インターネットがホテルの集客にとって欠かせないツールとなった現在。このシリーズではグーグル日本法人の協力のもと、いかにしてこのツールを有効活用し、マーケティング戦略を立案していくべきなのかを研究していく。初回は、ホテル業界にとってのインターネットの重要性について改めて考えてみる。
グーグル日本法人 広告営業本部 旅行業界担当
統括部長 松濤徹氏
インターネットの普及で
旅行者の情報行動が激変
デジタル端末とインターネットの世界的な普及が、経済の仕組みやわれわれの消費行動を激変させた。その中でも大きく影響を受けたマーケットの一つが旅行業界だろう。このシリーズではグーグル日本法人に協力いただき、インターネットマーケティングの最新動向と活用方法を指南していただく。
グーグルの広告営業本部で旅行業界を担当する松濤徹統括部長は、まずインターネット活用の重要性について次のように話す。
「この瞬間にも60 秒間に約300 万回の検索が行なわれています。ユーザーが旅行を計画する際、84% の人がインターネットを利用し、さらに55% がインターネットで宿泊予約しているとの調査結果もあります。こうしたデータからもインターネットを前向きに活用する必要があることが理解いただけるはずです。“すでにネット予約が大半を占めているから充分活用できている”と考える方もいるかもしれませんが、それはインターネット活用の一部です」。
それではここで、旅行者の行動サイクルを考えてみよう。まず「旅への興味」から始まり「情報収集」、「計画・予約」を行なう。次に実際に旅に出て「目的地」を楽しみ、帰ってからは「旅行後」の情報発信をする。いまやこうした一連の行動の多くにインターネットが深く関与しているという現実がある。
「普通はまず“計画・予約”の部分に関心が集中しがちですが、インターネットマーケティング=予約ツールの提供だけでなく、予約する前の旅行について調べるところから、実際に旅行しその体験について発信するというユーザーが旅行する際の行動を分析すれば、さらなる集客のチャンスを見いだすことができるでしょう」(松濤氏)。
Googleトレンドで
自ホテルの強みを知る
インターネットを活用して自ホテルを効果的に情報発信していくためには、まず自らの強みや立ち位置を知ることが先決だろう。
Google には「Googleトレンド」という分析ツールがあるので、ぜひこれを活用したい。例えば、自ホテル周辺の観光地をこのツールを使ってトレンド検索すると、「人気度の動向」「地域別人気度」「関連キーワード」が表示される。
「人気度の動向」では折れ線グラフで月別の推移が表示され、今後の予測も知ることができる。さらに「ニュースのヘッドライン」機能を併せて使えば、検索が上昇したときにどのような自ホテルに関連するトピックがあったのかも表示されるので、プランやイベントの効果検証の参考にもなる。
また、「地域別人気度」では国別、都市別の検索ボリュームを表示。どのエリアの人たちが高い感心を寄せているかが分かる。
そのほかGoogleトレンドで旬な話題をつかみ、プランやイベントに盛り込むことで集客アップに結びつけることも可能だ。例えば「パンケーキ」というワードで検索すると注目されて始めているのか、ピークを過ぎたのかなども一目瞭然。ぜひ有効に使って、ネットユーザーの琴線に触れる施策を考えたいところだ。
「インターネットにおいて大切なことは、情報の新鮮さです。それはホテルのホームページやプランにも言えます。所在地や基本情報は問題ないが、トピックスなどのコーナーを設けても最終更新日から1年以上も放置するようなことは避けましょう。ただ、毎日の業務に忙しいと思いますので、SNS などを活用して自社情報を発信したり、旅行に来てくださったお客さまの力を借りるのも一案ですね」。
インターネットには、ホテルの集客や売り上げを改善するためのさまざまな機能やツールが存在するので、できるところから活用していって欲しいと松濤氏は話す。IT が得意不得意に関わらず、情報強者が結果を得る時代へと突入しているのだ。次号からはそれぞれのツールと活用方法を取り上げていく。