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第79 回 Wプロフェッショナルズ  求められる人材を探る  第79 回  ㈱ポアール 辻井 良樹 氏 ×  ㈱フェイス 福永 有利子 氏

“お客さまの美味しい笑顔のために” 1969年より本物にこだわる お菓子を提供

【月刊HOTERES 2017年06月号】
2017年06月09日(金)
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福永 お父さまの意を受け継ぎ、辻井社長は2 代目としてどのように修行されてこられたのですか。
 
辻井 小学校、中学校ときあまり成績が良くなく悩んでいるときに、今後、日本における国際化が進む中で英語を学びなさいということから中学校卒業後、高校はアメリカにて過ごしました。もちろん、英語ができませんでしたが、勉強はできずとも好かれる努力をしていましたね。いろいろな方と出会う中で何とかぎりぎりで救われ高校を卒業し、大学に進学したものの勉強もはかどらず、このままではいけないと大学を中退して帰国しました。その後、東京・八王子で厳しい修行を受け、大阪に帰りました。しかし、実家には父とともに創業時代を経験してきた先輩たちがいらっしゃいましたので、2 代目となる自分に対してとても厳しかったですね。そこで20 歳のときにヨーロッパに修行に出ました。スイスの有名なパティスリーやブーランジュリーなどで技術を身につけ、休みの日にはお菓子の食べ歩きをして、各地の味を学びました。現地で食べて美味しいと感じたお店にお願いして短期で働かせてもらうこともありました。逆に現地でポアールのお菓子を作ってみたところ、西洋人に衝撃的だったようで、その技を学びたいとスイスやフランスのパティシエたちがポアールで研修を受けにくるようになったのです。帰国後、リッツ・カールトン・大阪のオープンのとき、ケーキやショコラの一部を担当することになりました。
 
福永 そして帰国されポアールにおけるパティシエ時代がスタートするのですね。
 
辻井 20 代後半で実家に戻り、開発部主任となりました。ヨーロッパで学んできたこと、見てきたこと、規模感など日本にはないもの、日本にはない新しいものの考え方を注入し、生チョコレートやシャンパンショコラなど新たな商品づくりを行ないました。諸先輩たちがいる中で、海外で学んだ語学力を先輩たちよりも優位な立場を背景に開発に取り組みました。一つ一つていねいな仕事をすることを大切に取り組んでいました。やがて新店舗のオープンに当たり、マネージャーのポジションとなり背中の姿を見ていた先輩たちの上に立つことになります。当然のことながら技術的、経験値からすれば先輩たちは認めてくれません。まさに総すかんという状況でした。この状況を打破するために、お弁当を買ってきたりなど機嫌取りなどをしましたね。昔から人に好かれることをすることをしてきましたので、皆が気持ちよく働けるようにすることに苦なくできたのです。そして父が倒れ、私が2 代目としてポアールを指揮することになったのです。
 
福永 2 代目誕生ですね。しかしながら、お父様についてきたパティシエの方々にとっては、2 代目とはいえ、まだお若い辻井社長をトップとして、すぐに受け入れない先輩方も中にはいらっしゃったのではないすか。
 
辻井 おっしゃる通りです。皆の前にあいさつをしたときに“信用でけへん”という声が上がりました。そのとき“信用でけへんのであればついてこなくていい”と言いきりました。社長として経営に携わるには覚悟が必要であるということを自身に言い聞かせるとともに、皆にも理解していただくために発したのです。結果的に徐々に私自身の動きを見て理解者が増え、結果的には皆、辞めることなく今も勤めていただいている方もいらっしゃいます。2代目としてこれまで守り続けてきた本物へのこだわりや、お客さまの期待を心地よく裏切るというお菓子づくりの継承はもちろんのこと、ケーキ屋という家業から企業に成長させていくことを使命に若手スタッフの育成においての規制を設けました。1つは怒鳴ることを禁止しました。どうしても職人の世界は怒鳴って教えていくという風潮が今も残っていますが、今は怒鳴っても成長することはありません。怒鳴るほどに気持ちが沈んでしまします。また使い走り的に下の者を振り回すことも禁止しました。自分の仕事のために振り回していてはパティシエとして成長していくことはできません。一方的な行動を押し付けず、お互いにキャッチボールができる空気感を作り出していくことが大切だからです。会社を守るために技術力、忍耐力、観察力は欠かせません。私たちが求めているお客さまの笑顔のために、皆が熱い思いで働き、その気持ちがより期待を心地よく裏切るお菓子を作り出すからです。とにかく本物にこだわること、常に新たなお菓子やケーキを開発し、楽しんでいただけるために全力を尽くすことです。
 
