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黎明期の韓国ウイスキーを牽引:「スリーソサエティーズ」ブライアン・ドウ氏インタビュー

2023年11月24日(金)
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ソウル・オリンピックに向けたウイスキー造りから約30年の時を経て、今韓国産ウイスキーは黎明期を迎えようとしている。2023年11月現在、韓国には3つのウイスキー蒸溜所があり、今後大手の参入が見込まれている。

 

黎明期の業界を第一線で牽引しているのが、「スリーソサエティーズ」ブライアン・ドウ(Bryan Do)氏だ。来日に際し、特別に取材の機会を頂いた。ウイスキー造りへの想いや今後の「コリアン・ウイスキー」の可能性についてお話を伺った。

▶ご経歴と酒類業界への参入きっかけについてお伺い出来ますでしょうか。
 

ブライアン・ドウ(Bryan Do)氏
ブライアン・ドウ(Bryan Do)氏

ドウ 私はアメリカ生まれの韓国系アメリカ人でして、韓国には1997年に移りました。職歴は様々なことを経験しまして、TVのニュースキャスターと言った放送業界の経験、PR会社での経験、そしてMicrosoftでの勤務経験もあります。
 

丁度Microsoftで勤務していた頃に、アメリカや日本でクラフトビールが流行し始めました。マーケティングやブランディングが好きだということもあり、私の経験を活かせば韓国でもクラフトビールのブランドを立ち上げることが出来るのではないかと思ったのがきっかけです。
 
2013年12月に韓国初のクラフトビール醸造所の一つであるThe Hand And Malt Brewing Companyを立ち上げたところ、瞬く間に人気となりました。その活動が大手企業の目に留まり、2018年にAnheuser-Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)へ売却することになりました。
 
売却をした後、もう一つ事業をしたいと感じていました。そして、それはウイスキーがいいと思っていました。シンガポールで生活をしていた際にシングルモルトにはまったこともあり、ウイスキー造りへの情念も昔から持っていました。2020年の6月に最初の蒸溜を行い、2023年の2月にKI・ONEのローンチへと至りました。
 
▶韓国ウイスキーの歴史について、少しお伺いできますでしょうか。
 
ドウ 韓国には1980年代に4つの蒸溜所がありました。1988年のソウル・オリンピックに向けて国内製造をしていこうという目標を持っていましたが、開始から1年ほどで事業が失敗に終わりました。
 
そこから30年ほど、私が「スリーソサエティーズ」を立ち上げるまでウイスキー造りは行われて来ませんでした。現在は3つの韓国産ブランドがあります。1つは私たちのもの、他の2つは小規模蒸溜所です(その内1つはKIMCHANGSOO、もう1つはCraftBros)。また、今後ロッテや新世界といった大手の参入が見込まれています。
 
▶30年間の空白があって、新たに免許を取得するのに苦労はありましたか。
 
ドウ ライセンス自体は問題がなかったのですが、今に合わせた法整備を整える必要があります。1980年代と現代では様々な違いがありますのでアップデートを進めている状況です。
 
例えば、エンジェルシェアは2%というスコットランドに倣った数字が用いられていますが、実際韓国では2%という数字ではありません。その事実確認のために、毎回ボトリングの際に役所の方々に樽をチェックしてもらっている状況です。
 
▶法整備もさることながら、ウイスキー造りも大変だと思います。工程を順に追いながら説明頂けますでしょうか。
 
ドウ 原料については、メインはスコットランド産のウイスキー用モルトですが、自身がビール業界出身ということもあり、一部ビール用のモルトも使用しています。その辺りは少し個性的ではないかと感じています。
 

目指しているのは複雑さのある味わいだけでなく「韓国らしいフレーバー」というものを表現したいと思っています。特に後味に韓国スパイスのニュアンスを感じられるように意識しています。

例えば「コチュジャン」は韓国の代表的なスパイスですが、スパイシーでありながら深みがあり、甘さがあります。複雑さの中にある韓国らしさを表現したいと思っています。
 

そうした味わいを生み出すために、発酵は高めの温度で長くしています。酵母についてもウイスキー造りで用いられる一般的なのものに加えて、韓国産のものを使用しています。マッシュタンはドイツ製のビール用のものを使っています。
 

蒸溜器の大きさは5000リットルで、フォーサイス社のものを使用しています。カットポイントも高めに設定しており、フルーティさ、シトラス感がありながらスパイシーさのあるスピリッツに仕上げています。このニューメイクの味わいが好評でして、来月12月より販売開始を予定しています。
 

