例えば、通常の商品や製品では、事前に詳細情報を得ていることから、おおむね事前に正確な期待値を持っていることになります。そのような場合に、「他人に推薦」するほど高評価を感じてもらうためには、事前の期待値を「超えて」印象や評価が良い必要があるはずです。一方でホテル業等のサービス業では、正確で利用可能な事前情報が限られていることから、事前期待値も精緻ではありません。事前情報が不十分であるような場合、人は「好き」「嫌い」等の「態度」を明確かつ容易に形成することが困難となります。そのような場合には、実際に現地で体験する中でさまざまな重要シーンに対する事前期待値を無意識レベルでスムーズに形成できる環境であるのか否かが、ホテルにとって望ましい顧客態度形成の鍵を握ります。
まず、通常の商品やサービスのようにある程度正確な事前期待を得ている場合、他者に推薦しようと思う場合はどのような消費体験が伴う場合か見てみます(全国男女200 名に対するインターネットアンケート調査、2020 年弊社実施、その他調査結果も同様)。
事前情報の通りに、実際にも良かった場合は合計74.5%が程度に差があったとしても、他者に推薦したいと感じています。一方で、正確な情報があるような商品や製品の場合、事前に期待していない(つまり事前期待を超えて)良かった場合では、合計80%の人が他者に推薦したいと感じています。
ここで「事前に期待していないのに」とは、通常の商品や製品の場合にはある程度、正確な事前情報が利用可能であろうことから、事前期待も正確に形成されているはずです。そのような場合では、その「事前期待を超えて良かった場合」と言い換えて解釈することができます。事前情報が正確であることから、特にその期待を「超える」ことで、一層強く他者に推薦したいと感じる人が増えるのでしょう。