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第7 回 Part1 中村勝宏プレゼンツ ~美味探求~  第7 回 Part1 

日本ホテル株式会社 特別顧問統括名誉総料理長 中村勝宏氏 ×  株式会社佐藤総合計画 代表取締役社長 細田雅春氏

【月刊HOTERES 2018年10月号】
2018年10月19日(金)
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中村 その先生との出会いというものが、今にしてとても大切なものになるわけですね。
 
細田 そうです、出会いですね。たぶんその先生がいなかったら、私はもう一度物理を受けて、物理の道に進んでいたかもしれません。そんな迷いがありました。
 
中村 私にとって建築というのは、すごく難しくとても立派な職業というように捉えております。また、私自身が無知なものですから正直に申し上げ、今日の先生との対談は少々不安に思っております。
 
細田 いやぁそんなに難しいことはありません。日本の場合、建築というのは理工系の工学部に属しています。ですが、ヨーロッパやアメリカの建築は、理数系の要素もあるが、どちらかと言えば文化的な要素が多く含まれています。あるいはアートの世界。アートの学校の中に建築というのが入っていたりもします。日本の場合は昔から建築家といえば理科系という感じなんですよ。学校に入ると構造力学とか物理とかを勉強するんですが、私の経験から言うと、建築について学ぶときは、もっと文化系の勉強をしておいた方がいいなという感じはしますね。
 
中村 文化系に建築の要素があるということに何かとても深いものが感じられます。私は26 のときにフランスに向かったのですが、向こうに着いてまず圧倒されたのは、石造りの建物です。もちろん東京にも石の建物はありますが、日本は木造の建物が主流だったため、まず石というのに圧倒されました。そういうところの違いというのは西洋と日本とであるんでしょうね。
 
細田 そうですね。日本の文学者や作家の方は、ヨーロッパに留学する人が多かったのですが、いま中村さんのおっしゃった石造りというものに精神を圧倒された、という記録があり、私も読んでいます。日本の建築というのはどちらかというと木造で、非常に隙間だらけというか、風通しの良いというか、そういう物なんです。まさに建築が風土との関係で成り立っているということですね。一方、ヨーロッパの建築というのは閉じて要塞のような建築です。ですから、その辺りの違いというのは歴史とか文化、風土という物と深く関係していると感じています。料理の世界とも共通するようなところがあるのではないかと思います。
 
中村 そうですね、料理も基本的にはその風土というものが根底にあると思います。当然様々な文化ともつながっていくものでしょうが、ここでせっかくですから食と建築について日頃先生が感じておられることを少しお話ししていただければと思います。
 
細田 衣食住というものがありますが、なぜ住が一番最後で、その前に衣食があるのかと疑問に思っていたことがあります。これは誰かから教えていただいたわけでも、示唆をしていただいたわけでもないんですが、食べ物を食べなくては死んでしまうし、洋服も暑さ寒さを調節するのに必要、住も外敵から安全を守るために必要です。ただ、それは本当は根本的な話で、人間が社会的要素を持ってくると、むしろ社会的、精神的な役割が強くなると思っています。例えば衣服だと、職階によって着るものや素材が変わってきます。食も階層によって口にする物が異なる。住居というのもまさにそういうことで、社会的な秩序を作るということで、単に雨風を防ぐと言うことだけじゃない。それ以上に社会的、精神的なものが重要なんじゃないかと考えています。私も愛読したフランスの人文学者、アンドレ・ルロワ=グーランの著書にもありますが、社会的な体系の中で一つの秩序を作るという役割、これは衣食住の全てに共通して言えるのではないかと思います。機能的なものと象徴というものが深い関係にあるので、それが食に関心をもった一番の理由です。
 
 80 年代に「バベットの晩餐会」というデンマークの映画がありました。料理は人の心を変えるんだということを表現した素晴らしい映画で、私はこれを見たときに、料理の持っている力を感じました。デンマークの片田舎の非常に貧しい村の話なんですが、料理によってみんなが幸せになる。最後はハレルヤコーラスを歌って賑やかに終わるというのは本当に素晴らしいなと思って。そういう物と建築の空間デザインというのは、共通する部分が非常に大きいと思っております。なので、料理に対する関心というのも、非常に高くなっていったという感じですね。妻も料理の世界をやっているものですから(笑)
 
 そういうことで、料理と建築というのは、何か繋がっている部分が多いなと思っています。さらに、建築家というのは料理に関心のある人が多いんですよね。
 
中村 いやぁとてもありがたいお話です。そのおかげで本日こうして細田先生との対談ができる幸運に恵まれ、とても感謝しております。先程の「バベットの晩餐会」のことですが、映画に出てくる料理を東京のある有名ホテルがそっくりつくって晩餐会を行ない話題となりましたね。少し話が変わりますが、私は1971 年にパリにたどり着きました。フランスで働いてみますと、各地に素晴らしいオーナーシェフがおられます。そういう方たちが、お店をリニューアルされるときにまず、心されることはお客さまに見せられる厨房を考え、そういうお店づくりがどんどん増えていきました。厨房を立派にして、お客さまに見てもらうことで安心が感じられ、楽しく食事をすることができます。今もその風潮はますます加速しております。

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