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第5回 オンリーワンの宿づくり

第五回「藤井荘」 繁盛旅館への変革は、「足し算」と「引き算」で

【月刊HOTERES 2016年01月号】
2016年01月22日(金)
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藤井荘の夕景の外観

倒産や廃業で軒数が減り続ける旅館業界の中にも、きらりと輝く個性を持ち、まっとうな経営を行なっている宿がある。本連載は、旅館総合研究所の重松所長が、自身の目で優れた宿を厳選し、取材し、写真と文章で紹介する連載企画。今回は、北信濃の山田温泉にある「藤井荘」。前・若女将である藤沢晃子さんが女将に就任し、みるみる業績を向上させている。取り組んだ変革は二つ。「内部のイノベーション」と「狭めるマーケティング戦略」だった。

夜のロビーラウンジから、ライトアップされた夜景を望む
純和風数寄屋造りのすべての客室が、対岸の山と渓流を見下ろす景観になっている

  長野駅から長野電鉄で須坂まで行き、そこから車で20 分。秘境と言っても過言ではない深い渓谷沿いに、知る人ぞ知る名旅館がある。「藤井荘」である。清楚で上質な空気感を放つ畳敷きのエントランスの奥のロビーラウンジからは、対岸の山が見渡せ、時の移ろいを何時間でも楽しめる。
 
 こんな名旅館でも、少し前までは時代の変化とともに客足が減っていったという。このままではいけないということで、それまで若女将だった藤沢晃子氏が昨年から女将に就任。さまざまな変革を試みたところ、業績はみるみる回復した。

ロビーラウンジからの眺め。藤井荘は、北信濃・山峡を流れる松川によって深く刻みこまれた松川渓谷の崖上に建つ。窓辺からは眼下に渓谷美を楽しめる
畳敷きの広々としたエントランス。つねにピカピカに磨かれ、ちりひとつ落ちていない、凛とした雰囲気が、名旅館であることを物語る

 
 行なったことは、「内部のイノベーション」と「狭めるマーケティング戦略」。
 内部のイノベーションは、「マネジメントのポリシーを決めた」ことと、「顧客視点での新たなサービス設計と、不要なサービスの廃止」の二つ。
 
 まず、新たなポリシーは、①全員参加、②スタッフの話に耳を傾ける、③失敗大歓迎という三つ。これをしたことによって、現場が一気に活性化したという。それまでは、経営者がトップダウンで指揮・指導して「高級旅館とはこうあるべき」という固定観念を目指していたが、新体制になって、現場のことは現場で考え、意見を引き出し、自発的に実行してもらう組織になった。

藤井荘唯一の洋室ツインベッドルーム「如霞」
御影石の湯舟。窓を開け放つと、自然と一体となる。チェックアウト直前までご利用いただけるように、利用時間を15:00 ~25:00、5:00 ~ 10:00 に延長した

 
 もう一つの顧客視点での変革は、足し算と引き算で進めていったという。足し算というのは新たなサービスのこと。「フリードリンクコーナー」や「和空間でのジャズ演奏」といった魅力を館内にちりばめるようにしていった。一方、これまで行なってきたサービスを見直し、「もしかしたらお客さまのためになっていないかもしれないサービス」を廃止していった。
 
 もう一つ、「狭めるマーケティング戦略」とは、「長野県内のお客さまを大切にした」ことと、「チャンネルを『一休』に集約した」こと。これが実に奏功している。
 
 藤井荘の変革は、「的確な訴求と、オペレーションの改善による魅力度アップを顧客視点重視で行なえば、おのずと旅館は好業績に転換する」という好例と言えよう。

藤井荘名物「ぽんぽん鍋」。串揚げ料理だが、昔、タヌキの肉をこのようにして食したことから、ぽんぽん鍋という名称がついたという
お食事処「東兵衛茶屋」。食事は客室ではなく、個室にて提供している。かつては、食事時間になると仲居が客室まで迎えに行っていたが、お客さまをせかしていると判断し、いまではそれも辞めている
対岸の緑と、眼下の松川渓谷から立ち上るさわやかな空気が心地良い。到着されたお客さまは、このカウンターでお茶を味わいながらチェックイン手続きをする
対岸を見るために窓際に置かれた双眼鏡。このような「ちょっとした楽しみ、魅力」を館内に散りばめようと、藤井荘は努力している


藤井荘のスタッフたち。全員参加、スタッフの話に耳を傾ける、失敗大歓迎という、三つの新たなポリシーを実行した結果、スタッフたちは自発的に、楽し気に行動するようになったという

 
そのほか、本誌では女将の藤沢晃子さんのインタビューと旅館総合研究所所長の重松正弥氏の分析が掲載されています。詳細は本誌をお買い上げいただくか、電子版にご登録ください。
 
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