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【コラム】旅のお酒、季節のお酒:熟成と気候

2023年06月23日(金)
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気温の上昇と共に出やすくなるカクテルやお酒があると思います。ボジョレーやひやおろしといった季節感があるもの、モヒートのような爽快感のあるものというように季節や気候の影響がありそうなお酒が浮かばないでしょうか?
 
今回は、「熟成と気候」について少しふれてみたいと思います。5月末にシンガポールに行った際、Jigger & Ponyの江口さんとお会いすることができ、グループで経営されている「Sugarhall」というラムにフォーカスしたお店にお伺いしました。トロピカルエイジングの話から、カロニの話になり、バイヤーの目利きの話をしたりしました。
 

バイヤーの目利きについて色々と語り合うきっかけとなった南アフリカ「MHOBA RUM」
バイヤーの目利きについて色々と語り合うきっかけとなった南アフリカ「MHOBA RUM」

その時に、南アフリカ「MHOBA RUM」のホワイトラムと、Velier「FAQ Plastic Mhoba 2017」の比較試飲の機会を頂きました。Velierの方は、南アフリカにて赤ワイン樽で4年熟成を経たもののようで、ホワイトラムに感じられるトリュフのような香りと熟成による効果や目利きについて江口さんと色々とお話しとても刺激になりました。

何度かコラムでも書いていますが、お酒の背後には流通があり、その先には生産者だけでなくバイヤーの存在があります。Luca Gargano氏について詳しくは何も知りませんが、スピリッツの目利き以外に、一つドルチェ(お菓子)の存在を思い浮かべました。日本人があんこに馴染みがあるように、お菓子を含めた食文化の影響もあるのではないかと。(トリュフの香りから、甘い香りという安易な連想ですが…)
 
そんな話に刺激を受けて、帰国後にラムをもう一度勉強し直そうと思い、いくつかラムを購入しました。BBRのクラシックシリーズなど、オーセンティックなスタイルで販売してくれているものを手にすると、改めてバイヤーや商社としての力量が素晴らしいと感じます。WSET含め、スタイルとは何かを学ぶのにこれ以上ないほどのお手本が多く手掛けられています。他にも、VelierとオランダのE&A Scheerのジョイントボトリングも購入しました。中々、同一蒸留所の同じ熟成年数でエイジング差を見えれる商品は少ないので勉強になります。

WSET受験時代からずっとお世話になっているBB&R
WSET受験時代からずっとお世話になっているBB&R
熟成の差が味わえる貴重なセット
熟成の差が味わえる貴重なセット

そうして、スピリッツ学習への熱が再燃しているところに、韓国産の「Ki One」を試す機会がありました。韓国市場については、Vinexpo Asiaでも韓国の教授によるセミナーがあったことから、興味本位で飲んでみました。今の韓国市場にマッチした味わいだと思いましたし、何より小麦主体のバーボンのような柔らかさがあり驚きと疑いを覚えました。
疑いというのは、ジャパニーズモルト同様、新興産地はレギュレーションが整えられていないことがあるので、ひょっとすると独自の規定とかあるのでは?と勘ぐってしまったのです。焼酎の記事でご紹介したように、レギュレーションは販売の方向を左右する重要なシステムでもあります。

【試飲コメント】
ミディアムアンバー。クリーン。樽由来の香りが豊かで、バニラ、オーク、焼いたバナナ、キャラメル、バーボンに似た香りがある。パイナップルやストーンフルーツのようなフルーティーな香り、ほんのりとシリアル感、淡くだがスペイサイドに似たようなニュアンスもある。やや酸味があり、柔らかなニュアンスがありながらも若々しい印象を受ける。
味わいはドライで、ミディアム+ボディ。アルコール感は強く若い印象で少しピリピリとし、わずかにタンニンを感じる。アルコールの印象とはうって変わって、柔らかな口当たりでまろやかさと濃厚さがある。
木や箪笥、白檀、カンナで削った大鋸屑のような樽由来の印象に、バーボンやテネシーウィスキーを想わせる甘く香ばしい香りが印象的。アルコールの若さよりも口当たりのまろやかさが印象深い。

 

そこで、直ぐに輸入元に資料のお送りをお願いしたり、記事の検索などで情報を集めました。寒暖差60度(最高40度、最低-20度)という特殊な環境での熟成、移し替えの写真を見るとチャコールのようなものが見えたりしており、チャーによってできた樽内のチャコールでリンカーンカウンティ・プロセスのような雰囲気もあるのかなと、自分の中では少し整理がつき、今後の展開が楽しみな蒸留所の一つになりました。出来れば、暑い季節と寒い季節のどちらにも行ってみたい蒸留所です。
 
今、日本酒でも古酒市場が活性化しています。先日書いた記事でも、低い温度で長期熟成をさせた日本酒は様相も味わいも全く異なります。お酒は、気温だけでなく、どこで熟成させるかも重要で大きな気候というような要素から、川や海の近くなど近場の環境にも影響されます。
 
レインウォーターのように、流通過程がそのままスタイルになったようなものもあります。海底熟成なんてのも一時期目にしたりしました。熟成というと、酸化(酸素のコントロール)が主に話されますが、分子間の反応には、衝突と活性化エネルギーという2つのポイントがあります(金属などの触媒やpHとか他にも色々考えることはありますが)。熱や振動、遮光が言及される背景にはそうしたことがあります。
 

沖縄「El Lequio」で頂いた「キジムナーの香水」
沖縄「El Lequio」で頂いた「キジムナーの香水」

現代アートがキャンバスから飛び出してその表現の枠を広げたように、今のバーシーンでもプレミックス含め多彩です。クラシックなカクテルやツイストも楽しみですが、作家性のあるカクテルも飲み手の創造を刺激してくれます。

「The Terroir of Whiskey」など刺激的な本も近年多い。是非、ソムリエさんにも読んで頂きたい
「The Terroir of Whiskey」など刺激的な本も近年多い。是非、ソムリエさんにも読んで頂きたい

小さなボトラーズやネゴシアンも近年目にする様になりました。新しい表現が増えるたびに、そうした表現を楽しむための基礎力も重要になると思います。ここ数年、スピリッツ知識の更新が浅かったので、ブラッシュアップしていきたいと思います。
 

担当:小川

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