」

 

飲食部門出身者として、あなたがホテルに導入した主な取り組みやアイデアがあれば教えてください。

大場氏:まず、私の中では一番素晴らしいクラブラウンジと自負するクラブラウンジです。ここはコロナ前に改装し、スイートのお客様にご利用いただいています。香港と同じように大きなロビーがあり、その上にクラブラウンジがあり、開放的で明るい雰囲気が特徴です。
 
そこには国を代表するアーティストのアート作品が多く飾ってあり、ロビーでの生演奏も上からご覧いただける特別な空間になっています。
 
同ラウンジではもちろんフードのクオリティも上げなければいけませんので、ライブキッチンを作りました。ブッフェのようなものではなく、シェフが目の前で温かいお食事はもちろん、冷製料理なども作ります。バーテンダーもおり、シェフやバーテンダーがその場で最高のメニューをご提供する、というサービスを導入しました。世界各国、様々なお客様がいらっしゃる中で非常にご好評いただいています。
 
やはりクラブラウンジの温かいお食事が冷たくなったということにはしたくなかったのです。シェフがお客様の目の前で作って、その温かい料理をその場で食べていただくということが、フード部分で一番したかったことです。

ザ・ペニンシュラマニラ
ザ・ペニンシュラマニラ

 

国際的なラグジュアリーホテルブランドの日本人初の総支配人になった感想は?

大場氏:私は以前の上司に、「日本人だからこのポジションをあげたのではない。この仕事ができるであろうからお前にあげるのだ」とよく言われていましたし、自分でもそう思います。しかし、気質的に、私は日本人は最高のホテリエになれると思っています。というのは、日本の文化に根づいている、おもてなしの心や規律という要素は、ホテルにとって非常に大事な部分だからです。ただ現状においては、日本の全体的な教育のシステム、語学のシステム、人を育てるシステムが他国とは違うので、日本のホテルマンはインターナショナルチェーンに入って活躍するというのは難しくなってしまっているのではないのでしょうか。
 
例えば言葉の壁がない、インターナショナルな考え方ができる、様々な人種がいる中で日本人がリーダーシップを取る、そういうことができる人材がいるならば、インターナショナルチェーンで活躍の場を広げられる可能性は大いにありますし、最高のホテルマンになると思います。
 
というのは、「これが美しい」と日本人が思うことが、外国では「それが何故美しいんだ」というところから始まる時もあるので、特にラグジェリーの世界においては日本人の感性や文化の中で根づいているものは非常に大事かなと思っています。  

 

ザ・ペニンシュラマニラのチームで取り組んでいる本について教えてください。

大場氏:コロナ禍の意思決定はすごく難しいものでした。従業員を守らなければいけない、ファイナンスをどうにかしなければいけない、というあまりにも多くの責任重大な決定事項が毎日あったため、コロナ禍に行った様々な行動やアイデアが空白になってしまっていたのです。途中でそれに気付き、これは良くないと思い、コロナ禍でどのような経験をしたのか、家族がどのような経験をしたのか、ホテルはどのようにリカバリーしたのかを本にして次の世代に渡そうと思ったのです。
 
10年後、20年後にまたパンデミックのようなものが起こる可能性もあるので、次の世代にその本を読んでもらい、先代はこういうことで乗り越えていったというようなことや、どのような想いをもって皆で乗り越えたといったこと感じ取ってもらい、力に変えてもらえたらいいなと思っています。(フィリピンは)コロナ禍のサバイブするレベルが他の国とは違い、本当にサバイバル(生死を分ける)でした。ワクチンを探すところから、その前にお金を作るところから、それをただ厳しくて辛かったねで終わらせるのではなく、その魂と経験を次の世代に渡していく、ということをしたかったのです。
 
濱本: 大場さんのアイデアですか?
 
大場氏:はい、そうです。
「あれ?昨日、何した?1ヵ月前は?」というのがあまりにも多すぎたのでこれは良くないと途中で思い、広報部や関係部署の従業員を呼んで本を作ろうと呼びかけました。

ザ・ペニンシュラマニラ 総支配人 大場 正久(オオバ マサヒサ)
(General Manager, The Peninsula Manila)


スイスのローザンヌ・ホテル・スクール卒業後、1999年にパークハイアット東京に入社。その後、オマーンのグランドハイアットマスカットやフォーシーズンズホテル丸の内にて料飲部シニアアシスタントマネージャー、マンダリンオリエンタル マニラの料飲部アシスタントディレクターなどを歴任。2007年に料飲部マネージャーとしてザ・ペニンシュラ東京に入社、2008年に料飲ディレクターに着任。2010 年、ザ・ペニンシュラ上海で副総支配人 – 料飲担当としてホテルのレストランや宴会の料飲を統括。2011年、ザ・ペニンシュラ東京の副総支配人着任にあたり日本に帰国。2014年、旗艦ホテルであるザ・ペニンシュラ香港の副総支配人として香港へ。2019年、ザ・ペニンシュラマニラの総支配人に就任。ザ・ペニンシュラホテルズで15年以上の経験を有する、初めての日本人総支配人として、マニラのチームをまとめ上げ、世界各国からのお客様をお迎えしている。
 

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