▶ウイスキーは水と言った原料や工程も重要ですが、熟成環境も大きく味わいに影響を及ぼしますが、どのような特徴があるのでしょうか。
 
ドウ 夏は平均35度、冬は平均マイナス20度と60度近い温度差がある環境ですので、熟成だけでなく発酵についても気温の影響はあります。夏に発酵温度が上がり過ぎる場合には冷却装置を使うこともありますが、基本的には高温で発酵させることで印象的な香りを生むようにしています。
 

熟成環境は、特に冬の1月には1日の内17時の1時間だけしか日が当たらない北向きの場所です。夏は暖かく樽の木材は膨張してスピリッツを含みますが、冬になるにつれてどんどん気温が下がると逆に収縮をしてスピリッツが戻される形となります。この寒暖差を用いた熟成が特徴的だと言えます。
 

樽の種類としてはバーボン樽が約45%、アメリカン・バージンオーク樽が35%、残りはシェリー樽でペドロ・ヒメネスやオロロソのものを用いています。一部、韓国産の樽も使用しています。
 
▶今コリアン・ウイスキーというカテゴリーやスタイルを確立させている段階だと思いますが、どのような構想をお持ちでしょうか。
 
ドウ やはり世界的に評価されるような高品質なものをつくりたいと思いますが、それに加えてイノベーティブでもありたいと思っています。韓国産の原料を用いて、韓国らしさを全面に出し、韓国にこだわったウイスキー造りをしていきたいですね。
 
例えばですが、韓国の伝統的な酒類企業とコラボレーションを行ったりしています。梅酒で用いた樽や、覆盆子(복분자,ポップンジャ)という木いちごのお酒を熟成させた樽を用いることも始めました。
 
▶30年を経ての国産ウイスキーとなると国内の期待もあると思いますが、反響はいかがですか?
 
ドウ 初の国産ウイスキーということで注目もされ、ファンも多く喜ばしいという評価を受けています。初めて商品をローンチした際には、36時間も列になって待って下さったファンの方々もいますし、新商品のリリース時には期待をして待って下さる方々も多い状況です。
 
その一方で、まだきちんとした評価を出す前に私たちの活動が注視されているような面もあります。特に韓国のウイスキー通からは厳しい眼差しを向けてもらっていると感じます。
 
私としては、韓国の飲酒文化をより洗練されたものへと変えていきたいという想いがあります。というのも、韓国の中でもまだまだ酔う為にお酒を飲むという状況があります。お酒を味わうことで、より健康的にお酒を嗜むという社会的な雰囲気を根付かせていきたいと感じています。
 
▶根付かせていくためには、具体的にはどのようなことが必要だとお考えですか。
 
ドウ そのためには、何よりも高品質なウイスキーをつくる必要があります。そうすれば、愛飲家や評論家も自分たちに寄り添ってくれるようになると信じています。政府も私たちのチャレンジを非常に評価してくれていますし、法整備の面でもとても力になってくれています。
 
最近、韓国ウイスキー協会というものを立ち上げました。コリアン・ウイスキーとは何かのガイドラインであったり、将来の為に様々な市場を参考にしつつ活動を始めています。スコットランドはもちろん、ジャパニーズ・ウイスキーの定義も参考にしています。
 
ひょっとすると、今は蒸溜所にいるよりも、政府の方々と一緒にいる時間の方が長いかも知れません(笑)
 

あと、長期的なビジネス戦略として、ファンを驚かせ続けるスモールバッチでの新商品展開を行っています。現在熟成庫に3,600樽を保有しており、生産量を増やすつもりはありませんが、ウイスキーの酒税が変更になるタイミングでもう少し商品展開を増やし、利益改善も図って行きたいと考えています。
 

▶最後に日本のウイスキー愛好家に一言頂けますか。
 

ドウ 本当に観光客の方々に訪問頂くのは大歓迎ですし、つい先月にも日本からお一人タクシーでふらっと蒸溜所にいらした方もいました。多くの皆さんにお越し頂ければと思いますので、事前にメールであったり、InstagramやFacebookのダイレクトメッセージを送って頂ければと思います。
 

ソウル市内にもKI・ONEバーを立ち上げました。そこでは定番品や限定品を試飲できるようになっています。樽出しの状態で味わえるものもありますので、是非、お越し頂ければと思います。
 
アジアの中でも今最も新しいウイスキーのブランドであり、産業に参入する新進気鋭の蒸溜所として日本の皆さまにも、お楽しみ頂けると幸いです。

担当:小川

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