❏スタッフの人選や採用の考え方を教えてください。
「ワンちゃんが好き」かを、前提に採用しています。ペットの専門学校に求人を出し、新卒者を2 人採用しました。「鴨川館」で働いていたベテランのマネジャー1 人と新卒2 人の3 人体制です。ワンちゃんを飼ったことが私はないので、知識を持っている方が欲しいと考えたからです。また、お客さまのニーズとして、スタッフがワンちゃんを好きかどうかが満足度の重要な部分をしめてくると考えました。
この2 人は、「鴨川館」で採用した新卒のスタッフたちと一緒に研修を受けています。「鴨川館」は65 室あって、「ご・遊庭」は5 室しかないために、「鴨川館」で働いている方が、どうしても多様な経験をしますので成長もします。そのため、週に一度行なう朝礼に、「ご・遊庭」の新人2 人も参加してもらい、日々の出来事や、どんな問題が起こっているのかを情報共有することで、2 人のレベルを上げていこうと考えています。
私が心掛けていることは、スタッフを見守りつつ、「何か困っていることある? 大丈夫?」と、よく声を掛けるようにしていることです。スタッフが辞めたくなるときというのは、お客さまから何か言われたときではなく、ご要望に応えてあげたいのにどうしたらよいかわからない、相談にのってくれる人が周りにいないと感じるときだと思います。ですので、「何かあればいつでも聞くよ」という私の気持ちをつねに伝えるようにしています。
また、接客のスキルアップの研修として、JTB が行なっている「おもてなし検定」を活用しています。スタッフが勤続1 年を過ぎると初級を受けていただき、その後中級を受けていただいています。これはセクション問わず、どこで働いていてもみんな同じように実施しています。
❏お客さまの満足度を上げるためには、どのようなことをされていますか。
ワンちゃんと泊まれるホテルを視察していたとき、到着の際、人間は通常のエントランスから入り、チェックイン手続きをしますが、ワンちゃんはいったんスタッフがお預かりして、ワンちゃんをきれいにしてから裏の専用入り口からお部屋に入れている高級ホテルがありました。このホテルに私は、ワンちゃんを飼っている友達の家族と一緒に行ったのですが、その友達が「せっかく一緒に旅行に来たのにバラバラになってしまうので悲しい」と言っていたんです。ですので、「ご・遊庭」では、そうならないようにしました。ずっと一緒に行動できるようになっています。レストランや温泉も、中動線でつながっている「鴨川館」にありますが、「ご・遊庭」では、ずっと一緒にいたいというお客さまのニーズに応えるために、ルームサービスを充実させ、お部屋に天然温泉を引き、お風呂もエアブローバスにしました。
オペレーション上の改善活動としては、アンケートを取っています。内容によってはアクションに移さないものもありますが、同じご意見やご要望を何度も違うお客さまから出てくるお客さまの声は、しっかり拾うようにしています。例えば、「ドッグランがあったらいい」という声が多く上がっています。ビーチまで歩いて3 分なので、当初は必要ないだろうと思っていましたが、いまは、設置を計画しています。
❏開業して気付いたことや、オペレーション上で困っていることはありますか。
「ご・遊庭」のリネン類の洗濯を、すべて鴨川館、「ラ・松廬」と分けて行なっています。ワンちゃんが苦手なお客さまのシーツにワンちゃんの毛が混入していたりしたら大変です。手間がかかるために通常の3 倍の費用がかかっています。
予約時に私どもは、犬種や年齢、体重を聞いています。チェックインの際には、ノミのチェックをしています。ワンちゃんは、一室小型犬は3 匹まで、中型犬は2 匹までとしています。猫は、お断りしています。猫ちゃんはつめを磨いだりしますので、部屋を傷める可能性があるからです。通常の旅館やホテルにはない、特別なオペレーションをしていますが、そういったノウハウこそ差別化になるのだと思って徐々に積み上げていっている段階です。
第二回
経営者インタビュー オンリーワンの宿づくり
「南房総 鴨川温泉 Dog サバトリーのある宿 ご・遊庭」
【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月20日(金)