300 年以上の歴史ある門をホテルのエントランスとして復元する(完成予想CG)
三井不動産が京都で進める「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」。三井不動産が独自のラグジュアリーブランドを立ち上げ進めるプロジェクトだけあって、そこにかける思いは並々ならぬものがうかがえ、これまでのホテルとはまったく違ったホテルが誕生しそうだ。本連載では同プロジェクトの関係者などのコメントを通じて、まだその全容が見えぬホテルの姿を少しずつ解明していく。
本物のラグジュアリーを追求するからこそ
「時代の真逆を行く」ホテルプロジェクト
「効率化」、「合理化」、「仕組み化」、「省人化」、「生産性の向上」…etc.
時代の流れもあってこういった言葉をよく聞くホテル業界。だが、三井不動産が京都で新たに立ち上げるラグジュアリーホテルプロジェクト「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」は、全く逆を行っている。
「このホテルプロジェクトにおける私の最初の仕事は、敷地内にあった庭の石や灯籠をほかの場所に移して保管をするというものでした」
そう話すのは、同ホテルプロジェクトの建設を担うこととなった、清水建設の杉本雅史建設所長だ。
「灯籠は、分解して運びます。300 年以上の歴史を持つ門もあるのですが、それも新しいホテルのエントランスとして復元して使いますので、丁寧に解体して、福井県の某所に丁寧に保管をしています。
このホテルプロジェクトは、三井不動産さんの並々ならぬ思いを感じますね。普通のホテル開発では考えられないくらい、非常に手間とお金がかかっていますよ。今回のホテルプロジェクトの地は三井不動産さんにとって由緒ある土地ではありますが、土地だけでなく、当時から残っている遺構などもここまで大切にされるのかと、驚いています」(杉本氏)
三井不動産のホテル・リゾート本部 リゾート事業部長の鴉田隆司氏が、その理由を語る。
「今回のプロジェクトの土地は昭和中頃まで250 年以上にわたり三井総領家(北家)の居宅があり、いわば三井不動産グループゆかりの地である、とても重要かつ意義深い場所です。そして、三井不動産として直営国内ブランドとしては初のラグジュアリーホテルを手掛けるプロジェクトでもあります。これまでグループでの直営や運営委託、テナントなどさまざまな形でホテルビジネスに関わってきて、いよいよ自分たちでラグジュアリーの直営にチャレンジしていこうという中で、願ってもない場所でした。そうしたさまざまな背景もあって、非常に思い入れの強いプロジェクトなのです」(鴉田氏)
総支配人として着任をした、ラグジュアリーホテルでの経験が豊富な楠井学氏も、三井不動産の思い入れの強さを感じるという。
「総支配人として任命をしていただいたのが開業の二年以上前ですからね。相当早い段階から準備が進められています。私以外の幹部メンバーも既に現段階でそろっています。いくらラグジュアリーとはいえ、今までのホテル業界の常識からすれば考えられないことだと思います」(楠井氏)
通常、総支配人の就任は開業の1 年〜1 年半ほど前。そして総支配人だけでなく幹部メンバーも早々に決まっている。それだけ、周到な準備をしておきたいという考えがあるのだろう。