日本ホテル株式会社 特別顧問統括名誉総料理長 中村勝宏氏
翁達磨 店主 高橋邦弘氏
はじめに
以前、このホテルレストランの誌面で十六名の食のエキスパートの方々と対談させて頂いた。このことはかけがえのない財産となっている。そして改めて食の深さを知ることとなった。今日、世界的にさまざまな問題が生じ混沌として厳しい時代となった。しかし私どもはいかなるときも食と向かい合ってゆかなければいけません。この度の対談の再開にあたり、新しい視野の元、敬愛する皆さまと互いの胸に響きあえる対談を心してまいりたい所存です。
洞爺湖サミットの経験
高橋 北海道の洞爺湖サミットのときは、もり蕎麦でしたけど、各国首脳のご婦人方が最後までお食べになられていました。そのときに中村さんから「高橋さんが一番点数を稼いだね」と言われたのが印象的でした(笑)。
中村 そうですか、生意気にそんなことを言っていましたか(笑)。あのときはG8 のみならず、初日、7 月7 日のアウトリーチのワーキングランチは各国首脳と国連事務総長などいきなり19 名でした。また、最終日、7 月9 日のワーキングランチは各国首脳など含め総勢22 名でした。各国のトップの方々も非常に大切ですが、中でも私はご婦人たちのお食事はすごく大切だと思っていました。各国首脳のご婦人方に「おいしかった」と言っていただければ、必ずご主人の各国首脳にも伝わるわけです。実際の首脳の方々は食事の折もさまざまな討議をなさりながら食べておられますから、どこまでその料理に対して注力なさっておられたのだろうかという思いもありました。しかしご婦人は、最初から食を楽しまれる前提でおすわりになっておられたので、高橋さんにそのように言ったのだと思います。