正面玄関
倒産や廃業で軒数が減り続ける旅館業界の中にも、きらりと輝く個性を持ち、まっとうな経営を行なっている宿がある。本連載は、旅館総合研究所の重松所長が、自身の目で優れた宿を厳選し、取材し、写真と文章で紹介する連載企画。第七回は、長野県・湯田中温泉にある「あぶらや燈千」。とかくリーダーシップが強いワンマン経営者の下だと、スタッフの動きは受動的、指示待ち的になってしまうが、同旅館では、しっかりとした経営・運営の方向性を持ちつつ、スタッフ全員が自発的に動いている。そんなリーダーシップの手法をお伝えする。
企業経営者に、リーダーシップというスキルが欠かせないことは言うまでもない。企業・組織が向かう方向性を示し、社員全体をけん引していく力は間違いなく必要である。一方、スタッフとお客さまのタッチポイントが最も重要なサービス業においては、スタッフの自発性がビジネスの価値を決定づけると言っても過言ではない。ところが、リーダーシップが行き過ぎると、スタッフの自発性が損なわれることがある。スタッフは、経営者や上司の指示を待つようになり、顔ばかり見るようになる。結果、自発的に行動することを止めてしまう。このように、サービス業においては、リーダーシップのあんばいが組織運営の成否を分けるのだ。
今回取材した「あぶらや燈千」を率いる湯本孝之専務は、実にバランスよくリーダーシップを発揮している。それがこの繁盛旅館の成功ポイントだと実感する。
企業理念や経営理念、行動指針を作成し、社員全体に浸透させている。企業の方向性、存在意義、仕事の意義などを明文化し、それを具現化する主人公は社員であると伝えている。
企業理念は、「笑顔をわかちあう」。
だから「あぶらや燈千」は、経営者も社員も、お客さまもみんな笑顔、笑顔が連鎖しているのだ。社員は「仕組み」と「楽しさ」の中で、自然と自発的に行動し、仕事や接客を楽しんでいる。
そんな「あぶらや燈千」を率いる湯本専務だが、以前は鬼軍曹支配人だったという。毎日社員を怒ってばかり、「支配人は、弱みなど絶対に見せない強い人格でリーダーシップを発揮しなければいけない」という固定観念を持っていたという。
新客室コンフォート客室「燈」(60㎡)。コンセプトは、「日常の延長の非日常」。お部屋の雰囲気は、屋号の名前通り「油問屋」の雰囲気を現代風にアレンジ。旅館全体の平均単価は、1 泊2 食で一人約1 万8000 円。徐々に増していっている魅力に比例して、単価も上がってきているという
ところが、今では毎年新卒者を定期採用しており、社員が辞めない旅館になった。「スタッフが楽しく生き生きと働くにはどうしたらいいか」や、社員のキャリアデザインをいつも考えているという。
どんな変遷をたどって今に至ったのか、ぜひインタビュー記事をお読みいただきたい。
そのほか、本誌では「あぶらや燈千」をけん引する湯元孝之取締役専務のインタビューと旅館総合研究所所長の重松正弥氏の分析が掲載されています。詳細は本誌をお買い上げいただくか、電子版にご登録ください。
ご注文フォームはこちら
https://www.hoteresonline.com/hoteres/application/input/78