農業、畜産、水産と星野リゾートが各施設で提供する料理に関わる生産者と共にコロナ禍を生き残るべく、「もったないプロジェクト」と銘打ち取り組みを増やすことでフードロス回避を推進している。画像は3月から「星のや沖縄」で提供が始まった「海鮮しゃぶしゃぶ鍋」
https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2021/03/139062.html
「星野リゾート」がフードロスを改善すべく“もったいないプロジェクト”を立ち上げた。コロナ禍により納品されず廃棄に回される食材を積極的に施設内レストランのメニューや宿泊プラン、ギフト商品などに活用することで生産者支援をする取り組みだ。きっかけは昨年起こったコロナ禍の影響で外食産業や学校給食における生乳や乳製品の消費低下で生乳の廃棄が増えたことだ。
「リゾナーレ那須」と縁のある那須町の牧場「森林ノ牧場」にも生乳廃棄の問題が発生していたことからフードロスをなくすために何か協力をできないか? ということから始まったという。生乳という食材の性質上、加工品とすることが長期保存にも適い、より多くの生乳を廃棄せずに活用できるということで2013年の“ボキューズ・ドール”のブロンズホルダーであり、「星のや東京」の総料理長でもある浜田統之氏が監修にあたり“星野リゾートのミルクジャム”が誕生した。このミルクジャムは当初は那須、八ヶ岳、熱海の「リゾナーレ」3拠点で “牧場を救うミルクジャムフラッペ” として提供され、現在は「リゾナーレ那須」でフラッペおよびホテルショップのギフト商品として販売されている。
「星野リゾート」ではこの取り組みを拡大すべく、全国の施設とかかわりのある生産者から浜松の茶葉、沖縄の紅芋ペースト、北海道のほおずきにさくらんぼとフードロス救済の取り組みを続けている。今春はお膝元である軽井沢のマイヤーレモンの支援に着手し、「軽井沢ホテルブレストンコート」「BEB5軽井沢」の2拠点で商品開発に取り組んでいる。また「リゾナーレ那須」では行政へアプローチすることでいちご農家とのマッチングが実現し、新たに“いちご尽くしステイ”のプランも開発した。さらに農業、畜産業に加え、水産業への支援も始めた。「星のや沖縄」をはじめとする沖縄県内の4施設で水産物を活用した「海鮮しゃぶしゃぶ鍋」やビュッフェでの「海鮮ちらし寿司」を提供している。
今後もコロナ禍によるフードロス回避、そして生産者応援の観点からこの取り組みは続けていくといい、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業要請に伴う生産者、食品関連事業者の損害支援が後回しにされがちな中で心強いエールとなった形だ。外食のみならず宿泊はもちろんのこと、ブライダル産業においても生産者、食品関連事業者の支えがあってこそ成り立つ業界であることは誰もが周知するところだ。いずれの業界もコロナによる影響で厳しい状況を強いられており、自社運営で手一杯という事業者が多いのも現実だろう。しかしコロナ禍を生き延び、アフターコロナという時代を迎える際、食材供給を担う事業者の存在がなければ自らの事業を立て直すことも活性化することもかなわない。
ワクチンこそ投与が開始されたが、感染者数の下げ止まりが続き、まだまだ“withコロナ生活”は出口が見えない状況にある現在、各事業者がそれぞれに“withコロナ対策”を検討し、新たな取り組みを実装している。この流れは今後もしばらく続くだろう。その中でそれぞれの事業者に関わる生産者および食品関連事業者との共存を今少し、もしくは今以上に考えてもらいたいと思う次第であり、今回の星野リゾートの取り組みはその優良事例としてぜひ参考にされたいと考えている。
星野リゾート
https://www.hoshinoresorts.com/