地上約60メートルの場所に作られた屋外ドックラン。木々に囲まれているため、ドックフレンドリールーム宿泊のお客さま限定でのプライベートが守られつつも、都会の風景を眼下に、開放的な雰囲気の中で愛犬と過ごすことができる
昨今、生き方や家族の在り方の多様化から、宿泊施設におけるペットフレンドリールームのニーズが高まっている。統計的にニーズ比率の高いペットは圧倒的に犬であり、それに猫やうさぎが続く感じだ。そこで今回は愛犬と共に旅行をしたいお客さまのニーズをさらに掘り下げたいと思うのだが、それら市場において課題となっているのが、圧倒的にドックフレンドリーな客室が少ないこと、さらには多頭飼い、大型犬を有するお客さまが泊まれる施設が都心部も含め少ないことだ。
ちなみに、大型犬においてはペットフレンドリーを導入する各施設が利用規約に明記するように、他のお客さまや従業員への傷害や物的損害といったリスクを鑑みて、受け入れが難しい点は受け入れざるを得ない面がある。また犬種によっては、その性格から施設が受け入れに慎重にならざるを得ないのも施設運営がホスピタリティの表現の場であると同時にビジネスの場である点を考えれば、当然の帰結だ。
ただ、これらのさまざまな因子を検証した上でチャレンジングな取り組みをしている「OMO5東京五反田(おも)by 星野リゾート(以下、『OMO5東京五反田』)」のペットフレンドリーは、都心部における宿泊施設が参考にすべき点が大いにあると考察する。
ホテル外観。東京タワーからスカイツリーまで、東京の夜景を解放的な空間を客室やパブリックスペースの空中庭園、そしてドックランからも望むことができる
まずはエリアのすみ分けだ。同施設では、ドックフレンドリーエリアと一般のお客さまの滞在エリアが完全にすみ分けされており、愛犬と一緒に訪問したお客さまは“愛犬家のみのエリア”に滞在することができる。飼い主がマインドを共有できるお客さまと共に滞在できると同時に、犬たちにとっても理解者のみの空間で自由に過ごすことが保証されている点は、犬たちのストレス軽減にも効果的だ。加えて、ペット同伴を望まないお客さまのストレスの回避もし得る環境づくりが意識されているともいえ、全方位的にお客さまのストレスが少なくなるよう工夫されている点も嬉しい。さらに同施設では、屋外エリアのパブリックスペース「空中庭園」もリード付きであれば入ることができ、愛犬と一緒に“天空空間”を楽しむことができるようになっている。加えてリード付きであれば、“OMOベース”内での同伴や“OMOカフェ&バル”入り口手前に設置されているドックフレンドリー席(※リードフックが用意されている)で食事をすることが可能となっており、愛犬家のお客さまもペット同伴ではないお客さまも共に滞在し得る工夫を施した。
もう一点、注目したいのは客室だ。同施設では“OMO”らしい滞在をペット同伴だからという理由でお客さまに諦めていただきたくないという観点から、一部の素材をペット対応可能なものに変更した上で、基本的にペットフレンドリールームの客室デザインと一般の客室は同じデザインを導入している。それゆえ、同施設に滞在する魅力のひとつである大窓からの都心部夜景ビューも、窓辺に設えられた広縁に愛犬と共に座りながら楽しむことができる。
さらにペットと共に暮らすお客さまの遠方からの都心観光やビジネスでの滞在(※日中留守にする際はゲージに入れる、ペットシッターの手配などは飼い主の責任における管理が必要)に強い味方であることはもちろんのこと、都心にある施設という点から気軽に訪れることもでき、簡単に“ちょっとした非日常を過ごせる”点も将来的なニーズの増加を先取りしているように思う。
ちなみに「月刊HOTERES9月号」の“HOTERES Entertainment!”では、観光地としての資源に乏しい都心エリアに観光魅力を創生した「OMO5東京五反田」の取り組みについて紹介している。こちらも併せて、ご一読ください。
「OMO5東京五反田(おも)by 星野リゾート」
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5tokyogotanda/
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp