足元は厳しくも日本の旅行市場の未来は明るい
新型コロナウィルスの影響でホテル業界はかつてないほどの大打撃を受けた。「生き残る」ことが何よりも最優先ではあるが、日本が世界でも魅力的なデスティネーションであることは変わらないし、むしろこの新型コロナウィルスを経て、さらにその地位を上げたと考えることもできる。
新型コロナウィルスはホテルビジネスに大打撃
これはもう細かに語る必要すらないことだが、新型コロナウィルス(以下「コロナ」)はホテル業界に大打撃を与えた。筆者が執筆をしている12 月16 日時点で過去最多の678 人の新規感染者が出たと報じられており、感染拡大の勢いは止まっていない。
2 月にダイヤモンドプリンセス号の問題が世間の耳目を集めていたときも、まさかこのコロナがこれほどまでに長引くと予想できた人はどれだけいただろうか。「ゴールデンウィークには収まるのではないか」、「東京五輪は開催されるであろう」といった見方が当時は一般的ではなかったかと記憶している。ところが、その勢いはとどまることなく感染は拡大。3月以降日本全国でホテルパフォーマンスは下落し、まさに未曾有の経験をすることとなった。図表1 は昨年1 月以降の主要都市のRevPAR の落ち込み度を表にしたもの。5 月は全エリアで対前年比90%以上の減少となるなど、かつてない需要の減少を経験した。これは宿泊だけに限った話ではない。感染拡大初期は宿泊だけでなくレストラン、宴会、婚礼などすべての需要がまさに“ 蒸発” した。その後都市部を中心にレストラン需要は戻りつつあるようだが、ホテル全体の落ち込みを穴埋めするにはいたらない。
生き残ることが出来なければ何も始まらない
そのような状況の中で、いくつかのホテル企業が倒産するというニュースも流れた。ただし、その多くはコロナ関係なく以前より事業の継続性を疑う声が聞かれた企業であった。2019 年以降のホテル市場の供給過剰の中で、高い建築費、それに伴う高い賃料が根本的な原因であり、コロナはあくまできっかけでしかなかった。
ほかの企業はどうか。Go To トラベルキャンペーンや雇用調整助成金、コロナに関する緊急融資など政府主導の施策は、運営や告知の点で課題はあったにせよ宿泊事業者にとってこの厳しい環境下では非常にありがたいものであった。しかし、コロナが長期化すればその支援だけに依存している施設は淘汰されかねない。自社の財務状況を鑑み、生き残り施策をどこまで講じることができるかは今後において非常に重要な点だ。業界を俯瞰するに比較的事業実績の長い企業ほど賃料契約が固定であったりと厳しく、足下でのキャッシュアウト額が大きい。遠くない未来に業界の有名企業が倒産、もしくは金融機関管理の下再生といったことがあってもおかしくはない状況となっている。何よりも、生き残ること。
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本記事は2021年1月8・15日号特集の一部紹介記事です。
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