前回は、ホテルの賃貸契約締結時における資産区分に関し、オーナー側の所有資産となるものとテナント側の所有資産になるもの、つまり甲(貸主)乙(借主)区分の在り方について、実際の契約書を参考に整理し、その資産区分の傾向をご紹介しました。今回は、さまざまな資産に対し修繕を行なう場合に甲(貸主)乙(借主)のいずれが責任を負うのかという修繕および管理区分やその他論点を整理してみたいと思います。
修繕区分について:修繕区分については、維持管理に関する項目については賃借人が負担し、更新工事のうち建物の躯体や附合物にかかわるものは賃貸人が負担する傾向が多く見受けられます。また、更新区分は資産区分に合致することが多いものの、日常修繕や管理項目については契約によって差異が見られます。さらに、維持管理や更新工事に関する負担区分は別途区分表を添付する場合と添付しない場合があり、また更新と維持管理を厳密に区別する場合と区別しない場合に分かれます。短期的にはそれ程大きな問題が生じることは少ないでしょうが、長期的に細かな修繕、更新工事が生じるケースを前提とすると、建物管理をスムーズに行なうためにも明確に修繕区分表を設けるとともに、更新工事と日常修繕や管理項目とに分けて丁寧に責任範ちゅうを明確化しておく必要があると言えます。
原状回復義務に関する規定について:
第196回
北村剛史の『新しい視点 「ホテルの価値」向上理論 〜ホテルのシステム思考〜』
第196 回『ホテルの賃貸借契約条件(修繕管理区分他そのほか論点)』
【月刊HOTERES 2015年11月号】
2015年11月20日(金)