❏コンセプトはどのように決めていったのでしょうか。
「ご・遊庭」がある場所は、海まで徒歩3 分ですが、オーシャンビューではありません。せっかく房総に来たのに海が見えない場所なんです。ですので、「海が見えなくても十分楽しめる宿にしたい」ということで「庭」をコンセプトの一つにしました。海が見渡せる「鴨川館」と違って、平屋づくりなので、植物がたくさんある庭を楽しんでもらおうと考えました。そのため庭のデザインを依頼したガーデンデザイナーの玉井禎晋氏にトータルプロデュースを依頼しました。
お部屋と庭の間にあるコンサバトリーという空間が、「ご・遊庭」のコアの価値になっています。コンサバトリーとは、ガラスで囲まれたガーデンルームのことを指します。オープンテラスですと、夏の間はけっこう暑くなります。せっかく外で、陽の光を感じながら朝食などを楽しみたいと思ってもそれどころではありません。エアコンが効いている中でも自然を感じたり、庭の緑を眺めたりできるということで、このコンサバトリーを取り入れました。本場イギリスでは、陽がさしている時間が短いために、陽の光を感じる空間が発達したそうですが、それを私たちはワンちゃんと一緒に入れる場所として、「Dog サバトリー」と呼んでいるのです。
❏家具や備品は、どのように選びましたか。
トータルプロデュースを依頼した玉井氏と私が一緒に選びました。ワンちゃん連れのお客さまの快適な滞在を実現するために、さまざまな工夫をしました。
まず、ベッドの下の空間をなくしました。ワンちゃんの毛がベッドの下にたまらないようにするためです。毛があるとにおいも残ってしまいます。また、掃除も簡単です。床にも工夫を凝らしました。タイル張りですと、ワンちゃんがおしっこをしてしまってもすぐに拭き取れるので便利なのですが、お客さまはくつろげませんし、少し冷たい印象になります。では、木調のフローリングはどうかというと、ワンちゃんの爪の傷がついて、すぐに傷んでしまいます。調べていく中で、フローリングの上に敷いて、部分的に外せるカーペットがあることを知りました。それを採用しています。お客さまには、客室のレイアウト図を掲載した「マーキングレポート」という用紙をお配りし、ワンちゃんがマーキング(おしっこ)や排せつをしてしまった場所に印をつけてチェックアウトの際に教えていただくようにしています。
また、スタッフは現在3 人ですが、そのうち2 人はペットの専門学校を卒業した者です。彼女ら自身もワンちゃんを飼っているため、飼い主にとってケージやリードフックがどこにあると便利かを理解しているので、彼女たちの意見を反映させて完成させていきました。
❏プロモーションは、どのように進めていますか。
ワンちゃんを飼っている方は限られているので、ターゲットは絞られています。ワンちゃんを飼っている方が見るメディアでどれだけ訴求できるかがポイントだと思っています。
オペレーションの改善を重点的にしているところですので、まだまだプロモーションにまで手が回っていないのが正直なところですが、まずはホームページを開設し、スマホでも見られるようにしました。フェイスブックでもPRしています。また、ワンちゃんを飼っている方を読者対象にしたベネッセの雑誌『いぬのきもち』という雑誌に同梱の「ペット宿ガイド」にて紹介していただきました。
第二回
経営者インタビュー オンリーワンの宿づくり
「南房総 鴨川温泉 Dog サバトリーのある宿 ご・遊庭」
【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月20日(金)