ハレクラニ沖縄 レポート3その2
沖縄のリゾートであるにもかかわらず全国各地からスタッフが集まり、そしてそのスタッフたちがイキイキと働くハレクラニ沖縄。前回のレポート2ではオーナーと総支配人のインタビューを通じてその秘密を探ったが、当然、各部門のマネジメントにも秘密があるはずだ。
レポート3は宿泊、料飲、調理の三部門の部門長のインタビューを通じ、ハレクラニ沖縄の職場としての魅力を探る。その第ニ弾は料飲部長の岡田 友嗣さん。世界を代表するラグジュアリーリゾートを目指すハレクラニ沖縄にとって、「ホテルは若者が主役」だと考える岡田さんは、若いスタッフがのびのびと接客をしながら、同時に成長していく環境づくりが自身の仕事だと語る。
料飲部長(Director of Food & Beverage)
岡田 友嗣さん
“リゾート” に甘えない。
世界を代表するラグジュアリーリゾートを目指す
ドアが開き、岡田さんが姿を現した瞬間に場の空気が変わるのを感じた。体に寸分違わずフィットしたスーツと、蝶ネクタイ、そして、きれいに整えられた口髭。頭のてっぺんからつま先まで意識された身なりから、プロフェッショナリズムがビシビシと伝わってくる。
それはビジュアルだけにとどまらない。インタビューが始まると更に興味を引かれる。
特に印象的なのは、言葉の選び方だ。自身の考えを自身の言葉で語る。
岡田 友嗣さん、ハレクラニ沖縄の料飲部長。
高校卒業後、英語とホスピタリティマネジメントを学びにロンドンへ。帰国後、当時のフォーシーズンズホテル椿山荘で、ホテリエとしてのキャリアをスタート。その後、フォーシーズンズホテル丸の内、ザ・ペニンシュラ東京の開業に携わり、活躍の場を海外へ移す。
オーストラリアのカジノホテルに勤務した後に帰国。再び都内のラグジュアリーホテルのひとつであるザ・リッツ・カールトン東京に勤務。その後、ファッションやデザインなども手掛けるユニークなレストラン企業であるトランジットジェネラルオフィスを経て、ハレクラニ沖縄のプロジェクトに参画した。
当初、我々は理解できなかった。岡田さんは、本当にハレクラニ沖縄の料飲部長なのか?
それは、岡田さんの雰囲気が、我々が持っていたいわゆる “沖縄のリゾートのイメージ” と合致しなかったからだ。
しかし、彼の口から出てきた「リゾートならではのクオリティ」という、アンチテーゼをたっぷり含んだこの言葉をきっかけとして、なるほどと理解ができた。
「リゾートだと、このコーヒーが多少ぬるくても許されてしまうのです」
リゾートには得てして抜群の景観があるため、サービスのクオリティが多少低くても許されてしまうものだ。
リゾートを訪れるゲストはハッピーな気持ちでやってくる。東京のようにピリピリしていない。東京ならたちまちクレームが飛んできそうなことも、大目に見られてしまう。
しかし、それは、“そこそこ” のレベルでのリゾートの視点だ。
世界を代表するラグジュアリーリゾートは、そこに甘えてはいない。
「入社後に、世界の5スターホテルはどういうものなのかを学ぶため、ハワイのハレクラニをはじめ、さまざまなリゾートを視察する機会をいただきました。そして、とても参考になったのはロス・カボスなど、メキシコのリゾートでした」
「確かに、人件費が低くスタッフが多くいるからこそできるサービスというものもあります。ハレクラニ沖縄を訪れるお客様は、そうした世界各地の5スターホテルのサービスをよくご存じなのです」
東京のホテリエが、沖縄に転職すると “都落ち” などと言われてしまうこともあるという。
「ハレクラニ沖縄では、そんなことを言わせないと思いました。ここに来ると決めた時に、僕が行くからには、ハレクラニ沖縄出身のホテリエは、東京でも通用するクオリティのサービスを提供できる、そんなホテルのF&Bにしようと考えました」
「今までは、自身の成長を求める優秀な人材は海外に流れていた。そうした人にも働いてみたいと思ってもらえるホテルのF&Bを、沖縄でやりたいと思っています」
岡田さんの目線は、世界レベルにあるのだ。
これまで日本になかったレベルのラグジュアリーリゾートを目指している。
若いスタッフが、のびのびと仕事をしてお客様に感動を与える。同時に、それぞれが思い描くキャリアの達成に向け、成長できる環境をつくるのが自身の役割。
