旅で他者を理解することで自分自身への理解も深まる
----それで、会話を大切にされるホテルをつくろうと思われた。
私が学んでいた文化人類学の神髄は、異文化交流です。何も国籍の違いだけが異文化ではなく、同じ「青色」と言っても、人によっては全く違う色を想像しているかもしれませんよね。そういったことを、さまざまな地域にいって見聞きしたことを記録し、深く理解する学問なのです。そして、その真の目的は、他者を理解することを通じて、自分自身を理解することにあります。
これと同様に旅においても、周囲も自分自身の理解も深まる手段はないかと考え、ゲストとスタッフの間で、深い交流が生まれるホテルをつくりたいと思いました。また当時、いわゆるブティックホテルに泊まりたいという要望も多く、まだ京都にはかなり少なかったので、チャンスがあると考えたのです。最初は町家を改装した古民家を一棟貸しして大盛況になり、2017年には、「ホテルエスノグラフィ」というホテルブランドも誕生しました。
こちらは京都で 2軒、金沢にも展開していましたが、残念ながらコロナで手放し、今は京都に1軒だけ残しています。そんな折に、こちらのオーナーに「一緒にホテルをつくろう」とお声がけいただきました。
----「GION ELITE TERRACE」の特徴を教えてください。
コロナ禍でインバウンドが激減したことや災害、戦争などのリスクを鑑みて、国内外のお客様を対象にと考えました。そこで、多くのストレスを抱える現代人に必要な「ウェルネス」をテーマに据えて、私自身もコロナ禍にはまり、心身共に救われたサウナを31室中11室に取り入れています。加えて、サービスの効率的にも長期滞在の方を増やしたいので、滞在の快適性を高めるため、各客室は28〜45m2の広さを確保。
自然素材もふんだんに使用したリラックス空間を演出しました。ミニキッチンやランドリーもつけて、湯船には芯まで温まり湯冷めしにくいと言われる「酸素美泡湯」も取り入れています。これらの「ウェルネス」とパーソナライズされたサービスを実現するために、テーマに沿ったインテリアデザイン、アメニティ、ファシリティ、テクノロジーを選んでおり、「AVA」もその中のひとつです。
1泊当たりの単価は 3万円台で、サウナ付きの客室は 5,000円〜 10,000円程度アップします。安いと思われるかもしれませんが、「払った甲斐がある」と感じていただける価格設定を意識しており、そこに様々な付帯サービスを付けることで、満足度を高め、リピーターやクチコミにつなげたいと思っています。