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ルーマニアの酒類企業「アレクサンドリオン・グループ」日本での展開と輸出を狙った挑戦へ前進

2023年11月09日(木)
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ルーマニアのワインとスピリッツのメーカーであり、さらに国内で唯一のシングルモルトを生産していしている「アレクサンドリオン・グループ」は、去る2023年10月27日(金)にハイアット セントリック 銀座 東京にて、今後の日本展開と自社ブランド周知のためのイベントを開催した。
 
イベントには、アレクサンドリオン・グループから創設者で会⻑のDr. Nawaf Salameh (ナワフ‧サラメ博⼠)氏をはじめ、ウイスキー‧ディレクター兼カルパチアン‧シングルモルト蒸留専⾨家であるAllan Anderson (アラン‧アンダーソン)氏、ドメニーレの蒸留専⾨家兼醸造家のJean-François Joumier (ジャン=フランソワ‧ジュミエ )氏、オペレーション兼ラム‧ディレクターのLorenzo Vergani (ロレンゾ‧ヴェルガーニ )が来日し日本展開からウイスキー、ワイン造りについて説明を行った。

Dr. Nawaf Salameh (ナワフ‧サラメ博⼠)氏
Dr. Nawaf Salameh (ナワフ‧サラメ博⼠)氏
Jean-François Joumier (ジャン=フランソワ‧ジュミエ)氏
Jean-François Joumier (ジャン=フランソワ‧ジュミエ)氏

【海外進出】
企業が活動の場を海外へと広げる際、どのような方法があるのか。国際経営の分野では、海外進出時の意思決定においてOILパラダイムとウプサラモデルというのが知られている。「異質性による負債(Liability of foreignness)」と呼ばれる参入する側が文化や習慣の違いで抱える課題をいかにして克服しながら事業を進めて行くかということが重要になる。
 
酒類の販売を考えるとき、小売と業務用の市場がある。日本では過去、海外大手小売企業が参入してきたが、その多くが撤退する形となった。流通の歴史を紐解くと、大店法や日本の取引慣習といった非関税障壁の問題や、また、地域に根差した小売店の存在、多頻度小口配送など自国とは異なるシステムに海外企業は立ち向かわなくてはならない。
 
こうした様々なことを考えつつ、新たに企業を設立する新規投資(Greenfield FDI)か、進出先の既存企業を買収するクロスボーダーM&Aといった手法が取られていく。この悩みは、アレクサンドリオン・グループの創設者であり会長であるNawaf Salameh(ナワフ・サラメ)氏からのコメントからも伺える。
 

「ここ数年で、アレクサンドリオン・グループは驚くべき成長を遂げてきました。私たちの製品は世界中で愛されており、特に日本での反応は大変好意的でした。このような背景から、次の一歩を踏み出すのが自然な流れと感じました。2024年の前半には、日本の消費者が私たちのような質の高いスピリッツやワインを高く評価することを背景に、配分会社を設立する予定です。日本国内での生産に関しても、新たな蒸留所を建設するか、合弁事業を通じての取り組みか、既存の蒸留所を購入するかという3つの方向性を模索しています。」

 

アレクサンドリオン・グループは、ルーマニア初のシングルモルトウイスキーである「CARPATHIAN SINGLE MALT WHISKY(カーパシアン シングル モルト ウイスキー)」を有している。そのノウハウを基に、日本で生産したウイスキーを海外へと輸出することを検討している。
 

ポートフォリオとイメージ戦略】
アレクサンドリオン・グループでは、カーパシアン シングル モルト ウイスキーを筆頭に50種類を超える商品を保有している。今回のイベントでは、「ライン・エクストラ(スパークリングワイン)」「ハイペリオン(スティルワイン)」と「コンサート プレスティージ ロゼ(スティルワイン)」も併せて提供された。
 

