消費体験という時間の流れの中で、それを体験の「文脈」ととらえれば、文脈に沿って事前の期待感が形成されるのです。また前の体験が良いほどに、その効果が大きい傾向があります。レストランでは「おいしい」という味覚は個人差がありますので、「素材の鮮度の良さ」という評価軸を想定しどのようなサービス要素がその評価に影響を与えるかを調査したことがありました。「素材の鮮度が良い」と強く連想するサービス要素の順で整理しますと、以下の通りとなります。
上記サービス要素が、過半数の回答者が「食材が新鮮」と連想するものでした。連想させる効果が大きい順で、空間の清潔感や快適性、ウエア類の清潔感、管理状況、調理後適温での提供、料理説明力という結果でしたが、これを上記のように時間軸で整理してみますと、①「空間の清潔感と快適性」→②「ウエア類の清潔感」→③「料理説明力」→④(実際に食し)「適温」という順序になります。つまり、①から③が備われば、実際のプレート提供時に対して、非常に高い期待感が生じているはずです。そこで、もし「適温ではない」料理が提供された場合、高い事前の期待感が裏切られる結果、「非常に残念」等、強い負の感情として顧客側が受け取る可能性が高いものと考えられます。さらにその負の感情は、特にレストランでの体験時間が長いこともあり、全体の印象を大きく左右する可能性すらあります。そのような意味において、「適温」プレート提供は、非常に重要なサービス要素としてとらえておくべきと考えられます。