福永 お互いのキャッチボールはコミュニケーションを高めていくためには大切なことです。そこから生まれる空気感が職場改善へとつながるのです。技術職が強い職場だけに、上手くできず心が折れてしまう新人を育成していくためには、今後ますます求められることですね。
 
辻井 毎月、常に新商品を開発し販売しています。2 品のときもありますし、4品出来上がるときもあります。例えばケーキ屋さんが考えるプリンアラモードとして、プリンアラモードにショートケーキをアレンジしてみたり、トマトを使ったケーキを開発したりなど、常にチャレンジしています。抹茶のチョコレートはお茶屋さんがうなるチョコレートを作り出したいという思いで挑戦しました。常に本物であり続けていくことがポアールの生命線だからです。お茶屋さんをうならせるためには抹茶のことを学ばなければなりません。京都の祇園に行き、抹茶のストーリーをお聞きするほどに、何とか作り出してみたいという思いが強くなりましたね。最終的に家元の許可を得て、家元から勧められた1 キロ15 万円のお茶を使ったチョコレートを開発しました。抹茶の持つ渋みとえぐみをうまく融合させた味を作り上げることができました。チョコレートを包む箱にもこだわりました。“さすがポアール”という評価をお茶屋さんからいただいた次第です。コービーや紅茶など、カフェにてご提供しているものすべてにこだわりを持って取り組んでいます。このほか、ハチミツ専門店やカプコンの人気ゲームをモチーフとしたお菓子や特別なオーダーメイド商品づくりを通して、若手の育成やコミュニケーション力を活発にするとともに、スタッフとともに愛情がぎっしり詰まったお菓子を作り続けていきます。舌だけではなく心でも美味しいと感じていただけたらこんなにうれしいことはありません。
 
福永 辻井社長のお菓子作りへの情熱と思いが伝わってまいりました。2 代目、そして3 代目へ何十年、何百年、いつまでも愛される『ポアール』であることを願っております。本日はありがとうございました。
 

㈱ポアール
代表取締役社長 グランシェフ
辻井 良樹
1970 年大阪府生まれ。こだわり:情熱、前向き。趣味:食べ歩き、お笑い、CM 鑑賞、車、家電、サザンオールスターズ。特技:すぐ寝、すぐ起きれる。休日の過ごし方:美味しい物を食べ、子どもと全力で遊ぶ。座右の銘:「我以外皆師」。心に残る本:『自分を高め会社を動かす99 の鉄則』新将命。尊敬できる人:両親、前向きな刺激を与えてくれる人。現在の仕事の魅力と苦労:人をプラスにしてくれるスイーツ。人に喜んでいただける職業ですので、これ以上の魅力はありません。ただ、提供する側がまず先に楽しみ、自己満足できるものを生み出す…これが難しいところです。日本を背負う若者へのメッセージ:何事も思いきり楽しむ事ができる人になって欲しいです。今も昔も変わらないことは人と人とのつながりです。いろんな誤解や難しい事があるかもしれませんが、そんな状況やまわりの人たちこそが自分を高めてくれます。辛い時、弱い時こそ本当の自分に出会え、その時こそ自分を高めるチャンスです!大変な時は周囲のサポートに気付き、素直に感謝できる人になってほしいですね。
 

㈱フェイス 代表取締役
福永 有利子
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003年にウエディングプランナー養成スクール講師をはじめ、06年より大学にて非常勤講師として教壇に立ち、現在も教鞭を執っている。06年堂島ホテル婚礼部長に就任、その後08年同ホテル副総支配人に昇任。09年には㈱フェイスを設立し、代表取締役に就任。現在は、ホテル・ゲストハウスを主に成約率向上を目的としたトレーニングや集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、ウエディング全般にわたる支援を行なっている。著書・ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や! 悩める管理職のアメムチ19の育成術
              

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