ここで少しルーマニアのワインについてのイメージに少し触れてみたい。ジャンシス・ロビンソンの「The Oxford Companion to Wine(以下OWC)」という辞書のような本がある。2006年に出版された第三版と、今年発売された第五版を比べてみると面白い。例えば醸造に関する項目を見比べてみると、第三版ではEUのSAPARD(Special Accession Programme for Agriculture and Rural Development)について触れられ(この辺りのEUの投資などルーマニア全般についてはCaroline Gilby MWの本が詳しい)、古い樽の使用に起因する揮発酸や酸化についてよく見られることが記載されている。一方、最新の第五版では、近代化が進み、醸造的にも正しい方向に進んでおり、そうした欠陥が少なくなっていることが述べられている。
 
Tom Stevensonや著名なMWが各地域の実情をレポートした本「Wine Report 2009」でもブルガリアと共にルーマニアがEUに加盟したことによる法的な問題といったことが述べられている。OWC第五版では、PDOとPDIについての記述が改められており、そうしたEU基準での整備が進んできたことが伺える。
 
ワインの近代化に関しては、特にルーマニアに限ったことではない。では、ルーマニアワインのスタイルや味わい、品種となったときに、ぱっと想像がつくだろうか。これは東欧全般にも言えることだが、品質が向上したとしても、消費者の手に届く範囲にワインがないと認知が進まない。隣国のハンガリーにはトカイという認知度の高い産地があるが、ルーマニアには味わいを含め、想起がし易い産地がまだまだ少ないのが実情だと感じる。
 
しかし、トランシルヴァニアやワラキアといった地域はドラキュラ伝説も相俟ってよく知られているのではないだろうか。また、例えば東京オリンピックに伴い武蔵野市が行っていた「ルーマニアホストタウンムサシノ」のように身近に感じる地域もあっただろう。日本で事業を展開していくためには、こうした消費者のパーセプションの構築やコミュニケーションをどのようにとっていくのかという課題がのしかかってくる。
 
【分かりやすい「初」を冠する商品】
そうした意味で、ワインよりもルーマニア初のシングルモルトウイスキーであるカーパシアン シングル モルト ウイスキーの方が新しくルーマニアを知ってもらうのに適しているように思われる。
 

カーパシアン シングル モルト ウイスキーは、様々な樽でフィニッシュされおり、そのフィニッシュの樽の産地によってラベルの色が異なっている。ルーマニア産の樽では、「FETEASCĂ NEAGRĂ(フェテアスカ・ネアグラ)」と「ピノ・ノワール」でフィニッシュされたものがある。

フランス産だとワインだけでなく「コニャック」樽のフィニッシュ、変わり種だとキプロス産「COMMANDARIA(コマンダリア)」のフィニッシュがある。どのフィニッシュのものも総じて若くアルコール感があるが、スパイス感と中盤以降に感じるドライフラワーやソーピーなニュアンスがある。ルーマニア産ワインのフィニッシュでは赤系フルーツの印象とモルト感が相まって重厚さも感じさせてくれている。
 
ウイスキーは環境の影響も大きい酒類であり、名に冠されたカルパティア山脈の自然が反映されているという。ルーマニア産の大麦を100%使用しており、ノンチルフィルタード、46度で瓶詰される。
 
アレクサンドリオン・グループはグローバル展開をしており、北米、ブラジル、ドバイ・UAEや英国といった主要市場でも販売がされている。そうした中、日本において新たな挑戦を始める同社に注目していきたい。
 
 
【参考文献】
Jancis Robinson ed., The Oxford Companion to Wine 3rd. ed., Oxford University Press, 2006
Julia Harding and Jancis Robinson ed., The Oxford Companion to Wine fifth ed., Oxford University Press, 2023
Tom Stevenson et. al, Wine Report 2009, DK Publishing, 2008
Caroline Gilby MW, The Wines of Bulgaria, Romania and Moldova, Infinite Ideas, 2018

担当:小川大輔

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