店舗内観。レイアウトは一般的な居酒屋形式だが、ネオンカラーを取り入れた照明が近未来的な雰囲気を出しており、中には“映え映え”な写真が撮れるテーブル席もある
CSV経営に定評のある「㈱Pay it Forard」が、フードロス削減や居酒屋業態にサステナブルな仕組みを導入した「マグロスタンダード 錦糸町本店」をオープンした。同店は2022年3月に門前仲町に出店した「マグロスタンダード」ブランド2号店にあたるが、将来的なフランチャイズ展開を視野に、プロットタイプとなる仕様に整え、本店として開業した。
同店では鮪一本をあますところなく食すことをテーマにメニュー開発が行われており、トロや赤身といった王道の部位はもちろんだが、これまで魚の餌につかわれるか廃棄となり市場に流通することがなかったエラブタや腸管、ハツモト、レバー、頬肉といった内蔵などの未利用部位も有効活用している。日々の入荷で部位が変わる鮪のホルモンを使った刺身は肉刺しに匹敵する魅力的な味わいであり、特に生レバーは、牛のレバ刺しが好きなお客さまには、“レバ刺しロス”を埋めてくれる美味しさと満足感があるといっても過言ではない。ちなみに、薬味に使う葱も農家が出荷の際に切り落とす部分を彼らの言い値で購入したり、自社のみならず、協力企業との取引もサスティナブな取り組みとなるよう意識している。
今回、同店を本店とするにあたっては握り寿司のラインナップにも力を入れ、さまざまな種類の熟成魚も用意した。仕込みも魚ごとに最高の仕上がりになる方法選び、生本鮪を除く白身や鯵は究極の血抜きといわれる“津本式”を施し、さらに白身魚には血抜き後に真水の氷水で寝かせることで酵素の力で旨味を引き出す“低温酵素熟成”を導入した。一方、本鮪は敢えて血抜きをせずに低温の冷風をあてながらゆっくりと熟成させ、しっとり感と共に旨味を引き出すようにした。すし飯には日本最古の「尾道造酢㈱」の赤酢を用い、オリジナルの土佐醤油や二度仕込みの刺身醤油、梅を漬けた調味液を加工して作られる“紀州の煎り酒”など、魚の味わいを最大限引き出すべく調味料にもこだわった。これらの仕事とこだわりを用い提供される熟成鮨がリーズナブルな居酒屋価格で食せるのだから、同店を訪れない理由はない。現在はまだ、渋谷や銀座に比べるとインバウンド比率は低い錦糸町だが、同地はスカイツリーや秋葉原も近く、同店がインバウンド人気の高い店舗となる日もそう遠くはないかもしれない。
同社では将来的に同ブランドでの海外進出も視野にいれているといい、鮪との組み合わせが難しいといわれるワインペアリングにも力を入れ、同じくCSV経営に力を入れている「㈱和音人」代表の狩野高光氏にセレクトを依頼し、ワインのラインナップも充実させた。
同社は本年、外食SX主催の「CSVAWARD2023」で最優秀賞を受賞し、武蔵小杉の「KOSUGI Grill Market」では鮮魚店「鈴治」の運営受託も開始した。今後の活躍が非常に楽しみだ。
「マグロスタンダード」
https://maguro-standard-kinshicho.com/
担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp