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2020年9月4日号 トップインタビュー 株式会社マグナ.リゾート 代表取締役社長 條 勇二郎 氏

トップインタビュー 株式会社マグナ.リゾート 代表取締役社長 條 勇二郎 氏

【月刊HOTERES 2020年09月号】
2020年09月03日(木)
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自社独自のCPI に基づくデータ分析で顧客満足度の向上を追求

---まず「マグナ. リゾート」のこれまでの背景と理念についてお話しいただけますでしょうか。

弊社はホテル運営事業と会員権事業によって構成されています。ホテル施設を利用する目的で会員になっていただいている会員制ホテル「浜名湖レークサイドプラザ(客室数239 室)(以下レークサイド)」がオープンした1986 年が全ての始まりで、その後、三ケ日天然温泉、ドッグホテル「カフェ&ラン」、バイキングレストラン、自営ファミリーレストラン、屋外プール、テニス、そして今回の「KIARAリゾート&スパ浜名湖(客室数40 室)(以下KIARA リゾート)」と、会員さまの声に応えてさまざまな施設の拡充を図ってまいりました。私は79 年から系列会社で会員権の販売を行なう営業畑におりましたが、突然オーナーから「会員制ホテルという商品を理解する意味でも、総支配人をしてスキルアップしてこい」と、99 ~ 02 年まで「レークサイド」の総支配人を務めました。全くの未経験でしたが、会員営業として顧客の気持ちはよく分かりましたので、その日から今日まで、とにかく愛されるホテルを目指し、顧客目線を第一にサービス向上と商品開発に取り組んでまいりました。

ただ、顧客第一主義とはいってもなかなか伝わりにくい部分も多く、ご満足いただけなかった悔しい経験もありました。そういった中で考えた取り組みが「私どものサービスにお客さまがどういった反応を示されたか」、というデータを蓄積することです。いわゆる顧客業績評価指標、弊社独自のCPI、これを有効活用することで、お客さまの価値観と顧客満足度をあげていこうと。ご満足いただいた方の次の行動は、ご友人を紹介いただけるなど、私たちにとって感謝すべき行動へとつながっていきます。データを積み重ねれば、必然的に業績にプラスされていきます。一方的ではなく、お客さまが「あったらいいな」と求められる付加価値の高いサービスを提供できるからこそ、その結果としても入会いただき、ご満足いただいていると思っています。これは弊社の強みであり利益の源でもあります。

この度グランドオープンを迎えるKIARA リゾートは、会員制ホテル事業40 余年の集大成となるものです。このブランディングにおいても、その原点となる「好き」「愛着」を得ることを目的としたプロジェクトの完成形とも言えます。ホテル運営に関しては、現状をとらえ、アフターコロナを見据え私どもの強みを発揮することで、想定外の事態にも対応できる組織づくりと、企業存続を使命として、苦難のときであっても感謝の心と未来を信じて行動してまいります。

---新規の会員も右肩上がりに増えていらっしゃる。

KIARA リゾートのグランドオープンを待って、会員入会を具体的に検討したいと考えていらっしゃったお客さまも多かったことから、おかげさまで毎月多くのご成約をいただいております。また、ご高齢などでお子さまに継承される方もいらっしゃいますが、入会から20 ~ 30 年と永年にわたり会員として当ホテルをご愛顧いただいている会員さまにおかれましては、わが子の成長と同じように当ホテルの発展に期待していただいていたものと感謝しております。当ホテルのファンとも言える会員の皆さまの期待を裏切らないように、現在のコロナ禍においても着実に成長できる企業としてまず足元をかため、会員制システムの強みを活かしてまいります。現在、弊社が手掛けているのは、「レークサイド」と「KIARA リゾート」「伊豆高原サイレントヒルズ」の3 カ所ですが、コロナ禍における今後の10 年は、より慎重に、そして「計画的に利用施設を増やし顧客会員の皆さまに喜んでいただく」会員制ホテルの存続を使命と考えます。そして「浜名湖を基盤にしっかりと地元に根付いた企業として成長させる」この二つが重要だと考えております。