岡田さんは、ハレクラニ沖縄の開業プロジェクトを進める中で “あること” に驚かされた。
「ホテルやレストランで働こうと思ってくれる地元の方が少なかったことです。実際、エントリーする人の中で、地元である沖縄県出身の人が少なくて驚きました。そして、沖縄県内の学校関係者の方にお話を伺ったら、 “業界のイメージが悪い” と。僕はホテルだけでなくレストラン企業でも仕事をしていましたが、そのイメージは同じでした」
しかし、岡田さんは、それを“仕方がない” とあきらめない。
「『それは、僕らの世代の責任』と考えています。ホスピタリティー業界の楽しさをきちんと伝えることができていなかったのです」
世界を代表するラグジュアリーリゾートを目指しながらも、労働環境も大切にする。特に、地方のリゾートはこれまでサービス残業が当たり前などということもあった。ハレクラニ沖縄は、これまでの “リゾートホテルの常識” を覆そうとしている。
「三井不動産がオーナーということもあり、コンプライアンス遵守は “当たり前” です。
これには費用と労力、そして、マネジメントの力も求められます。昔なら『仕事の遅いやつは残れ!』みたいなこともありましたが、ここは違います。これまでホテルが『やらなければならない』と言っていて、実際はできていなかったことをやろうとしているのです。
オーナーのハレクラニ沖縄に対する思いは、収支の数字面でもそうした理解が十分にあることが判ります。5年、10年という長いタームでビジネスを考えることができる。それがハレクラニ沖縄の強みです」
甘いのではない。真剣に中長期で考えているのだ。
「だからこそ、僕からすると有難いと思う反面、大きなプレッシャーでもあります。レピュテーションに関してはとても真剣で、厳しい。目指すレベルに照らして足りていないことがあると、とことんその原因を追究します」
世界を代表するラグジュアリーリゾートの創造を、オーナーもオペレーターも真剣に目指している。だからこそ、若い力が重要だと岡田さんは言う。
「ホテルは現場の最前線にいる若者が主役だと思っています。若いスタッフがのびのびと仕事をし、お客様に感動を与える。そうした仕事を通じて、若いスタッフが自身の目標を達成できるようにサポートする。それが僕の役割ですし、ハレクラニ沖縄にとっても大切なことだと考えています」
本来は、こういう考えを、ホテル業界が持っていなくてはいけない。
「ホテル業界に限らず、サービス業界全体としてかもしれませんね」
ホテル業界だけでなく、外食産業の現状もよく知る岡田さんだからこその言葉だ。
業界という枠、国という枠を超えて、本気で世界を代表するラグジュアリーリゾートを目指すハレクラニ沖縄。同時に取り組んでいるのはこれまでの“リゾートホテルの常識を覆す”ことである。
“サービスクオリティ” と “労働環境”、これまでの日本であれば「相反するもの」とすら考えられていたことに本気で取り組む。今まで誰もが成しえなかったことに本気で取り組むからこそ、その先に “世界を代表するラグジュアリーリゾート” があるのだ。
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本レポートは全5回です。
レポート1沖縄にやってきた世界屈指のリゾート 「天国にふさわしい館」が沖縄へ
レポート2なぜハレクラニのスタッフはイキイキとしているのか? 沖縄だけでなく全国から人が集まる理由とは?
レポート3その1こんなに楽しく働くことができるホテルは他にはない。「日本一ハッピーなホテル」だと自信を持って言える。
その2目指すは世界を代表するラグジュアリーリゾート。 若いスタッフが大きく成長できる環境がここにある。(今回)
その3チーム・チーム・チーム!
レポート4その1 楽しく調理しないと、おいしい料理は絶対にできない。 ハレクラニ沖縄カリナリーチームの人を育てる環境づくり
その2 「顔がやさしくなったね」 心に余裕ができ、やさしくなれる。 そんな環境がここにある。
レポート5その1 東京から沖縄へ移住! わくわくする魅力的な場所で自ら率先して動くことができるホテリエに
その2 「大好きな仲間がいる」ハレクラニ沖縄の理想的な環境