「ホテルは文化を伝える場所」を忘れたら自分たちで創ったホテルをやる意味はない
近畿圏を中心にホテルチェーンを展開するJR 西日本のグループ企業、㈱ジェイアール西日本ホテル開発は2024 年7月31 日、JR 西日本ホテルズにおける新ブランドホテル「THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection(大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション)」を開業した。総支配人に就任した佐藤伸二氏は料理人出身という経歴を持ち、これまでホテルグランヴィアを舞台に常に「食」を軸としたホテルの魅力づくりに注力するとともに、シェフの育成の面でも活躍してきた人物だ。大阪が持つ歴史や文化を現代・未来へと継承するべく、「停滞する王道ではなく、進化する王道」を目指すTHE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collectionのあり方について、佐藤氏はどう考えるのだろうか。
THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection
総支配人
佐藤 伸二氏
1991 年ホテルグランヴィア大阪入社。96年ホテルグランヴィア大阪総料理長就任。2004年ホテルグランヴィア京都総料理長就任。15 年JR 西日本ホテルズ総料理長就任。18 年同兼ホテルヴィスキオ京都開業準備室長就任。19 年ホテルグランヴィア京都 総支配人就任。23 年THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection 総支配人就任。主な受賞歴などとして、フランス共和国農事功労章シュヴァリエ受章、大阪府技能顕功章受章、(一社)全日本司厨士協会京都府本部名誉会長、(一社)日本エスコフィエ協会副会長がある。
食に特化したホテルを スタッフ全員で完成させるという 使命を果たしていく
THE OSAK A S TATION HOTEL, Autograph Collection は、150 年前に初代の大阪駅があった場所に立地している。そのため駅や鉄道に関するモチーフを散りばめた空間づくりを行い、館内の随所には鉄道をオマージュしたアートが飾られている。
さらに「THE OSAKA TIME」をブランドコンセプトに据えて、“ 天下の台所” と呼ばれる大阪の食材を中心に、日本各地と世界中から優れた食材を集めて季節ごとの料理を提供していく。
「大阪でどのような時間を過ごしていただけるかを考え抜き、館内に大阪を感じていただけるものを配置し、食に関しても大阪および西日本各地の食材を意識することでTHE OSAKA TIME を表現していきます」と総支配人の佐藤伸二氏は言う。「大阪の食材だけでは限りがあるので、天下の台所の呼び名に恥じないよう世界中のおいしいものを組み合わせていきます。ホテルにとってデザインはもちろん重視すべき要素ですが、今回はそれ以上にコンセプトやストーリーを大切にしながらホテルづくりにあたりました」
50年前に料理の世界に入り、16年間街場のレストランで修行した後、34歳のときにホテルに移った佐藤氏は、人を育てるという仕事を得意としてきた料理人だ。その取り組みに注力してきたことを背景に、THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection では総料理長として自らが育ててきた弟子たちの力をフル活用したチームを、今度は総支配人として創り上げていくという重要なミッションを担うことになった。
「JR 西日本ホテルズは、『食に重きを置く』という考え方を大前提にホテルづくりをしてきました。その風土の中で私が担うことになった使命は、食に特化したホテルをスタッフ全員で完成させることだと思っています」
食に特化したホテルにおいて特に注力すべきなのは朝食だ。ホテルメイドのパン、熟したばかりの旬のフルーツ、フレッシュなジュース、サラダ、ヨーグルトが並ぶ朝食は決して手を抜くことなく、ベーシックな部分をきちんと押さえている。さらに多様なニーズに応えるために、たとえば和食の充実も図るといった取り組みにも注力する。そのスタイルを貫くために、開業準備の期間には総料理長やキッチンメンバーのみならず、佐藤氏も自ら地元・大阪の知られざる食材を探し出し、生産者との良好な人間関係を構築しながら一つ一つの食材を見直す作業を続けた。さらに今回は塩、砂糖、醤油、酢、酒といった調味料に関しても、食材の魅力を最大限に生かすためにすべて最高のものを選び抜いた。
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