災害や不況を乗り越え10 年より理想の姿とサービスへ

---「KIARAリゾート」は10 年来のプロジェクトとお伺いしました。

オープンは3 期に分かれており、今年は2010 年の第1 期オープンからちょうど10 年になります。私は「レークサイド」がオープンした1986 年から丸35 年携わっていますが、この10 年の間には本当にさまざまなことがありました。2 期の工事スタート直前で東日本大震災が起こり、当初は3 期まで6 年で完成する計画でしたが、全国の経済が消沈する中、工事を約3 年中断せざるをえませんでした。この間、会員の皆さまには多大な心配とご迷惑をおかけしたことを心よりお詫びいたした次第です。しかし、そこで立ち止まってじっくり構想を練り直せたのは、良かったところもあったと感じています。実は当初の計画では客室が80 室、レストラン3 カ所、温水プールを予定しており、シンメトリーの美しさを強調した建物を計画しておりました。素晴らしい計画ではありましたが、開発資金もそれなりに必要でした。計画を全て見直すことは大きな決断となりましたが、時代と環境に配慮した経営効率の良いスモールラグジュアリーホテルへと計画変更いたしました。そしてレークサイドとのバランスを考え、客室40 室、レストラン2 カ所となり、結果的にシンプルな庭園を備え、自然をうまく取り入れた設計にできたと感じています。

グランドオープンである今年はコロナ禍で大変な年になり…竣工の式典の際は、胸が熱くなりました。そしてその期間をともに待ち続けていただいた多くのお客さまには、本当に感謝しています。紆余曲折(うよきょくせつ)を経て誕生した「KIARA」とは、“ 心地よい波と風” を意味する言葉で、「この雄大な風景に溶け込んだ、自然を生かした作りは、「波に抱かれて風になる」というホテルのメインコンセプトにもつながっています。また新レストラン「FOS」はギリシャ語で「光り輝く」の意味であり、グランドオープンとなる完成形イメージコンセプトは「波に抱かれて風になる。青空に光り輝く」建物となります。「KIARA リゾート」の完成、グランドオープンにあたりこのプロジェクトに参画いただいた社員の皆さん、そしてご協力いただいたお取引企業さまには、心より感謝申し上げます。

“ アンチ” より“ ウェル”健康に美しく歳を重ねる

---さきほど自社独自のCPI の結果から、お客さまの求めるものを追求するというお
話がありましたが、その結果として誕生したのが「KIARAリゾート」だということでしょうか。

私はどのような時代でも、お客さまのニーズがどれだけ多様化しても、本物を求める志向に変わりはないと思います。「KIARA リゾート」の利用価値、付加価値においても、そのコンセプトはお客さまご自身と、ご家族への「幸せの投資」だと提案させていただいいております。そしてお客さまの求めるものと私たちの提案を具現化したのが、ホテルのコンセプトにもある「Well Aging」です。加齢にあらがわず、健康的に美しく年齢を重ねることを楽しみましょうという意味で、アンチエイジングよりもウェルエイジング。加齢を受け入れてプラスに展開しようという考え方です。そしてそれに基づいて用意したのが、「Well A」という、心と身体、健康と美を追求するプログラムです。東洋医学の概念を軸に心身のバランスを根本から変えていく「浜名湖養生」や、クラブドクターによる健康セミナーの開催など、さまざまなアクティビティーを用意しています。


---旅行というよりはくつろぎ、心身共に健康になる場所だと。

これは営業戦略的な部分でもあるのですが、弊社の会員さまは、東海4 県で90%を占める地域密着型で、お客さまにとっても旅行先というよりは息抜きに出かけるセカンドハウス、第二のわが家というイメージが強いです。自宅から1、2 時間で気楽に行ける場所で、自宅と違う環境で過ごすことがやはり「WellAging」の一つですね。実際、認知症や老化の防止になるという学説もあるようです。「Well A」には、無病をテーマとする「日本統合医療学会」に参加されているドクターの皆さまのご意見も取り入れています。その中には、フィットネスルームでの運動や、ホテルではおそらく日本初の「ORION バイオスキャン」と高気圧酸素カプセルを利用した予防医学を取り入れた健康チェックなども含まれます。「ORIONバイオスキャン」とはアメリカ政府機関FDA の認証済みの「MRIT(分子共鳴画像技術)電送システム」が臓器から染色体レベルに及ぶ機能の状態を解析するものです。ヘッドフォンをするだけで体のさまざまな部位の健康状態を6 段階で表示するシステムですが、こういった最新機器の導入も、会員さまには大きなメリットにつながるのではないでしょうか。

---「Well Aging」にはお食事も大切な要素ですよね。

私どもの料理の考え方は、「一期一会」です。お客さまに、いつ来られても新しい感動を提供したい、そういう想いがあります。食材は栄養バランスと旬にこだわり地産地消を基本としております。また、非常にリーズナブルにご提供させていただいていますので、「この内容でこの料金」という驚きも感動の一つで、弊社独自の強みです。お部屋も同様に7 つのコンセプトに分かれており、「ジャパニーズモダン」「スタイリッシュオリエンタル」などさまざまなタイプがございます。さらに、同じコンセプトのお部屋でも調度品やアクセサリーは全て異なります。場所は同じでも、お食事やお部屋が異なれば、とらえ方や感じ方は毎回変わり、新しい感動が生まれるのではないでしょうか。

稼働の落ち込みは少なく再開切望の声が次々に

---この状況下でのグランドオープンをどのように感じていらっしゃいますか。また今後
の運営に際し、どのような考えを持って取り組まれていかれるのでしょうか。

自然災害が多く発生し、コロナ禍の本当に厳しい状況の中でグランドオープンさせていただけることは、非常に幸せで感謝すべきことです。私どもももちろん稼働は落ちてはいますが、極端に落ち込むことはなく、また「KIARA リゾート」に関しては2 期の段階では客室は10 室しかなく密にならないこともあって、休館することなく営業いたしました。レークサイドにおいては5 月中の休館日にいたっても会員さまからは「いつ開けるんだ」と。

特に温浴施設は、昨年7 月に建て替え新築でオープンした人気の施設でもあり、日帰り入浴で利用される方が年間約10万人もいらっしゃるので、早く開けてほしいというご要望を多くいただきました。もちろん、コロナ対策も徹底しています。浴場は通常の半数に人数制限をしていますし、館内で検温、手洗い、消毒、ソーシャルディスタンスの確保、飛ひまつ沫が飛ばない工夫をしているほか、バイキングレストランでは、手袋を設置したりトングを使わずスタッフが取り分けて提供するなど、細部まで配慮しています。「KIARA リゾート」の規模感は、きちんとした対策がとりやすいという点で、利点でもあります。人件費はかかりますが、「多少お金がかかっても安心安全を」という考えもあります。8 月以降の予約もそこそこ順調ですので、ここで期待を裏切らぬよう、この体制を維持していく考えです。またWithコロナ時代を見据え、ワーケーションホテルシステムの構築など新しいライフスタイルの提案、会員制ホテルシステム40余年の経験と実績、強みを活かした経営に努めたいと思います。


---人材育成についてはいかがでしょうか。

次世代を担うリーダー、中間管理職の育成に一番力を入れたいと思っています。料理やホテルの業界ではいくつもの企業を経験してキャリアアップ、スキルアップするのが一般的だと思いますが、私は積極的に若手を採用して、当社に在籍しながら経験を積んでスキルアップし、愛社精神を持った社員として成長していってもらいたいと思っています。そのための教育費、セミナー、研修費用などはできる限り惜しみません。サービス、調理スタッフともに東京をはじめ各地の飲食店やホテルに行ってもらい、良い部分を持ち帰って生かしてもらっています。また社員の育成はホスピタリティー、CS(顧客満足度)に直結します。そしてホテルの「格」にもつながり企業にとって最も重要だと考えます。

---今後の展望についてお聞かせください。

経営理念に「『ふるさとに帰ってきた感動』を常に感じられる『心温まるおもてなし』の会員制・理想郷リゾートの創造を目指し地域の価値を高めて、地域社会に貢献します。」とあります。そして愛される、楽しめるホテルというのが基本理念に沿って、さまざまなエンターテインメントにも取り組みたいと考えております。先日はひさしぶりに、ディナーショーを行ないました。人数はかなり制限しての開催でしたが、多くのお客さまに喜んでいただけました。これまでも2 ~ 3 カ月に一度は何かしらのイベントを行なってきましたので、継続していきたいと思います。また地域とのかかわりの中で、昨年から「花のリレー・プロジェクト」へも参画しています。

「花のリレー・プロジェクト」は、浜松いわた信用金庫さんの呼びかけで、地元の企業や婦人会、ボランティアの方々とも協力して、天竜浜名湖鉄道の沿線にユキヤナギなどの花を植えていこうという計画です。私どもも以前から、「地域の方が気軽に足を運んでいただける、人の集まる場所を作りたい」という想いがありましたので、現在は敷地内に遊歩道を作り、桜など季節の花を植えて、公園として開放できるよう整備しているところです。広く認知していただき、今後、自治体なども巻き込んだプロジェクトとして展開して、地域を一緒に盛り上げていければと考えています。

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