日本を代表するリゾートである沖縄を世界に向けて発信できるホテルになりたい
「オリオンホテル 那覇」を 2023 年 11 月に、「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」を 2024 年 4 月にリニューアルオープンしたオリオンホテル㈱は、沖縄を象徴するオリオンビール㈱のグループ企業として、観光・ホテル事業を通じて地元の発展に貢献する使命を果たしていく。両ホテルの前身であるホテルロイヤルオリオン、ホテル オリオン モトブ リゾート&スパの時代よりも、オリオンビールのカラーを色濃く反映したスタイルを追求することで、沖縄の魅力を多くの人々に伝えようとしているオリオンホテル。その核心に迫るため、代表取締役社長(当時)の柳内和子氏にインタビューした。
※本号の取材は2024年5月15日に実施されたものです
オリオンビールがホテルを運営受託すると差別化された魅力を伝えることができる
----オリオンビールが展開するホテルとして、どのような要素が求められると考えますか。
柳内 オリオンビールは沖縄を活性化することを主軸に置く企業ですから、オリオンホテルがあることでより多くの観光客が沖縄を訪れるようになり、結果として地元が潤っていくという好循環を生み出す使命を担っています。その流れを作るためにも全面的にオリオンビールのブランドを使った差別化により、新たな地域活性の道を生み出したいと考えています。
オリオンビールだけが良ければいい、という発想はまったくなく、オリオンホテルの存在が沖縄全体を元気にするための方法を追求するために、本格的に観光業に取り組むという決断をしたのです。
将来にわたりオリオンホテルの軒数を増やしていくためにも、現在の 2 拠点をオリオンビールのホテルとして認知していただくための取り組みを進めることになります。オリオンビールがホテルを運営受託すると差別化された魅力を伝えることができると、皆さまに感じていただけるものを示す必要があります。
飲料とペアリングできる料理を仕上げFB を極めたホテルとして差別化したい
----差別化された魅力を打ち出すための要素はどこにありますか。
柳内 これまで多くのホテルは宿泊に目を向けていたと感じていますが、オリオンビールは飲料ですから FB に特化した展開を差別化ポイントとして打ち出そうと思います。
ビールはもちろん、オリオンビールのチューハイや新たに製造を手がけたフルーツワイン、グループ会社の泡盛メーカー「石川酒造場」の泡盛など、豊富な飲料のラインアップとのペアリングを楽しめる料理を仕上げて、FB を極めることでオリオンホテルらしさにつなげたいと考えています。沖縄の食材の素晴らしさをお客さまに感じてもらうことは、沖縄に対する貢献にもなるでしょう。
また、たとえばオリオンホテル 那覇は、若い方たちにリピートしていただけるカジュアルさを兼ね備えた施設になるために、オリオンホテル モトブ リゾート&スパは、北部の観光拠点に最適なリゾートホテルとしてなど、沖縄に来る目的を明確に提示し、提案する取り組みも進めます。開業直後の慌ただしさから抜けた 2025 年からは、県外の方々に沖縄へ目を向けていただくための情報発信をするイベントにも力を入れたいと思います。
----人材不足の問題について、どのような解決策を打ち出していきますか。
柳内 リニューアルオープンにあたり、人材確保のために従業員の待遇を見直しました。たとえば東京の方が沖縄で働きたいと思っていただけるように、随時その給与水準を県外のレベルに合わせていく必要があります。
また、人材不足の解消に向けて取り組まなければならないのは外国人の雇用です。オリオンホテルではベトナムから技能実習生を迎え入れるために、現地に出向いて採用面接を直接行っています。彼らに沖縄で働いていただくためには、日本人の従業員と変わらないレベルの住環境を用意するとともに、日本人と同じ給与体系に基づいた雇用を実現しなければならないと考えています。
「地元に根差す」の意味を理解した上で動けるホテルマンを目指してほしい
----経営者としてオリオンホテルで実現したいことを教えてください。
柳内 私は、もともとホテルは沖縄に大きく貢献できる存在だと思っていました。そしてホテルを展開するのが地元の企業であればその強みをさらに打ち出せると考えています。
沖縄の地元企業が展開するオリオンホテルで働くためには、県外や海外から来た方であっても「沖縄が好き」という要素が必須です。従業員1人1人がどれだけ沖縄の魅力を発信して、地域貢献できるかが重要なポイントとなるからです。ですから自分の好きな沖縄の情報発信をすることに興味がある方たちに、オリオンホテルに集まってほしいと願っています。
そして地元の方たちの土地を使わせていただき事業活動に取り組ませもらえる環境に感謝しながら、好循環を生み出していくのが理想的なホテルのあり方だと思います。「地元に根差す」という言葉の意味を理解した上で動くホテルマンを目指してほしいのです。
そうした動きを続けることで、どこに移ってもその地域の素晴らしさを見つけられるノウハウを身に付けられるので、将来的にはどの国でも活躍できるホテルマンに成長できるはずです。
どれだけの数の方々がホテルに興味を持って働いてくださるかは、ホテルの楽しさを最も知っている私たちの世代が次世代に伝えていけるかにかかっています。
洗練された職業としてホテルマンを見て、「自分もホテルマンになりたい」ともう一度思ってもらうための取り組みを進めることを自分自身の使命としながら、私も日本を代表するリゾートである沖縄を世界に向けて発信できるようになりたいと思います。オリオンホテルを通じて、多くのホテルマンが育つ環境づくりに貢献していきます。
柳内 和子氏
「メルキュールホテル成田」営業部長を経て、2004 年に㈱グリーンホスピタリティーマネジメントに入社。同社傘下のホテルラングウッドのホテル支配人、本社セールス&マーケティング部担当執行役員として傘下の複数のホテルの開業準備等、運営と経営の双方に携わり、2015 年サザンビーチホテル&リゾート沖縄総支配人を経て、本社常務執行役員に就任。2021 年オリオンビール㈱常務執行役員ホテル事業部長として入社し、㈱ホテルロイヤルオリオン、㈱ホテルオリオンモトブの代表取締役社長(当時)に就任。