コンラッド東京のソムリエチームは、洋食レストランにとどまらず、和食や中華、宴会場、ルームサービスといったホテル館内におけるすべての場面において、ビバレッジに関する権限と責任を持ちながら活動している。“ 唎酒師世界チャンピオン” の称号を持つヘッドソムリエの北原康行氏はワイン同様、日本酒についても幅広く、奥深い知識を持つ。その力を活かし、フレンチと日本酒のペアリングなど、お客さまに「新しい発見」のある素晴らしい体験を提供している。
北原康行 Yasuyuki Kitahara
銀座のレストランで仕事をする傍ら、ソムリエの資格を取得。5年間勤めた後、知り合いのシェフがオープンするレストランを1年間手伝う。2008 年コンラッド東京入社、フレンチレストランのソムリエを務める。入社後6カ月でソムリエチームが立ち上がり、そこからチームメンバーとしての仕事がスタート。12 年にアシスタント ヘッドソムリエ、そして16 年8 月にヘッドソムリエに就任。14 年に行われた「第4 回世界唎酒師コンクール」でグランプリを獲得した。1979 年、東京都生まれ。
[コンラッド東京]住所:東京都港区東新橋1-9-1 TEL:03-6388-8000(代表)URL:conradtokyo.co.jp
北原氏が日本酒の入門書として分かりやすくまとめた近著『日本酒テイスティング』(日本経済新聞出版社)
北原氏厳選の日本酒26 本をテイスティングし、それぞれどんな風味か、どんな料理に合うのかを徹底解説。日本酒の風味を見きわめたいなら、エリアとタイプだけ見ればいいという斬新な判断基準も評判を呼んでいる
モダンフレンチとのペアリングにうま味成分の多い日本酒をあてる
──コンラッド東京のワインリストの中で、日本酒に対する関心は高まっていますか。
私が唎酒師のコンクールに出場したのは2014 年ですが、その当時に比べて、インバウンドのお客さまが日本酒をオーダーする率はもちろん、日本人のお客さまから日本酒を頼まれる率が増えてきました。この傾向は日本料理店に限らず、洋食レストランにおいても顕著に見られます。
洋食では料理一皿に一品のワインを合わせるペアリング形式での提供スタイルも採っていますが、そこで日本酒もあてるようにしています。かつては「飲んでその場が和めばいい」という嗜好品だった日本酒ですが、今ではワイン同様、香りや料理との相性を楽しむものというように、その立ち位置が変化してきている気がします。そのことから、もう一度あらためて日本酒を見直す日本人が増えてきたのではないでしょうか。
──日本料理店以外のレストランでも、料理一品に日本酒一杯のペアリングの形であれば採り入れやすいと思います。
ペアリングの中に日本酒を差し込むことで、食事の流れにも強弱ができます。ワインと同じように飲料の一アイテムとして日本酒を取り入れていくことは、日本料理以外の業態でも十分に可能性が感じられると思います。
最近のフランス料理は、しっかりとしたバターの味や濃厚なソースといった伝統的な味つけよりも、素材を活かす技法のモダンフレンチが主流となってきました。旨味成分の多い日本酒がアプローチできる幅は広がってきていると言えるでしょう。