ログイン
検索
  • TOP  > 
  • 記事一覧  > 
  • バーテンダーの存在理由を理解し、バックアップするホテルの理想形
パレスホテル東京 大竹学氏

バーテンダーの存在理由を理解し、バックアップするホテルの理想形

【月刊HOTERES 2016年09月号】
2016年10月26日(水)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


 世界有数の総合酒類メーカー、ディアジオ社が主催する“ バーテンダーに必要なすべて” が問われるコンペティション「World Class(ワールドクラス)」において、2011 年に世界大会で優勝した大竹学氏。パレスホテル東京のメイン バー「ロイヤル バー」とロビーラウンジ「ザ パレス ラウンジ」のマネジャーを務めながら、ワールドクラスチャンピオンとして世界中を駆けまわる活動も続けている。その活躍を支えるのは、ホテル側の理解とバックアップ。バーテンダーとホテルの幸せな関係が、バーの歴史を刻み続ける。

最後の挑戦を楽しもうと決めたとき 今までにない感覚が芽生えた

——ワールドクラス挑戦の歩みを教えてください。

 2009年開催の第1回ワールドクラス出場から、10 年、11 年と3年連続の挑戦の末、ようやく世界チャンピオンに手が届きました。この3年間で自分が追い求めるカクテルとプレゼンテーションを通じて、いかに自らのパーソナリティーを表現するべきかについて考え抜くことができました。私にとってかけがえのない3年間であり、この時間がなければ今の自分の立場はなかったと思います。
 1年目は緊張のあまり、ステージを降りた後は何を話したのか記憶がないほど、頭が真っ白になっていました。10年もやはり何かが足りなかったと感じました。私は気持ちを前に出して、力で押していくタイプのバーテンダーだと思います。この年の大会では気持ちが入り過ぎてしまい、審査員に「プレゼンテーションの落としどころが悪い」との指摘を受けました。
 11 年は、これで駄目だったらワールドクラスの挑戦はやめようと決意し、「最後だから楽しんでしまおう」と思いました。最後のゲームをエンジョイすれば、お客さまを楽しませることができるはずです。そして、自分のパーソナリティーを楽しんでもらうしかないと思ったのです。するとステージ上での感覚がまるで違ったものになりました。お客さまにプレゼンテーションしている自分の姿を、第三者の自分が見ているような感覚でした。その結果、日本代表として世界大会進出が決まったのです。

——世界大会はインド・ニューデリーでした。

 11年は東日本大震災が発生した年であり、原発事故の影響で日本の農作物のインドへの持ち込みがすべて禁じられてしまいました。一度は落胆しましたが、20歳から15年間、バーテンダーとして培ってきたすべてを出そうと気持ちを切り替えました。
 ワールドクラスで大切なのは、第一にパーソナリティー(ホスピタリティー)、第二にプレゼンテーション、第三にお客さまとバーテンダーをつなぐコミュニケーションの一つとして最高のカクテルを提供できればベストだと思います。日本の素材が使えないと落胆していたのは、最後にくるはずのカクテルについて最初に考えてしまったからだと気づきました。世界大会でもう一度、自分が楽しむことでお客さまを楽しませよう。そして日本の“ 綺麗で丁寧な仕事” を見せよう。現地の材料を使って、自分の強みである強いパーソナリティーを全面的に表現することができましたし、最後には最高においしいカクテルを飲んでいただくことができました。

 

チャンピオンを世界にアピール。ホテルブランドの向上につなげる

——世界チャンピオンになって、変わったことは何ですか。

 ワールドクラスの「一夜にして人生が変わる」というコンセプトは本当でした。11年以降、世界中から出演のオファーが入るようになりました。チャンピオンになってから約20 カ国、35 都市以上を訪れていると思います。外国に行くことでさまざまな体験ができますし、日本では考えられないバーテンディングスタイルやカクテルの味わい、フードとの組み合わせを知ることができるのです。そして何より大きいのは、世界中にバーテンダーの友達ができるということです。本当にプライスレスな最高の財産です。
 仕事をしながら世界を駆けまわる活動を行なうためには、ホテル側の理解が必要です。この場合、ホテルには二つの考え方があると思います。大竹がホテルのバーに常駐しないことで、そのカクテルを目当てに訪れたお客さまを失望させ、機会損失につながるという考え方。そして大竹を世界にアピールすることで、ホテルブランドのイメージアップにつなげるという考え方です。
ワールドクラス優勝後にパレスホテル東京に入社したのは、ホテルの根底に後者の考え方があったからです。パレスホテル東京は、日系ホテルでありながらインターナショナルホテルに負けないものを世界に向けて発信する姿勢を貫いています。その方向性を追求するために、担当するロイヤル バーとザ パレス ラウンジの責任者として利益を上げて、さらに余裕があればチャンピオンとしての活動を続けてもいいということでした。

「Asia’s 50 Best Bars 2016」に、日本のバーが8店舗ランクインしましたが、ロイヤル バーも28 位と素晴らしい名誉をいただきました。これからも私が海外に出掛けて行くことが、パレスホテル東京のロイヤル バーにとって大きなメリットにならなければなりません。そして私がいない間も、すべてのバーテンダーが最上級のカクテルをお客さまにご提供することのできるチームが、ロイヤル バーの歴史と伝統を守り続けているのです。

月刊HOTERES[ホテレス]最新号
2024年11月15日号
2024年11月15日号
本体6,600円(税込)
【特集】本誌独自調査 総売上高から見た日本のベスト100ホテル
【TOP RUNNER】
フォーシーズンズホテル大阪 総支配人 アレスター・マカルパイ…

■業界人必読ニュース

■アクセスランキング

  • 昨日
  • 1週間
  • 1ヶ月
CLOSE