今回の新型コロナウイルス感染症の猛威による世界的被害は依然甚大な状況であり、2020 年5 月25 日時点の全世界感染者数で530 万人、同死亡者数で34 万人となっています(厚生労働省資料)。東京都内を見ますと感染経路が不明という患者数が約4 割と言われています。仮にこの新型コロナウイルス感染症が将来に収束したとしても、この見えない敵に対する今回の恐怖心は、局地的なものではなく全世界規模で、人々の心に刻まれたはずです。また今回は収束したとしても、新たなウイルスが発現する恐怖や今回のウイルスが変化し存続する可能性等を考えますと、ウイルスという見えない敵に対する脅威は今後も長く続くかもしれません。
そのように考えますと、将来にホテル市場が回復したとしても、すでに20 年3 月までのホテルマーケットと、20 年3 月以降のホテルマーケットでは、まったく別の市場に変化したものととらえるべきかもしれません。以下では、これまでの市場を旧ホテルマーケット、今後の市場を新ホテルマーケットと称することとします。新ホテルマーケットに対応していくためには、将来のホテル市場回復期に備えて、早急にこの新ホテルマーケットにおける新たな顧客ニーズや嗜好(しこう)、感情、態度形成を把握する必要があります。
北村剛史
Takeshi Kitamura
(株)日本ホテルアプレイザル 取締役/(株)サクラクオリティマネジメント 代表取締役/(一社)観光品質認証協会 統括理事不動産鑑定士、MAI(米国不動産鑑定士)、FRICS(英国ロイヤル・チャータード・サベイヤーズ協会フェロー)、CRE(米国不動産カウンセラー)慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である(株)日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事